太陽光発電投資を行う際、発電ロスと呼ばれる事象が起きるケースがあります。発電ロスは、太陽光パネルから発電された電気の損失に関する専門用語で、太陽光発電投資を行っている方にとって重要かつ注意すべきポイントです。なぜなら発電ロスの大きい状態では、売電収入の大幅な減少につながってしまうからです。
そこで今回は、太陽光発電における発電ロスの意味や原因、解決法について詳しくご紹介します。太陽光発電投資の発電効率に悩んでいる方や発電ロスの意味について知りたい方などは、参考にしてみてください。
太陽光発電の発電ロスとは
まずは、太陽光発電の発電ロスとはどのような意味なのか、について確認していきましょう。
太陽光を電気に変換できない割合のこと
太陽光発電における発電ロスとは、太陽光を電気に変換できないエネルギーのことです。
発電ロスが90%ある場合、太陽光パネルで吸収した光のうち10%しか発電できていないことになり、変換効率は10%になります。同様に発電ロス80%の場合は、発電効率は20%です。つまり、発電ロスの少ない状況であればあるほど、効率よく発電できるのです。
ちなみに変換効率は、太陽光といったエネルギーから何%電気へできるのか示したものです。
なお、一般的な太陽光発電の発電ロスは80%程度で推移しています。変換効率に直すと20%程度です。
発電ロスの少ない発電所は水力や火力発電
発電ロスの少ない発電システムは、水力発電や火力発電です。火力発電の発電ロスは、55~65%程度(変換効率35~45%程度)と、太陽光発電の1.5倍以上の水準です。中でもLNG(液化天然ガス)を使用した火力発電の発電ロスは、55%程度に抑えられています。
さらに水力発電の発電ロスは20%程度で、太陽光発電に対して4倍程度の変換効率です。このように太陽光発電は、発電設備の中でも発電ロスの比較的大きい設備といえます。
発電ロスの原因はなに?
発電ロスの意味について把握したあとは、太陽光発電における発電ロスの原因について確認していきましょう。太陽光発電の場合は、光の波長や天気といった点から、設備に関する問題が複雑に関係しています。
太陽光に含まれる全ての波長を吸収できない
太陽光パネルは、太陽から降り注がれる光に含まれている波長のうち、一部しか吸収および電気変換できません。そのため、発電ロスが生じるのです。
太陽光を含む光には波長があり、波のようにゆらいでいます。波長の長さによって光の色や性質が変わり、可視光線(人間の目で見える光)以外の光も存在します。たとえば、X線や紫外線などは可視光線より波長の短い光ですし、赤外線やマイクロ波は波長の長い光です。
天気や気温変化
天気や気温変化は、太陽光パネルに影響を与えている要素の1つです。雨の日は、晴れの日に対して20分の1から5分の1程度まで発電量が低下します。また、曇りの日でも10分の1から3分の1と、発電ロスの大きな状態が続きます。
さらにシリコン結晶系の太陽光パネルは、パネルの表面温度が25℃を超えた段階で、1℃上昇ごとに0.45%の発電ロスが生じます。つまり、晴れの日でも真夏などの気温の高い時期は、本来の性能を発揮できないということです。
太陽光パネルの汚れ
太陽光パネルの表面に汚れが溜まると日光を吸収できない部分が出てしまうため、発電ロス増加の原因につながります。
太陽光パネルには、砂や泥、ホコリ、鳥のフン、ゴミなどが付着します。これらを放置したままにしておくと、晴れの日が続いたり洗浄を怠ったりすることが原因となって、こびりついてしまいます。
太陽光パネルの破損
ホットスポットの発生や破損は、太陽光パネルの性能低下につながります。すると、発電ロスが増加にするだけでなく、故障による事故リスクも高くなります。
ホットスポットとは、日陰や汚れなどで部分的に発電していない部分と正常に発電している部分に電流値の差が生じ、発電していない部分が発熱する現象のことです。
発熱量が大きければ大きいほど、太陽電池の故障や太陽光パネル全体の破損につながります。
