法人や個人事業主が太陽光発電事業を行う場合、所得税の他に事業税と呼ばれる課税負担も発生します。しかし、初めて太陽光発電事業を行う方や事業税について分からない方にとっては、ややこしい内容に感じられるのではないでしょうか。
そこで今回は、太陽光発電の事業税について詳しくご紹介します。太陽光発電事業にかかる課税負担について調べている方や、太陽光発電事業の経費や課税負担を把握しておきたい方は、参考にしてみてください。
太陽光発電には個人事業税がかかる
個人事業主が太陽光発電を取り入れている場合、発電の規模や状況に応じて課税方法が異なります。太陽光発電を事業として行っている場合には「個人事業税」がかかります。
「個人事業税」とはどのような種類の税金なのか、また税率などについても詳しく説明します。
個人事業税は地方税の一種
「個人事業税」とは、一般的に所得が290万円を超えた場合に個人事業主が地方自治体に対して納付する地方税で、全額経費にすることができます。
課税対象となる業種は、地方税法などで定められた70の業種となっており、該当していない業種は事業税が課税されません。納付の時期は市町村によっても異なりますが、原則8月と11月の年2回となっています。
太陽光発電事業には固定税率5%
「個人事業税」の課税対象となる地方税法などで定められた70の業種は、第1種事業・第2種事業・第3種事業の3つに区分されており、税率も異なっています。
太陽光発電事業は、課税対象の「法定業種 第1種事業 電気供給業」に入り、固定税率は第1種の5%です。
太陽光発電事業の「個人事業税」は下記のように計算できます。
個人事業税の額=(所得の額-290万円)×税率5%
控除されるケースは主に4種類
「個人事業税」は全ての個人事業主に課せられるわけではなく、下記に該当する場合は控除となります。
事業所得が290万円を下回る場合
「個人事業税」には事業主控除があり、年間で一律290万円が控除されます。そのため、事業所得が事業主控除の290万円より下回っている場合には個人事業税は課税されません。
事業を行った期間が1年未満の場合には月割りでの計算となります。
地方税法などで定められた70業種以外の業種の場合
「個人事業税」の課税対象となるのは法定業種の70業種のため、該当しない業種で得た所得の場合には「個人事業税」は課税されません。「個人事業税」が課税されない業種には、作家やシナリオライターなどの文筆業・翻訳業・漫画家・音楽家・スポーツ選手・プログラマーなどがあります。
非課税の業種に当たるかについては都道府県が判断しており、都道府県税事務所により法定業種と判断された際は「個人事業税」を納付しなければなりません。
個人事業主の青色申告者が赤字となった場合
個人事業主が青色申告を行っており、事業の所得が赤字となった場合は、損失額を翌年からの3年間で繰越控除を行うことができます。
繰り越した損失は、翌年以降のプラスとなった所得と相殺することが可能で、相殺により所得が290万円を下回ると「個人事業税」は非課税となります。
その他の繰越控除がある場合
個人事業主が白色申告を行っている場合には、震災・風水害・火災などが原因による事業資産の損失を、翌年以降の3年間繰越で控除することができます。
また、青色申告を行っている個人事業主対象で、事業用の機械や車両など譲渡した際の損失額についても、譲渡損失の控除や繰越控除が可能です。
法人の場合は太陽光発電に法人事業税がかかる
太陽光発電を設置して電気を供給している法人は電気供給業となり、「法人事業税」がかかります。「法人事業税」とはどのような税金なのか、太陽光発電を導入した場合の「法人事業税」の計算方法などについて詳しく解説します。
公共サービスのために用いられる税金
地方自治体は消防・警察・上下水道の整備や道路の管理など、さまざまな公共サービスを提供しています。
法人が事業を行う際は地方自治体が提供している公共サービスを利用しており、また行政サービスに必要な経費であるため、法人は「法人事業税」を地方自治体に納税します。
「法人事業税」は、事務所や事業所のある都道府県に納付する義務があり、太陽光発電の設備を無人で設置しているなど事務所などを設けていない場合は、事務所または事業所の所在する都道府県に対して納税義務があります。
無人の発電設備は事務所または事業所に該当しませんので、当該設備のみが所在する県には申告義務はありません。
法人事業税の計算は収入割を基準に行う
法人事業税は、通常は収入から経費を差し引いた所得割で計算されますが、「電気供給業」を行う法人は収入金額を課税標準とする収入割を基準に行います。太陽光など再生可能エネルギーを利用した売電事業も「電気供給業」です。
