温室効果ガスの削減に関する取り組みは、現在世界中で行われています。最近ではCO2の排出量削減だけでなく、排出済みのCO2を回収していくという新しい対策が考えられています。CCUSは、CO2の回収・貯留に関する新技術で、太陽光発電事業にもつながります。
そこで今回は、CCUSの意味や仕組み、将来性やメリット・デメリットについて詳しくご紹介します。太陽光発電で発電した電力の有効活用を考えている方やCCUSについて関心を持ち始めた方などは、参考にしてみてください。
CCUSとは?
CCUSは新しい環境関連技術の1つで、脱炭素に役立つのが特徴です。それでは、CCUSの意味と国の政策について1つずつ確認していきましょう。
空気中に含まれる二酸化炭素の分離と回収に関する新技術
CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)とは、工場や商業施設、発電所、ビルなどから排出された二酸化炭素(CO2)を、酸素や窒素といった他の気体と分離させ、回収および別の用途へ活用していく新技術のことです。
具体的には、二酸化炭素を排出している工場などの建物に気体回収設備を連結させます。次に、気体回収の設備で二酸化炭素の分離と回収を行い、回収した二酸化炭素を地中深くに貯留させたのち、さまざまなサービスや商品へ活用していくという流れです。
なお、二酸化炭素の分離と回収、地中深くに貯留させる技術は、CCSと呼ばれています。
CCUSは二酸化炭素の分離と回収、そして活用まで含まれているのが特徴です。2つの用語には共通点が多いので、混同しないよう注意しましょう。
経済産業省でロードマップが敷かれている
経済産業省では、CCSに関する技術開発や活用方法に関するロードマップの作成および公開をしています。内容は主にCCSですが、CCUSとも関連性の深い内容です。
以下に経済産業省のロードマップをまとめます。
年度 | 概要 |
---|---|
2023~2026年 | CCSへの投資が適切かどうか判断するために、二酸化炭素の貯留につながる採掘場所に関するデータ収集や評価を行う |
2030年まで | 技術開発に必要な環境整備を完成させる |
2050年 | CO2を地中に留める、貯留量の目安を年間1.2億tから2.4億tに達するという目標が定められている |
CCSおよびCCUSは国の推進もあることから、スピーディに環境整備が行われる予定です。しかし法的な整備が行われていないため、CCSやCCUSの事業を検討している企業にとって参入するかどうか悩むところです。
そこで政府は、環境整備に加えてCCS・CCUS関連の法律を整備させていく方針についても掲げています。法律の具体的な内容に関する整理は、2022年にまとめられる予定です。
CCUSモデルの仕組み
続いては、CCUSモデルの具体的な仕組みについてわかりやすく紹介していきます。
二酸化炭素の分離と回収
まずは、工場や発電所、その他施設から排出されている二酸化炭素を気体回収用の設備へ送り、他の気体と分離させていきます。
空気中に含まれている成分は、二酸化炭素だけでなく酸素や窒素なども含まれています。そこでCCUSでは、いくつかの方法で二酸化炭素のみ分離・回収する方法が提示されています。
分離法 | 概要 |
---|---|
化学吸収法 | 工場などから排出された空気をアルカリ性水溶液と接触させ、二酸化炭素を吸収水溶液を加熱していくと二酸化炭素との分離が可能になる |
物理吸収法 | 活性炭、ゼオライトといった微細な穴が多数空いている物質に二酸化炭素を含む空気を吸着させる吸着させた活性炭やゼオライトから、二酸化炭素のみ取り出すことが可能 |
酸素燃焼法 | 酸素で空気を燃焼させると、排出された空気が水と二酸化炭素のみになる濃度95%以上の二酸化炭素を取り出せるのが特徴 |
このように、排気ガスから二酸化炭素を分離させる方法は既に提示されていて、なおかつ既存の設備や機器で実現できます。
二酸化炭素の輸送
排気ガスから分離させた二酸化炭素は、さまざまな方法で貯留場所に輸送します。
輸送方法に関しては、二酸化炭素回収と貯留場所との距離や環境によって変わります。具体的な手段は、船舶、鉄道、タンクローリーなどが挙げられます。