周辺機器の劣化や破損
太陽光パネルだけでなく、パワーコンディショナやケーブルなどの劣化や破損も、発電ロスやシステム全体の故障につながります。
パワーコンディショナの寿命は一般的に10~15年程度ですが、使用環境や製品の状態、メンテナンスの頻度によって変わります。太陽光パネルは20年以上使用できるため、パワーコンディショナの方が早く劣化する傾向があります。
ケーブルに関しては、ねずみなどの動物によってかじられたり、いたずらで被覆をはがされたりしてしまうと、電気抵抗値の上昇による発電ロスの他、火災や感電事故といったリスクにもつながります。
電気回路の抵抗
太陽光発電システムが正常に稼働していたとしても、電気回路に電気抵抗が生じると発電ロスが発生します。
太陽光パネルやパワーコンディショナをつなぐケーブル、各機器の中に搭載されている電気回路は、電気が流れる際に発熱します。また電気の一部は熱エネルギーに変換されるため、新品の機器であっても発電ロスは防げません。
発電ロスを減少するには、光の吸収率向上と熱の発生を抑えるのが重要なポイントといえます。
発電ロスを改善する方法
ここからは、太陽光発電の発電ロスを改善する方法についてわかりやすく紹介していきます。
変換効率の高いパネルと交換
変換効率の高い太陽光パネルへの交換は、発電ロスの改善しやすさという点でメリットがあります。太陽光パネルメーカーは、耐久性や寿命、変換効率など、さまざまなポイントの改善点を見つけ、新しいパネルの開発に取り組んでいます。
19世紀に開発された初期の太陽光パネルは、変換効率が1%前後と非常に低い性能でした。発電ロスに直すと99%という数値です。
しかし2022年時点の変換効率は、シリコン結晶系で20%を超えるモデルも存在します。さらに大手メーカーのシャープが開発中の太陽光パネルが、2022年6月に世界最高の変換効率32.66%を達成したとの報告もあります。
このように、太陽光パネルの変換効率は年月とともに伸びてきているので、新型モデルに買い換えるのもおすすめです。
太陽光パネルを定期的に清掃
定期的に太陽光パネルを洗浄・清掃することも、太陽光発電の発電ロスを少しでも抑えるために有効な方法です。
太陽光パネルは、日陰はもちろん、砂や鳥のフンといった汚れ、雑草による影にも影響を受けやすい製品です。そのため、定期的に敷地内の除草やパネルの洗浄は、発電ロス低減策として重要です。ただし、これらの作業は感電などのリスクをともなうこともあるので、O&M業者に依頼するのが安全で安心です。
ケーブルの破損対策を施す
太陽光発電のケーブルは、飛来物や獣、いたずらなどで破損してしまう場合があります。そこで、発電ロスおよび事故リスクを抑える上でも、ケーブルの破損対策は欠かせないポイントです。
基本は、太陽光発電所の設置されている敷地を柵で囲うことです。また防犯カメラや遠隔監視装置を設置すれば、侵入や発電量の異常をすぐに察知し、防犯会社やO&M業者に対処してもらえます。
効率の高いパワコンを導入
発電ロスの低減には、高効率なパワーコンディショナの導入も欠かせません。
太陽光パネルで生み出した電気を売電するには、パワーコンディショナによる直流・交流変換と制御が必要です。そのため、パワーコンディショナの容量が太陽光パネルより小さいと、発電ロスの増加につながります。
他にもパワーコンディショナの劣化や性能の問題から、カタログスペックやシミュレーションより発電ロスが増えてしまうこともあります。
パワーコンディショナを選ぶ際は、変換効率や出力、マルチストリング型(各パネルの状況に合わせた制御が可能)かどうかを確認するようにしましょう。
太陽光発電の発電ロスを改善する場合の注意点
太陽光発電の発電ロスを改善する際、ランニングコストと改善による収益率を比較し、効果のある施策かどうかを慎重に検討する必要があります。
