国際イニシアチブのRE100は、脱炭素経営や太陽光発電で自家消費を進めている企業にとって加盟メリットの多い枠組みです。さまざまな基準が定められていて、2022年11月に一部変更されました。そのため、これからRE100の加盟を目指す企業や既に加盟している企業も、基準を正確に把握しておく必要があります。
そこで今回は、RE100の基準や改定された内容について詳しくご紹介します。RE100加盟を目指している方やRE100の基準改定について気になっている方などは、参考にしてください。
RE100の基準とは
国際的イニシアチブのRE100は、再生可能エネルギーで事業活動に必要な電力をまかなうことについて示されています。(国際的イニシアチブ:世界的な枠組み、取り組みのこと)
まずは、RE100の基準について確認していきましょう。
RE100へ参加するための条件
RE100基準は、同イニシアチブへ参加するための条件を指しています。条件を満たした企業は、RE100参加への審査を受けることが可能です。また審査に通過した場合は、RE100企業として活動できます。
以下に主な参加条件を紹介します。
- 自社の消費電力量が100GWh以上を記録している
- 自社の事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目標とし、なおかつ目標達成時期などを細かく設定している
- 自社の子会社やグループ会社でRE100目標の達成へ向けて活動する(支配率50%の子会社を含む)
工場や倉庫、自社ビルを所有している企業は、消費電力量100GWh以上を記録することが可能です。小規模な工場では、消費電力量1ヵ月あたり1GWh程度に達することもあり、比較的多くの企業で条件を満たせる可能性があります。
RE100には達成目標も定められている
冒頭でも触れましたが、RE100には企業向けに環境関連の目標も定められています。RE100に加盟した企業は、100%再生可能エネルギーで自社の事業に必要なエネルギーをまかなうという目標を達成しなければいけません。
再生可能エネルギーは、以下のような化石燃料を使用せずに発電するエネルギー・設備を指しています。
- 太陽光発電
- 風力発電
- 水力発電
- 地熱発電
- バイオマス発電
原子力発電は化石燃料ではないものの、放射性物質に関する問題があるため、RE100基準電力として認められていません。また火力発電には化石燃料が使用されているので、原子力発電と同様にRE100基準電力ではありません。
RE100 Technical Criteriaという技術的基準もある!
RE100には、RE100 Technical Criteriaという再生可能エネルギーに関する技術的条件も定められています。
方法 | 概要 |
---|---|
自社設置と自家消費 | 自社で再エネ発電設備を購入し、発電した電気を自家消費 |
自社の敷地内で電力購入 | 自社の敷地内に電力会社の再エネ発電設備を設置してもらい、再エネ電力を購入 |
自社の敷地外で電力購入 | 自社の敷地外に電力会社の再エネ発電設備を設置してもらい、既存の送電網ではなく特殊な専用配線を通じて再エネ電力を購入 |
電気事業者から電力を購入 | 再エネ発電事業者と契約を交わし、企業の電力使用量と同じ再エネ発電量を発電してもらう 再エネ発電事業者が属性証明書という再エネに関する証明書類を購入する |
分離型契約証書を購入する | 電力使用企業が、再エネ発電事業者から発行されている電力属性証明書を購入する |
既存の送電網経由で再エネ電力を購入 | 再エネ電力を供給している電力会社から、既存の送電網経由で電力購入 |
再エネ95%以上の送電網から購入 | 国の標準的な電力が再エネ電力で、なおかつ再エネの割合は95%以上 さらに再エネ電力の調達方法が確立していない環境であれば、国の電力系統をRE100電力として認められる” |
そこで以下のような複数の方法を検討するのが大切です。
このように再生可能エネルギーを調達する方法は、RE100に細かくルールが定められています。自社で再生可能エネルギーを100%まかなう場合、電源設備の設置だけでは厳しいといえます。
RE100の基準改定とは?
