太陽光発電事業を展開している事業者の中には、リソース不足や売上の鈍化、その他の事情から売却を検討している事業者も多いかと思います。太陽光発電事業は、SDGsやカーボンニュートラルといった大きな流れに合った事業なので、需要の高い分野の1つです。しかし、相場についてよく分からずに売却してしまうと、安値で買収されてしまう可能性もあり、注意が必要なところです。
そこで今回は、事業売却の相場や太陽光発電事業の売却価格、売却にかかる税金や注意点について詳しくご紹介します。太陽光発電事業の売却を検討している方や太陽光発電事業の継続について悩んでいる方は、参考にしてみてください。
事業売却についておさらい
事業売却とは、企業の事業もしくは事業の一部を売却していく手続き全般のことです。事業売却の対象は、生産設備を含む物や取引関連(権利)、人(従業員)などで、事前に定められます。
なお、似た用語として会社売却もありますが、事業売却と異なり株式の譲渡を含めた全事業の売却の際に用いられる用語です。太陽光発電設備を売却する場合は、事業売却について確認するのがおすすめです。
事業売却の相場
事業売却の相場は、「(営業利益×3~5年)+修正純資産」という計算式で求められているケースも多いようです。修正純資産は、時価評価されていない資産や負債の含み損を株主資本から差し引いたり加えたりしながら計算した資産価値のことです。
つまり、負債などを含めた資産価値に3年から5年程度の営業利益を乗せた価格が、売却額の相場ということです。
例えば、修正純資産が1,000万円、営業利益800万円の場合、売却額3,400万円~5,000万円として計算できます。
事業売却の価格を算出する方法
続いては、事業売却の価格を算出する方法について4種類紹介します。
DCF法
DCF法(Discounted Cash Flow)は、未来に得られる可能性のあるキャッシュフローから、現在価値を割引計算で求めていく方法です。
例えば、現在の事業価値100万円、利回り10%と仮定した場合、1年後の事業価値は110万円へ上がると見込まれます。後は、「未来の事業価値110万円-利回り分の事業価値10万円=100万円」として売却額を設定していきます。
DCF法は、将来得られる利益を元に「現在の事業価値=売却額」を算定していく仕組みなので、事業計画から利益や売却額を算定する場合に活用しやすい方法です。一方、将来的に得られる利益の計算を誤ると、適正な売却額を算定できません。
マルチプル法
マルチプル法は、自社と類似の事業を展開している上場企業の株価などから事業価値を求める方法です。相対的な価値から事業売却の価格を算定していくのが、マルチプル法の大きな特徴です。
例えば、自社と類似のB・C社が、自社と比較して何倍の売上高を出しているか算出し、企業価値や事業売却額を算定していきます。企業価値の指標として用いられるのは、株価や売上高の他、営業利益や最終利益、純資産などが代表的です。
マルチプル法は特定の指標を他社と比較しながら客観的に分析できるため、他の方法と組み合わせることで、より多角的な視点から売却額を検討できます。
ただし、マルチプル法のみでは正確な事業価値を算定することが難しいため、2種類以上の方法を用いることをおすすめします。
時価純資産法
時価純資産法は、自社の純資産をベースに事業価値を算定し、事業売却額を求めていく方法です。
主な特徴は、現在の資産や負債から事業価値を求めていくという点で、将来の利益については計算に含めません。そのため、成長中の企業で、かつ費用回収などの関係から一時的に赤字状態といった場合は、適していない方法といえます。
一方、貸借対照表のデータから金額を求めることから、計算式が簡単というメリットもあります。また現時点の正確な企業価値を求められるのが、時価純資産法の強みです。
年買法
年買法は、時価純資産に「営業利益×複数年」をかけて計算していくシンプルな算定方法です。
直感的に計算しやすく、なおかつ簡単に自社の企業価値を算出できるため、中小企業の事業売却で活用されているようです。
正確な事業価値は算出しにくいため、参考価格として求める場合に役立ちます。より正確な事業価値および売却額を確認したい時は、DCF法などを活用していく必要があります。
太陽光発電事業の売却価格は?
太陽光発電事業の売却価格は、事業規模や年間の営業利益によって大きく異なります。事業売却に関するサービスなどでは、1,000万円~3,000万円台の比較的小規模なケースがあれば、1億円単位で取引されているケースもあります。
また、太陽光発電投資で年間500万円~1,000万円の営業利益を得ている時は、売却価格1,000万円~3,000万円で取引されている場合もあるようです。
まとまった資金を調達するために事業売却を検討している方には、比較的メリットの多い状況といえるのではないでしょうか。
太陽光発電を高く売るには?
