太陽光発電事業は、新規設置と既設太陽光発電の2種類に分かれています。中でも既設太陽光発電に関する事業は、多くの個人投資家や法人などに注目されていて、M&Aによるビジネスも進んでいます。
そこで今回は、太陽光発電のM&Aに関する特徴や仕組み、売買方法、事例や業界動向について分かりやすくご紹介します。太陽光発電事業に関心を持ち始めた方や太陽光発電のM&A事業について確認したい方は、参考にしてみてください。
太陽光発電のM&Aとは?
太陽光発電におけるM&Aとは、太陽光発電事業の売買や事業を運営している会社の売買に関する取引全般のことです。
太陽光発電関連事業は、主に以下3種類を指しています。
- 太陽光発電で発電した電気の売却事業(売電事業)
- 太陽光発電システムの設置を行う施工事業
- 太陽光発電システムの管理および保守点検といったO&A事業
特に太陽光発電システムの維持管理費用に悩んでいる方、太陽光発電事業を継続しているものの自家消費要件によって利益率が下がっている方など、さまざまな理由で負担を感じている時は、売却を検討してみるのがおすすめです。
太陽光発電のM&Aニーズが存在する理由
太陽光発電の売電事業を支えるFIT法は改正されていて、売電事業の利益率に影響を与える内容もいくつか存在します。また、FIT制度以外の事情からM&Aを検討しているケースがあります。
続いては、太陽光発電のM&Aニーズが高まっている・存在している理由について紹介していきます。
FIT法改正による事業審査の厳格化
FIT法の改正による事業審査の厳格化などが、太陽光発電事業譲渡の理由として挙げられます。
2012年に発足されたFIT法は、再生可能エネルギーを活用した発電設備の支援制度を含むさまざまな規制などが含まれた法律です。
たとえば、FIT制度はFIT法によって制定された支援制度で、太陽光発電や風力発電・水力発電・地熱発電・バイオマス発電で発電された電気の買取義務、固定買取期間、買取単価など、発電事業者にとってメリットの多い内容といえます。
制度発足当初は、1kWhあたり40円、30円台の高い買取単価だったため、売電収益を伸ばしやすい環境でした。
しかし、FIT法に関する改正が度々行われたことで、太陽光発電事業者にとって厳しい環境へ変わりつつあります。
- 事業計画書の提出義務化によって設備の設置からメンテナンスまで対応が必要
- 急激な再エネ設備増加による過剰な売電を避けるため、出力抑制を実施
- 自家消費要件の義務化によって出力10kW以上50kW未満の太陽光発電は全量買取原則禁止
メンテナンスを専門としている企業は事業計画書の作成も必要ですし、出力10kW以上50kW未満の太陽光発電を所有している企業は、自家消費要件に沿って一定量自家消費し続けなければいけません。
このような事業の負担増加から太陽光発電関連企業は、設備の売却や事業譲渡を検討しています。
設備投資にかかる税負担の増加
太陽光発電事業にかかる税負担軽減につながる特別一括償却制度は、2015年に廃止されたことで、事業譲渡を行う企業も出ています。
他にも中小企業投資促進税制は、2023年3月31日まで受付中の設備投資減税制度です。2023年4月以降に新規で太陽光発電設備を設置した場合は、税額控除や一括償却といったものを受けることができません。
やむを得ず事業譲渡
太陽光発電企業の中には、関連企業の倒産による影響を受けて、やむを得ず売電事業の譲渡を行っている企業も存在します。
太陽光発電事業は、売電と設置施工、運用メンテナンスの3種類に分かれています。たとえば、メンテナンス事業を展開している企業は、販売店や施工業者と連携しています。そのため、販売店や施工業者が倒産してしまうと新規でメンテナンス案件を受注できません。
また、太陽光発電の設置工事やメンテナンス・修理は、専門の資格を取得した企業でなければ対応できません。メンテナンス企業が倒産してしまうと、新たにメンテナンス企業を探すもしくは売電事業から撤退しなければいけない可能性もあります。
出口戦略として考えられている
太陽光発電事業の譲渡は、出口戦略の1つとして捉えられ始めています。
2015年に創設されたインフラファンド市場は、発電事業を含むさまざまなインフラへの投資を行う法人が上場している市場です。また、太陽光発電の売電事業を行っている企業は、事業譲渡先として投資法人を選択できます。
太陽光発電のM&Aに関する業界動向
ここからは、太陽光発電のM&A業界の動向について確認していきましょう。
FIT法改正などによる収支悪化から売却ケース増加
前半でも触れたFIT法改正による規制強化、固定買取価格の低下などで太陽光発電関連事業の売却ケースは、増加傾向で推移しています。
太陽光発電投資の一環として売電を行っている企業は、固定買取価格の低下や自家消費要件の追加、廃棄費用積み立てによる支出増加といった点から事業譲渡を行っています。また、メンテナンスや施工業者の場合は、同業他社の増加と工事単価の低下から事業撤退や譲渡を進めているケースもあります。
特にFIT認定を受けたものの設備を設置していない企業は、現在の法律や規制に適していないため、撤退もしくは事業譲渡を迫られている状況です。
優良な設備確保などから買い手も増加
太陽光発電事業に関しては、買い手も増加している傾向です。
太陽光発電の新規FIT認定を受ける場合、FIT制度発足当初の固定買取価格から20円以上安い水準で売電を行う必要があります。一方、2012年や2014年など過去にFIT認定を受けた稼働済み太陽光発電所を取得した場合は、FIT認定年の高い固定買取価格で売電を始めることが可能です。
