太陽光発電の運用は売電での収益や、設備売却での利益が期待できますが、ランニングコストを忘れてはいけません。実際に運用コストがどのくらいなのかを把握している人は多くはいないでしょう。
今回は太陽光発電のランニングコストについて解説していきます。また、イニシャルコストとの違いもご紹介していきますので参考になれば幸いです。
太陽光発電のランニングコスト/イニシャルコストとは?
こちらの記事をご覧になっているということは、太陽光発電により発電した電力を、ご自身の自宅にて使用したり、販売したりすることを検討されているかと思います。
そんな太陽光発電について、実際の運用にあたって必要となる「ランニングコスト」と「イニシャルコスト」についてご存知でしょうか。
これらの単語は、良くビジネスの世界で使われることが多いですが、実際に使っている人や意味を知っている人は意外と少ないかもしれません。こちらでは、それぞれの言葉の意味について解説していきます。
ランニングコストとは継続的にかかる費用
ランニングコストとは、「運転資金」や「設備を維持していくための経費」のことを指します。他にも「消耗品費」や「維持費」などと言われることもあります。
つまり、設備やサービスを利用している間、継続的に発生する費用のことです。ランニングコストという名前のとおり、「走り続けるコスト」とイメージすれば分かりやすいかもしれません。
イニシャルコストとは初期費用のこと
イニシャルコストとはビジネスの世界において、「事業を始める時に必要な費用」や「新たな設備を導入する時に必要な費用」のことを指します。
これは、前述したランニングコストが発生する前の段階に掛かる費用のことです。イニシャルとは「頭文字」という意味ですので、文字どおり「頭=最初に掛かるコスト」とイメージすれば分かりやすいでしょう。
太陽光発電の主なランニングコスト
太陽光発電を導入すると、それ以降さまざまなランニングコストが発生します。ご存知のとおり、太陽光発電のための設備は屋外に設置する必要があります。そして、発電のための繊細な機器ですので、どうしても放置するわけにはいきません。
具体的には、以下のような理由から、複数のランニングコストが発生してしまうのです。
- FIT法によって、メンテナンスをおこなう努力義務がある
- 発電量の低下を防ぐため(節電性能の維持)
- 故障などを防ぐため(設備性能の維持)
ここからは、なぜ上記の内容によってランニングコストが発生するかという理由について、詳しく解説していきます。
定期的な点検
まず、太陽光発電設備は定期的な点検を実施しなくてはいけません。実際は「努力義務」ということで強制ではないのですが、安定した発電のためにも基本的に、4年に1回以上の定期点検が推奨されています。
この点検費用については、住宅用においては1回あたり約2万円前後が相場となっています。また、非住宅用の太陽光発電設備については、法定点検が必要となります。
その際には、電気主任技術者を専任しますが、2,000kWまでは外部委託が可能となっています。
そして、その委託費用については一般的に、年間50〜100万円程度と言われています。ちなみに、住宅用の点検努力義務については、FIT法と呼ばれる『固定価格買取制度』というものによって定められています。
これは2012年7月に施行されており、再生可能エネルギー源にて発電した電力を、電気事業者が一定の期間買い取ることを義務付けた制度です。
資源が枯渇することなく、なおかつ二酸化炭素を排出しない、クリーンなエネルギーを普及させることを目的としてスタートしました。
施行後はさまざまな課題やトラブルが発生したということで、2017年には1度目の改正がおこなわれ、さらに2020年には地域活用要件と呼ばれる条件が新たに加えられました。
地域活用要件の内容は、発電した電力を全量売ることはできず、30%以上は自家消費する必要があるということや、災害時に地域一帯で使用することを目的とした設備を付けなければならないといったものです。
そして、2022年4月からは新たに法改正がおこなわれており、今後も随時内容については変化していく制度であると考えられます。
清掃費用
太陽光発電の設備は、住宅の屋根などといった外に設置されます。そのため、雨風による汚れなどが蓄積してしまいます。通常の土埃などであれば、定期的な雨によって洗い流されることも期待できますが、鳥のフンや水垢など、一度付着してしまうとなかなか落ちにくい汚れも付きます。
汚れが付いていることで、発電効率が落ちてしまうことは想像に難くありません。そのため発電のためソーラーパネルに対して、定期的な清掃をおこなう必要があるのです。
清掃作業はご自身でもできなくはないですが、ソーラーパネルの表面を傷つけてしまう可能性や、何より高所の作業となりますので素人では転落の危険も伴います。そのためメーカーからも推奨されておらず、専門業者へ依頼するのが一般的です。
専門業者へ依頼することで発生する費用については、基本的にパネルの枚数によって変動します。「基本料金5万円+パネル1枚あたり数100円〜」といった内訳が多いですが、業者によっても違いが大きく、一概には言えません。
さらに、清掃方法についても高圧洗浄や拭き取りのみ、洗浄剤を使用した手作業か機器を使用した作業などと多岐にわたります。依頼する業者の料金体系に加え、洗浄箇所の広さ、清掃方法によって大きく変わるでしょう。
保険料などの補償関係
日本は世界においてもトップクラスで自然災害が多い国です。そのため住宅などに、地震保険などの補償を掛けているご家庭も多いかと思われます。これらと同様に、太陽光発電設備についても、いつ起こるか分からない自然災害への備えが必要となります。
実際、太陽光発電を導入するのであれば、保険への加入は必須となるでしょう。メーカー保証などもありますが、保険による補償内容とは異なっていることが多く、一般的に自然災害に対してメーカー保証は対象外となるでしょう。
多くの場合、メーカー保証は以下の保証内容が一般的となっています。
システム保証
ソーラーパネル自体の不具合や故障した場合に補償される。