太陽光発電事業および太陽光発電設備を高く売却するには、設備や資料に関する準備を進めておく必要があります。ここからは、太陽光発電設備の価値を高める上で押さえておくべきポイントを紹介します。
立地のよい場所に設置されている
立地のよい場所に設置した太陽光発電設備は、高く売却しやすい傾向にあります。太陽光発電事業で重要なポイントは、日照時間や日当たりのよさといった点です。どれだけ発電効率の高い設備を購入したとしても、影になりやすい・日照時間が短い環境では、収支のバランスを維持できません。
そのため太陽光発電事業を検討している投資家や企業は、太陽光発電設備の周辺環境についても確認しています。
売電実績などの資料を用意する
太陽光発電事業および設備の売却前には、売電実績を含む各種書類やデータを用意しておくのも重要なポイントです。
太陽光発電事業の価値を示すには、過去の発電量や売電収入、維持管理費用、設備のメンテナンス実績など、さまざまなデータを提示しなければいけません。
仮にデータや資料を用意できないと買い手はつきにくく、なおかつ売却額の引き下げにつながる可能性もあります。
太陽光発電事業や設備の売却を検討している方は、自社で管理している資料を整理した上でM&Aサービスや太陽光発電の仲介業者へ相談しましょう。
メンテナンスや修繕をおこなった上で売却
太陽光発電事業の売却額を引き上げるには、メンテナンスや修繕作業をおこなう必要があります。
太陽光発電設備はメンテナンスフリーではありません。太陽光パネルは、経年劣化によって腐食や発電効率低下といった事象が生じます。また、架台はパワーコンディショナ、配線なども、10年や15年と使用し続けていくうちに腐食していきます。
買い手にとって太陽光発電設備の状態は、購入後の修繕コストや発電効率に関わる重要な問題です。
多くの買い手を集める・高い価格で売却したい時は、太陽光発電の専門業者へメンテナンスに関する相談および確認をおこないましょう。
実績豊富な太陽光発電の仲介会社へ相談する
太陽光発電設備を売却したい場合は、太陽光発電の仲介者へ相談するのがおすすめです。M&Aサービスは、あくまで事業売却に関する専門サービスです。一方、太陽光発電設備の売買にかかるサポートは、仲介会社の方が充実しています。
太陽光発電の仲介会社は、太陽光発電所の土地調査からメンテナンス・修繕、発電実績を含むデータ作成、買い手との交渉や契約手続き、名義変更まで対応しています。
そのため、太陽光発電設備の売却を検討する際は、仲介会社へ相談してみてはいかがでしょうか。弊社とくとくファームは、稼働済み中古太陽光発電所に関する売買にかかわるあらゆるサポートをおこなっております。事業売却を検討している方もお気軽にお問い合わせください。
太陽光発電の事業売却後には税金がかかる
最後は、太陽光発電の事業売却後に想定されている税金を確認していきましょう。
企業の場合は法人税がかかる
企業(法人)の場合は、事業売却に伴い法人税がかかります。具体的には、事業売却の際に発生した譲渡益に対して法人がかかる仕組みです。譲渡益にかかる税率は29.74%なので、売却前に法人税の負担額を算定しておきましょう。
なお、合併など一部の事業売却は、法人税の対象外とされています。
個人の場合は譲渡所得の課税
個人事業主や個人には、太陽光発電の設備や土地に対して税金がかかります。太陽光発電設備の売却で発生する所得は譲渡所得で、給与所得と損益通算することが可能です。損益通算とは、所得から損失を差し引いて課税負担を抑えられる制度のことです。
太陽光発電設備の譲渡所得は、所有期間に応じて計算式が変わります。
- 所有期間5年未満の場合は譲渡所得のうち全額が課税の対象
- 所有期間5年以上の場合は譲渡所得のうち2分の1が課税の対象
売却にかかる課税負担を抑えるには、5年以上の運用を心がけるのも大切です。
事業売却の相場は事業規模や利益によって変わる!
事業売却の相場は、事業規模や利益、資産や負担によって変わります。また、事業価値の計算方法は、DCF法やマルチプル法など複数の方法に分かれています。
太陽光発電事業の売却を検討している方や太陽光発電の出口戦略について考えている方は、今回の記事を参考に太陽光発電の売却を検討してみてはいかがでしょうか?
弊社とくとくファームでは、稼働済み中古太陽光発電所や太陽光発電用地の売買仲介をサポートしております。売却に関するご相談の場合は、かんたん査定やしっかり査定などからお気軽にご相談ください。
かんたん査定は、わずか30秒で査定額をご提示いたします。しっかり査定は、より正確な査定額を30項目のご質問から算定させていただきます。