電気事業法に規定する電気事業者かどうかではなく、電気を供給しているという実態があるかどうかによって決まります。
課税方式は、資本金の額または出資の金額が1億円を超える普通法人か、それ以外の法人かで異なります。
資本金の額または出資の金額が1億円を超える普通法人の場合には、収入割・付加価値割・資本割の合計額によって課税されます。
それ以外の法人の場合は、収入割・所得割の合計額により課されます。太陽光発電で得た収入割を基準に課税されるため、たとえ事業自体が赤字であったとしても税金が発生することになるため、注意しておく必要があります。
兼業の場合は別の業種をメインに計算するケースも
電気供給業以外の事業も行っている場合には、原則としては電気供給業に係るものは「収入割」、電気供給業以外の事業については「所得割」と別々に計算を行います。
例外として、その法人の主となる事業と比べて、電気供給業が独立した事業部門とは認められない程の軽微なものであれば、電気供給業の収入も主となる事業の課税方式にて申告することができます。
その場合は、電気供給業の法人事業税はかからなくなります。
軽微なものかの判定については、一般的に「収入金額が主となる事業の売上金額の1割程度以下であること」、また「事業の経営規模の比較において他の同種類の事業と権衡を失しないもの」とされています。
太陽光発電の法人事業税に関する注意点
太陽光発電事業は電気供給業にあたり、法人事業税が他の業種と異なり複雑です。太陽光発電の法人事業に関する注意点について、詳しく解説します。
収入にすべき金額を整理する
電気供給業の法人事業税は収入割を基準に行うため、「収入すべき金額の総額」と「控除すべき金額」が計算を行う上でとても大切です。
「収入すべき金額の総額」とは、各事業年度において収入とすることが確定した金額のことで、事業年度の収入として経理されるべきその事業年度の収入です。
電気供給業については、下記に記載する電気事業会計規則による事業収入に関する全ての収入を含んでいます。
- 各種電灯料収入
- 各種電力料収入(新エネルギー等電気相当量を含む。)
- 遅収加算料金
- せん用料金
- 電球引換料
- 配線貸付料
- 諸機器貸付料
- 受託運転収入
- 諸工料
- 諸設備貸付料
- 水力又はかんがい用水販売等の供給雑益に係る収入
- 事業税相当分の加算料金等
控除すべき金額をまとめておく
電気供給業の法人事業税の計算では「控除すべき金額」も重要なため、まとめておきましょう。下記が主な控除すべき金額になります。
- 国又は地方団体から受けるべき補助金
- 固定資産の売却による収入金額
- 保険金 ・有価証券の売却による収入金額
- 不用品の売却による収入金額
- 受取利息及び受取配当金
- 需要者等から収納する工事負担金等
- 電気供給業を行う他の法人から電気の供給を受けて電気供給を行う場合に、供給を受けた電気の料金として支払うべき金額に相当する収入金額
- 損害賠償金
- 投資信託に係る収益分配金
- 社宅貸付料
収入に含めない金額にも注意
収入に含めなくてもよい金額について、収入から差し引くことも大切です。値引きや貸倒れについては収入金額から控除し、建設仮勘定などに使った自家消費分の電力は収入金額に含めないなど、収入金額を微調整しましょう。
電力料金の消費税については、課税業者の場合は収入金額から差し引き、免税事業者は収入金額に含める必要があります。
令和2年に太陽光発電の事業税が改正された
太陽光発電を事業として導入する場合は電気供給業となり、法人事業税の計算などが他の業種よりもわかりづらくなっています。
さらに、令和2年度税制改正によって、電気供給業の法人事業税の課税方式や税率が変更されたことにより、今まで以上に事業税の計算などが複雑化しました。
太陽光発電事業を始める時は事業税の負担を考慮しておくのが大切!
太陽光発電を事業で行う際は電気供給業にあたるため、個人事業主の場合には個人事業税を、法人で行う場合には法人事業税を地方税として地方自治体に納付する必要があります。
太陽光発電を事業として導入を検討している場合には、電気供給業としてかかってくる税の負担についても事前に考慮しておくことが大切です。
法人事業税では、電気供給業の場合は収入割での課税となることから、たとえ事業が赤字であっても課税される場合もあります。太陽光発電に関する事業税などで負担を感じている場合には、太陽光発電の売却について検討してみてはいかがでしょうか?
弊社とくとくファームでは、中古太陽光発電所や太陽光発電用地の売買仲介業務に関してあらゆるサポートをおこなっております。
売却に関する税務処理についてもしっかりとサポートいたしますので、太陽光発電の売却について悩んでいる場合には、ぜひお気軽にお問合せフォームやお電話にてお気軽にご相談ください。