出力保証
ソーラーパネルの出力値が、メーカー規定の最大出力値を下回った場合に補償される。上記以外のトラブルに備えて、保険に加入する必要があるでしょう。
そして、保険料の相場については一般的に初期費用の2.5〜3.5%が一般的であると言われています。もちろん、こちらの費用についても太陽光発電の規模によって大きく変動します。
不具合時の修理費用
太陽光発電は数十年にわたって運用していくものですので、途中でシステムの不具合や故障という事態も発生します。
何かしらのトラブルが発生した場合には、まずメーカーや施工店への問い合わせが第一となります。メーカー保証期間内であれば、トラブルの大半は無償対応してくれることが多いでしょう。しかし、無償対応は保証期間内という限定条件であることを忘れてはいけません。
前述したように、メーカー保証には「システム保証」と「出力保証」の2つがあります。そして、それぞれの保証期間は一般的に以下のとおりです。
- システム保証:10年
- 出力保証:10〜20年
この期間以降のトラブルについては、実費での対応が求められます。
そして太陽光発電において、最もトラブルが多い箇所は、パワーコンディショナーと呼ばれる機器です。こちらの機器は24時間365日動き続けていることもあり、一般的な寿命は10年前後が相場となります。
システム保証期間内であれば無償交換も可能ですが、期間外での故障も十分に考えられるのです。発生する費用については、簡単な修理であれば2万〜3万円が相場となっていますが、交換となった場合には20万〜30万円と10倍近い価格にもなります。
税金もコストの一部(固定資産税など)
太陽光発電は自宅で使用する電気代の削減や、売電などの家計に優しい効果が期待できます。しかし、同時に税金も発生することを忘れてはいけません。
実際にランニングコストとして、課税対象となる事が多い税金は以下の2つです。
- 所得税
- 固定資産税
所得税については、売電によって得た所得に対して発生します。
この所得は細かく分けると雑所得、事業所得、不動産所得の3つに分類されるのですが、場合によって所得税がかかります。しかし、10kW未満の家庭用設備であれば、多くのケースで課税対象となることはありません。
確定申告が必要となるには、売電による収入が年間20万円を超えてからとなります。固定資産税は、住宅などの不動産に掛かると思われる方も多いかもしれませんが、太陽光発電に対しても場合によっては発生します。
なぜなら、固定資産税の対象は「移動ができないもの」とされており、太陽光発電はこの条件に当てはまるからです。しかしこちらも、10kW未満の家庭用設備の場合や、物件を建築当初から屋根一体型のパネルを選択した場合に限ります。
後付けの発電設備であれば、取り外し可能とみなされ、固定資産税の対象外となります。1点注意しなければいけないことは、「10kW未満の場合」ということ。この数値以上であれば、どのような設置方法であっても固定資産税の課税対象となります。
太陽光発電のランニングコストの相場
太陽光発電における、ランニングコストが発生する内容を解説しましたが、全体としての相場は一体どの程度なのでしょうか。
税金などの費用については、10kW以上もしくは未満で変動することに加え、一般住宅もしくは事業用によっても、その金額は大きく変動します。
資源エネルギー庁がおこなった調査によると、それぞれのランニングコストの相場は以下のとおりとなっています。
- 一般住宅用:約3,490円/kW/年間
- 事業用:約5,000円/kW/年間
一般住宅において、年間の発電量は4.5kWが平均と言われています。
こちらと照らし合わせると、約16,000円前後が一般住宅におけるランニングコストの相場となることが予想できます。
太陽光発電のランニングコスト以外の費用
ここからは太陽光発電における、ランニングコスト以外の費用について解説します。
さまざまな方面から費用を知ることで、実際に設置してからの資金計画にブレが無くなります。
それぞれ確認してみましょう。
蓄電池の設置費用
蓄電池とは、充電することで再利用が可能な電池を指します。一般的な乾電池は充電する機能はなく放電のみであるのに対し、蓄電池は放電に加えて充電が可能です。
そのため、太陽光発電との相性が良く、設置が推奨されている設備です。そして、設置することによるメリットは大きく3つあります。
- 災害時の備えになる
- 太陽光で発電した電力を夜まで使用できる
- 電気の自家消費ができる
このように蓄電池があることで、太陽光発電で発生させた電力を保管、使用することができるのです。実際の設置費用については、一般住宅用であれば約150万円が相場となります。
⋄初期費用(イニシャルコスト)
冒頭に紹介したイニシャルコストは、太陽光発電を設置するにあたって、維持費を除いて最も高額となるでしょう。屋根に設置する場合はその工事費用、足場の組み立て費用といった工事費用も追加で必要となるケースもあります。
また、住宅によっては屋根や屋上などの設備が使用できない場合もあります。元から所有している敷地内にソーラーパネルを設置できればいちばん良いのですが、場合によっては土地を購入しなければいけないかもしれません。
もちろん、安い土地を購入することで、将来的に費用を回収することを試算できますが、イニシャルコストとしては、設置費用と含めて大きな金額となることが予想されます。
都道府県や市町村によっては、設置に対して助成金や補助金を出している自治体もありますので、一度確認してみても良いかもしれません。
【まとめ】太陽光発電はランニングコストを把握すべき
太陽光発電を導入した後の、ランニングコストについて解説してきました。
導入を検討している段階では、どうしても自家発電した電力の使用や売電に考えが行ってしまいがちかもしれません。しかし実際に必要なランニングコストを踏まえた上で、導入後のシミュレーションをおこなうことが重要です。
太陽光発電の設置は決して安くはありませんので、しっかりと検討した上で満足のいく選択ができるようにしましょう。