このように太陽光発電事業のM&Aの中でもセカンダリー市場は、ニーズの高い市場といえます。
太陽光発電のM&Aにかかる費用
太陽光発電のM&Aでは、設備や事業にかかる費用の他、仲介手数料がかかります。太陽光発電設備+用地の売買は、敷地面積や太陽光発電の出力、設備の状態、FIT認定年によって変わります。
太陽光発電用地については、1坪あたり1万円程度で売買されています。また、設備の価格に関しては、売電収益や買い手からのニーズによって変動します。
弊社とくとくファームで取り扱っている物件の場合、出力82kWの中古太陽光発電では、販売価格2,000万円で表面利回り10%程度です。年間の売電収入は230万円程度を期待できるので、初期費用回収まで10~15年程度といえます。
太陽光発電事業の買収で重要なポイント
太陽光発電事業のM&Aに関する特徴や市場の活発化について確認したあとは、買収に関するポイントを把握しておきましょう。
潜在的リスクや問題点の洗い出し
太陽光発電にかかわらず事業の買収を検討する際は、潜在的リスクや事業の問題点について洗い出すことが何より重要です。
具体的には、太陽光発電設備の状態、太陽光発電用地の安全性や地盤の状態、設置場所の日照時間や日射量などを調べてみましょう。また、前オーナーの設備管理状況やFIT法の遵守など、さまざまな点で問題のある行動を行っていないか、資料や交渉の際に注意しておくのも大切です。
維持管理にも力を入れる
太陽光発電事業を買収したあとは、メンテナンスに力を入れるのも大切です。
太陽光発電設備はメンテナンスフリーではありません。パワーコンディショナや太陽光パネルなどの各種機器は、経年劣化していきます。また、災害などで破損してしまう可能性があります。
さらにFIT認定を受け続けるには、FIT法に沿った流れで定期的にメンテナンスを進めなければいけません。
太陽光発電事業を始める際は、メンテナンス専門業者と連携しながら10年・20年といった長期スパンで稼働させる計画を立てていきましょう。
太陽光発電事業の売却で重要なポイント
続いては、太陽光発電システムおよび事業を売却していく場合に押さえておくべきポイントを紹介します。
売却前に土地や設備の状態を確認および改善させておく
太陽光発電の売電事業を譲渡する時は、まず土地や設備の確認、改善に力を入れていくことが大切です。
発電効率の下がっていない設備や丁寧に管理していて綺麗な設備や土地は、買い手がつきやすく、なおかつ相場より高値で売却できる可能性もあります。そのため、高値で売却したい時は、除草作業や太陽光パネルの洗浄、部品交換や修理点検を行っておくのがおすすめです。
売電実績などのデータ作成
太陽光発電のM&Aを活用して太陽光発電投資を行いたい企業は、収益性の高さを分析するために正確な発電・売電データを求めています。
太陽光発電を売却する時は、設備のスペックや発電量・売電量の実績を示した資料、収支のデータなどを用意しておくのが大切です。
太陽光発電の仲介に特化した会社へ相談する
太陽光発電のスムーズな売却を進めるには、実績豊富でかつサポート内容の充実した仲介会社へ相談するのがおすすめです。
充実したサポート内容とは、売却手続き代行だけでなく、高値での売却につながるメンテナンスや清掃、所有権移転登記などの代行、売却後の税務処理まで対応してくれるサービスのことです。
太陽光発電の売却には契約手続きだけでなくFIT認定者の変更、所有権移転登記、保険の名義人変更などが含まれていて、手間のかかる作業といえます。
弊社とくとくファームでは、稼働済み中古太陽光発電物件の売買仲介サービスに加え、売却額アップに向けた設備の保守点検・洗浄、土地の清掃、所有権移転登記を含む各種手続きを代行いたします。また、売却後の税務処理については無料対応いたしますので、手間がかからず、なおかつコストの負担を抑えられます。
太陽光発電のM&A事例
太陽光発電に関するM&Aには、国内企業・海外企業同士のM&A、国内企業と海外企業のM&Aなど、国内だけでなく海外企業との買収・売却といったケースも存在します。
たとえば、総合商社の双日は、オランダの企業でアメリカに事業所のあるAlten RE Developments Americaという太陽光発電企業の株式を取得し、海外での太陽光発電事業へ参入しました。
他にもタイのBCPGという電力関連企業は、アメリカ企業の日本法人、サンエジソンジャパンを買収し、メガソーラーを含む太陽光発電所や風力発電所の設置運用など、日本での再生可能エネルギー開発を進めています。
太陽光発電事業のM&Aはニーズの高い市場!
太陽光発電事業のM&Aは、太陽光発電の売電やメンテナンス、設置工事といった事業の売却や買収を指しています。また、中古太陽光発電の売電はニーズの高い事業なので、出口戦略としてメリットの大きなジャンルです。
自社を残しながら太陽光発電事業を売却したい方や太陽光発電のM&Aについて関心を寄せている方は、今回の記事を参考に太陽光発電の売却を検討してみてはいかがでしょうか?
弊社とくとくファームでは、FIT認定済みの中古太陽光発電所の売却へ向けたサポートを行っております。専任の担当者が、物件の現地調査から資料作成、物件情報の掲載や買い手との交渉手続きなどをサポートいたします。売却後の負担につながる税務処理も無料でサポートいたしますので、売却前後のあらゆる手間を軽減しながらスムーズに手続きを進められます。
太陽光発電設備の売却について検討中の方は、お気軽にご相談ください。