出力250kW以上の太陽光発電を設置し、なおかつFIT制度の認定を受けた場合は、入札制度が適用されます。しかし、出力250kW未満の太陽光発電しか稼働したことのない方にとっては、入札制度の仕組みや価格設定などに関してわからない部分も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、太陽光発電のFIT制度に関する入札制度の仕組みやメリット・デメリット、価格推移について詳しくご紹介します。太陽光発電の入札制度に適用されるために内容を確認している方や今後出力250kW以上の太陽光発電を導入する方などは、参考にしてみてください。
太陽光発電の入札制度とは?
産業用太陽光発電のような大規模太陽光発電所では、ある条件を満たす場合に入札制度が導入されています。太陽光発電の入札制度とはどのような制度なのかを詳しく解説していきます。
FIT制度で導入されている制度
太陽光発電の入札制度は、固定価格買取制度である「FIT制度」で導入されています。
日本は世界的に見ても電力の消費量がとても高い国ですが、電気の発電を行なうためのエネルギー資源の自給率はとても低く、そのほとんどを外国からの輸入に頼っています。
国の経済成長にも欠かせない電気エネルギーの自給率を増やすため、また世界的な問題となっている地球温暖化対策のためにも太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの利用拡大が重要となっています。
再生可能エネルギーの利用拡大を進めるため、2012年7月より電気事業者に対し一定期間の間、再生可能エネルギーで発電された電力を固定価格で買い取ることを義務付ける「FIT制度(固定価格買取制度)」が導入されました。
FIT制度の買取り価格は通常の電力市場価格よりも高く、その差額は「再生可能エネルギー発電賦課金」という形で電気を利用している全国民が負担しています。
FIT制度の導入により、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入は急速に進みましたが、その結果「再生可能エネルギー発電賦課金」が年々上昇し、国民の負担が増えているのが現状です。
国民の負担軽減を図るため、FIT買取総額の約70%を占める事業用太陽光発電のような大規模太陽光発電所を除外し、価格低減に繋がる入札制度が2017年より導入されることになりました。
入札制度により業者間での価格競争が起こり、適正価格へと移行することが期待されています。
指定容量まで入札可能
FIT制度による太陽光発電の入札制度は2017年より開始していますが、入札対象や募集容量、上限価格などはその募集ごとに異なっています。
実施時期 | 上限価格 | 平均入札価格 | |
---|---|---|---|
第1回 | 2017年度 | 2,000kW以上 | 500MW |
第2回 | 2018年度上期 | 2,000kW以上 | 250MW |
第3回 | 2018年度下期 | 2,000kW以上 | 197MW |
第4回 | 2019年度上期 | 500kW以上 | 300MW |
第5回 | 2019年度下期 | 500kW以上 | 416MW |
入札に参加する場合、まずは入札対象に入っている必要があります。参加資格が認められた場合、安定的に供給できる1kWhあたりの価格と発電出力について入札をします。
FITによる入札制度では、価格を決定する方式としてペイ・アズ・ビッド方式が採用されており、最も低い価格を入れた発電業者から順次落札が確定していき、入札全体の募集容量に達するまで落札されます。
落札した発電事業者は、希望した買取価格で売電を行なうことになります。
FIP制度は一部設備が入札の対象
FIT制度により、再生可能エネルギーの導入が進みました。今後は、日本が環境対策の目標として掲げている「2050年カーボンニュートラル」の達成に向けて、またエネルギー自給率を上げるために再生可能エネルギーを主力電源としていく必要があります。
そのためには、火力発電などの他の電源と同様に、電力市場の状況に合わせた需要と供給のバランスが取れる、自立した電源になっていくことが求められているのです。
再生可能エネルギーを電力市場へ統合していくためのステップとして、2020年6月に電力市場の価格と連動した「FIP制度」が導入されました。
FIPとは「Feed-in Premium」の略称で、FIT制度のように固定価格で電力を買い取るのではなく、再生可能エネルギーの発電業者が卸市場などで売電した場合に、売電価格に対し一定の補助額(プレミアム)を上乗せする仕組みとなっています。
電力市場への統合を促しながら、投資インセンティブの確保と、国民の負担の低減を狙いとしています。
FIP制度でも入札制度が導入されていますが、その対象となっているのは、出力が1,000kW以上の大規模なメガソーラーです。
入札価格の推移と2022年の価格
2017年度より開始されているFIT制度による太陽光入札制度の入札価格の推移を紹介します。