ここまで紹介した発電ロス対策・改善方法の多くは、時間と手間、そして費用がかかります。太陽光パネルの交換費用は数100万円以上かかることがあり、さらにパワーコンディショナの交換や防犯対策強化にもお金が必要です。
たとえ発電ロス対策を施したとしても、場合によってはコスト以上の効果を得られない可能性もあります。
対策による黒字化が見込めない時は、太陽光発電所の売却を検討してみるのもいいかもしれません。
太陽光発電所の売却メリット
発電ロスの対策で収益を改善できない時は、太陽光発電を売却し、新たに太陽光発電投資もしくは別の設備投資を始めた方がいい場合もあります。
しかし太陽光発電所の売却について未経験の方は、具体的なイメージがわきにくいかと思います。そこで最後は、太陽光発電所の売却により得られるメリットをわかりやすく解説していきます。
維持管理コストから解放される
太陽光発電所を売却するメリットのひとつは、維持や管理にかかるコストから解放されることです。設備と土地の売却後は、新たなオーナーが太陽光パネルやパワーコンディショナ、ケーブル、敷地内の管理を行います。また名義変更手続きなどの手続き関係は、売買の仲介サポートを行う事業者が代行してくれるので、面倒な手手間もかかりません。
なお、売却益が課税対象であることは忘れないでください。
まとまった売却益を得られる
数100万円・数1,000万円単位の売却益を得られるのは、太陽光発電ならではのメリットです。
たとえば、太陽光発電所を撤去・廃棄する場合、これらの作業にかかるコストを負担しなければいけません。また、太陽光発電事業を継続すると、発電ロスに伴う改修や維持管理コストなどが必要になります。
一方、太陽光発電所を売却した場合は、これらの作業や費用が不要ですし、土地と設備の売却によって固定資産税などの負担もなくなります。また売却益を得られるので、新たに設備投資を始めたり別の場所や異なる方針で太陽光発電投資を進めたりすることもできます。
売却額は、出力や稼働年数、FIT単価、設備の状態などによって変わるものの、一般的に年間の売電収入×10倍前後で設定されています。年間100万円の売電収入であれば、売却額は1,000万円前後が見込めるでしょう。
専門業者へ依頼することが可能
太陽光発電の売却手続きなどは、専門業者へ全て任せることが可能です。
太陽光発電は、他の再生可能エネルギーと比較して個人や小規模事業者にも普及している設備です。そのため、個人向けの販売店や廃棄サービスの他、中古太陽光発電の売買仲介サービスも誕生しています。
弊社とくとくファームの場合も売買仲介サービスを展開しています。売買仲介サービスを利用した場合は、買い手の集まる物件情報サイトへ物件情報を掲載できますし、売買にかかる手続きを全て代行してもらえます。さらに売却後のアフターフォローも完備されているので、税務処理などの相談も可能です。
太陽光の発電ロスに悩んでいる場合は売却を含めて早急に対応すべき!
太陽光発電の発電ロスとは、日光を吸収および電気へ変換できないエネルギー量や割合のことです。一般に太陽光発電の場合は、太陽から降り注がれる光のうち20%前後しか電気へ変換できません。また太陽光発電設備の劣化やホットスポットといった事象によって、発電ロスが増加してしまうこともあります。
太陽光発電の収支バランスで悩んでいる方や太陽光発電以外の設備投資を検討し始めた方は、今回の記事を参考にしながら太陽光発電所の売却についても検討してみてはいかがでしょうか?
太陽光発電所の売却で悩むポイントといえば、売買契約や名義変更手続き・買い手との交渉や物件情報の掲載、そして売却後の税務処理です。とくとくファームなら、専任担当者がお客様の所有されている設備や土地の状態を確認し、査定と売却額アップへ向けた対策を打ち出していきます。
ご相談の際はお電話やメールの他、弊社HPの査定フォームもぜひご利用ください。査定サービスは、わずか30秒で査定額を確認可能なかんたん査定や詳細な査定結果を確認できるしっかり査定など、複数のサービスに分かれています。