RE100の基準は不定期で改定されています。そのため、これからRE100加盟を目指す企業は、新しい基準や改定された条件を把握した上で準備する必要があります。
2022年に発表された基準改定は2023年に実施される予定なので、はやめに確認しておくことをおすすめします。続いては、RE100の基準改定についてわかりやすく紹介していきます。
追加性の定義が明確になる
RE100 Technical Criteriaの追加性に関する定義が、2023年に明確に定められます。RE100加盟企業は、再生可能エネルギーの調達方法を検討する際に、電力に関する選択基準を考慮しながら決めていく必要があります。
これまでの選択基準は、環境負荷と持続性、地域貢献、追加性の4種類で、追加性以外に関する定義が定められていました。
環境負荷 | 再生可能エネルギー発電設備の設置工事や運転の際に環境への負荷が小さいこと |
持続性 | ・化石燃料と異なり持続可能で環境への負荷が少ないエネルギーで発電ができる ・発電後に有害な廃棄物が排出されないこと |
地域貢献 | 発電事業の展開によって設置場所周辺の地域社会も恩恵を受けられること |
2023年3月の基準改定で明確にされる追加性は、再生可能エネルギー発電設備を火力発電や原子力発電の代替設備として活用していくという定義です。
つまり、環境価値の取引だけでなく、自然エネルギーを活用した発電設備の普及を促しているといえます。
再生可能エネルギー電力の運転年数に制限を追加
2023年3月の基準改定では、電気事業者から電力を購入もしくは分離型契約証書の購入を選択する際、再生可能エネルギーを含む自然エネルギー発電設備の運転年数に関して、明確な制限が設けられます。
従来のRE100では、老朽化した再生可能エネルギー発電設備もRE100基準電力として認められていました。しかし、CO2の排出量削減効果のある発電設備を重視していく必要があるため、稼働年数15年以内の発電設備のみRE100基準電力として認められる方向に変わります。
またRE100で推奨されている電力の調達方法は、あくまで再生可能エネルギー発電設備の新規設置です。新規設置が難しい場合は、稼働年数15年以内の再生可能エネルギー発電設備から発電された電力や証書の購入という内容です。
再生可能エネルギー発電事業者から電力を調達したり環境証書の購入を検討したりしている場合は、調達元の稼働年数を確認する必要があります。
その他改定内容
前段で紹介したRE100基準改定の他には、電力調達方法とRE100基準電力の認定に関する変更も行われる予定です。
たとえば、バイオマス発電や水力発電を導入する際は、環境負荷の小さい状態でなおかつ持続性のある設備でなければRE100基準電力として認められません。
また、稼働年数の制限を受けない電力調達方法を選択していたとしても、契約先の変更によってRE100基準電力の対象から外されてしまう場合もあります。
今後のRE100基準に沿って脱炭素経営を進めるには?
RE100基準に沿って脱炭素経営を進めていくには、改定内容を把握した上でさまざまな電力調達方法を組み合わせていくのが大切です。
しかし、初めて脱炭素経営に取り組む場合、再生可能エネルギー発電設備の種類や調達方法に関してよくわからず悩むケースも多いのではないでしょうか。
そこで最後は、脱炭素経営初心者にも導入しやすい電力調達方法を紹介していきます。
非化石証書を購入しながら再エネ電力を購入
再生可能エネルギー発電設備の導入が難しい時は、RE100基準に適した非化石証書を購入しながら再エネ電力を購入していくのもおすすめです。
非化石証書とは、再生可能エネルギー発電設備で発電された電力から発行された環境証書で、RE100基準電力のうち「分離型契約証書」に該当します。
ただし、発電所の稼働年数が15年以内でなければRE100の成果として報告できないため、発電所に関する情報を確認した上で契約を検討しましょう。
また、非化石証書だけでは、自社の電力を再生可能エネルギーで100%まかなえません。再エネ発電事業者から電力を購入することで、CO2排出削減効果を伸ばすことが可能です。
太陽光発電で発電した電気を自家消費していく
よりシンプルでCO2排出削減効果を上げやすい方法は、自社で非FIT型太陽光発電所の導入および自家消費です。
RE100基準電力は、FIT制度の認定を受けていない太陽光発電です。そのため、FIT認定を受けずに太陽光発電の稼働を始めて、電力をオフィスや工場など自社の設備へ供給すれば、RE100の成果として報告できます。
また、太陽光発電所の初期費用は他の再生可能エネルギー設備より安く、1,000万円台から検討可能ですし、さまざまな場所で設置運用できます。
RE100へ参加するには2023年の基準改定を把握しておくのが大切
RE100基準とは、同イニシアチブへ加盟するための条件を定めたものです。また、2023年に一部基準が改定および追加されるため、加盟を目指す方や既に加盟している方も新たな基準に沿った脱炭素経営を進めなければいけません。
脱炭素経営のためにRE100へ加盟したい方や、RE100に加盟するため再エネ電力の調達方法を模索している方は、今回の記事を参考にしながら自家消費型太陽光発電所の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
自家消費型太陽光発電所は空いた土地や建物の屋根などに設置できるため、他の再生可能エネルギーと比較して設置および運用しやすいという特長があります。また風力発電所などより初期費用が安く、1,000万円台から検討できるのも嬉しいポイントです。
弊社和上ホールディングスでは、自家消費型太陽光発電所の企画提案から設計、施工、保守点検、運用サポートまで一括対応しています。
自家消費型太陽光発電所を運用していくには、設置場所の選定から予算や場所に合った設計図の作成など、さまざまなハードルをクリアする必要があります。和上ホールディングスは、創業から30年、15,000棟を超える施工実績を持ち、自社でも太陽光発電所を所有し、太陽光発電に関する知識と技術・経験を持ち合わせています。
少しでも自家消費型太陽光発電について関心を持っている方や自家消費型太陽光発電に興味があるものの疑問もある方は、ぜひこの機会にご相談ください。専任の担当者が、自家消費型太陽光発電のコストやメリット、デメリット、その他細かなポイントにもお応えします。