2021年までの主な入札価格
実施時期 | 上限価格 | 平均入札価格 | |
---|---|---|---|
第1回 | 2017年 | 21円/kWh | 19.64円/kWh |
第2回 | 2018年 | 15.5円/kWh | 17.06円/kWh |
第3回 | 2018年 | 15.5円/kWh | 15.04円/kWh |
第4回 | 2019年 | 14.0円/kWh | 13.46円/kWh |
第5回 | 2019年 | 13.0円/kWh | 13.38円/kWh |
第6回 | 2020年 | 12.0円/kWh | 11.49円/kWh |
第7回 | 2020年 | 11.5円/kWh | 11.34円/kWh |
第8回 | 2021年 | 11.0円/kWh | 10.82円/kWh |
第9回 | 2021年 | 10.7円/kWh | 10.6円/kWh |
第10回 | 2021年 | 10.5円/kWh | 10.31円/kWh |
第11回 | 2021年 | 10.2円/kWh | 9.99円/kWh |
2022年の入札価格は過去最低
2022年度は、FITでの入札制度に加えてFIPによる初めての太陽光の入札も行われましたが、FIT・FIP制度共に募集容量に届かない結果となりました。FITによる太陽光入札第12回の概要は下記となっています。
- 対象設備:出力250kW 以上 1,000kW未満の太陽光発電設備
- 入札量(募集容量):50.0000MW
- 供給価格上限額:10.00円/kWh
- 平均入札価格:9.93円/kWh
2022年度に行われた第12回の平均入札価格は、上記のように過去最低の価格となっています。
FIP制度の入札結果
2022年度に初めてのFIPによる太陽光の入札が行われました。
- 対象設備:出力1,000kW 以上の太陽光発電設備
- 入札量(募集容量):175.0000MW
- 供給価格上限額:10.00円/kWh
- 入札参加資格の審査のために提出された事業計画数の合計:13件
- 入札件数の合計:5件
- 入札された再生可能エネルギー発電設備の出力合計:128,940.0kW
- 落札件数の合計:5件
- 平均入札価格:9.87円/kWh
上記のように募集容量を大幅に下回った結果となりました。
入札価格下落傾向の時は売却もおすすめ
FIT制度による高値での売電ができなくなったことで利益が下がり、対策に悩んでいる場合は、売却を検討することもできます。
太陽光発電設備の売却益を得られる
FIT制度が導入された際には、発電した電力を固定で通常よりも高く売電できることが大きな魅力となっていました。
しかし、FIT制度での入札価格は徐々に下落の傾向となっており、2025年までには卸電力市場価格並みとする目標が掲げられているため、今後も売電価格は下がり続ける可能性が高くなっています。
売電価格が下がったことにより利益が下がってしまう、このような場合にはFIT制度で導入している太陽光発電の売却もおすすめです。
中古太陽光発電の需要は比較的高く、売主を見つけやすいため、希望の価格で太陽光発電設備を売却しやすくなっています。太陽光発電設備の売却にてまとまった利益を得ることが可能となります。
セカンダリー市場の需要は高いため売却益を伸ばしやすい状況
太陽光発電の売却をする際に活用できるのが、セカンダリー市場です。セカンダリー市場とは、すでに稼働している太陽光発電設備を中古で売り買いする市場のことを言います。
2050年のカーボンニュートラルの目標に合わせ、環境経営に対する意識が高まっていることから、再生可能エネルギーへの投資を検討している企業・投資家が多く存在しています。
そのため、中古の太陽光発電の売却でも利益を伸ばしやすい状況となっています。
太陽光発電の入札価格下落に悩んでいる時はセカンダリー市場への売却がおすすめ!
FIT制度が創設された当初は、太陽光発電で発電した電気を通常の価格よりも高値で売電できていました。しかし、太陽光発電などの再生可能エネルギーの拡大や、それに伴う太陽光発電設備自体の導入価格が下がってきたことにより、売電価格も徐々に下がってきています。
さらに、2017年より事業用太陽光発電のような大規模太陽光発電所については、入札制度という新たな制度によって入札価格が決定します。
FITによる入札制度でも、入札価格は回を重ねるごとに下がってきているのが現状です。
太陽光発電の入札価格の下落に悩んでいる場合には、セカンダリー市場への売却を検討することをおすすめします。
弊社とくとくファームでは、全国各地からFIT認定済みの中古太陽光発電所の売却に関する相談を受け付けております。専任の担当者が太陽光発電設備の状況を確認した上で査定し、売却額アップに向けた洗浄・点検なども実施します。
また、売却後で悩みがちな税務処理に関してもサポートいたしますので、少しでも売却に関心を持っている方は、ぜひお気軽にお問合せフォームやお電話にてご相談ください。