他に、分離回収設備と貯留場所をパイプラインで接続し、パイプを伝って輸送させる方法などもあります。
輸送した二酸化炭素を地中などへ貯留
これらの方法で輸送した二酸化炭素は、地中深くや海中に貯留する必要があります。(貯留:ある場所へ物質を貯めること)
二酸化炭素を地上へ漏らさず貯留するには、約800mもの深さまで注入しなければいけません。アメリカでは、石油増進回収法で二酸化炭素の注入と貯留を行っています。石油増進回収法とは、古い油田の原油を押し出しながら二酸化炭素を注入していくという方法です。
また、海中で貯留するには、まず海底で採掘を行い、二酸化炭素貯留用の井戸を作ります。あとは、海上の船舶から特殊な技術で海底の井戸に二酸化炭素を注入していく流れです。
二酸化炭素の再利用
海底や地中深くに貯留させた二酸化炭素は、2種類の方法で再利用されます。1つは二酸化炭素を取り出し、そのままの状態で活用する方法です。二酸化炭素の加工が不要なので、再利用の手間をかけずに済みます。
もう1つは、カーボンリサイクルという方法です。カーボンリサイクルは、二酸化炭素の加工および再利用を指します。
たとえば、地中などに貯留した二酸化炭素をウレタン製品やコンクリートの製造に活用したり、再生可能エネルギーと組み合わせてメタンを生成させたりするのがカーボンリサイクルの特徴です。
CCUSの導入メリット
CCUSの仕組みを把握したあとは、企業の導入メリットについて確認していきましょう。
二酸化炭素の削減率を伸ばしやすく脱炭素化に貢献
脱炭素化に貢献しやすいのが、CCUSの大きなメリットです。企業にとって脱炭素化に向けた脱炭素経営は今や重要な要素であり、事業の成長に欠かすことができないともいえます。
脱炭素化の実行には、二酸化炭素の排出量削減や吸収を行える設備の導入が必要です。省エネ設備のみでは、二酸化炭素を大幅に削減することは難しいといえます。
CCUSを活用すれば、二酸化炭素の排出量を抑えられない場合でも、分離回収によって脱炭素化に貢献できます。
カーボンリサイクルという循環型技術に役立つ
CCUSは、カーボンリサイクルという循環型技術を用いて事業の発展に役立ちます。
国が掲げているカーボンニュートラルを実現するには、製品の製造時に化石燃料以外のエネルギーを用いなければいけません。CCUSが普及すれば、二酸化炭素を化学品の製造やエネルギーとして使用することが可能です。また、二酸化炭素を再度分離・回収できるので、循環型社会を支える重要な技術といえるのです。
再生可能エネルギーとの組み合わせでガスインフラの生成
再生可能エネルギーと二酸化炭素を組み合わせることで、都市ガス用のインフラ構築も実現できます。
太陽光発電や風力発電、水力発電といった設備で発電した電気を活用し、水素を製造します。あとは、CCSで回収した二酸化炭素と水素を混合し、メタンを生成すれば都市ガスに用いることが可能です。
このように二酸化炭素の分離・回収は、単に二酸化炭素削減率の向上だけでなく、持続可能な社会を作り上げるための土台としても役立つのが強みです。
CCUSの課題
CCUSには、メリットの多い技術の一方、技術的な課題も存在します。ここからは、CCUSの課題について1つずつ確認していきましょう。
CCUSシステムの稼働に大量の電力およびコストが必要
CCUSのシステムを設置および稼働させるためには、大量の電力とコストがかかりす。電力の調達に火力発電が必要という事態になれば、二酸化炭素排出量の増加につながってしまいますし、技術開発の意味がありません。
また環境負荷を軽減させるための技術についても、コスト面の負担を抑えなければ多くの企業で導入・維持できない状況です。
そこで国や技術開発を行っている企業では、二酸化炭素の分離回収に伴うコストの削減へ向けた研究を進めています。またこの研究では、二酸化炭素の分離回収1tあたり4,000円程度のコストを数100円台まで抑えられるよう、日々試行錯誤しています。
二酸化炭素の貯留場所を確保しなければいけない
CCUSは、二酸化炭素を貯留し続けられる場所を分析および把握できる状況でなければ安全に運用できません。
たとえば地盤の弱い場所で二酸化炭素を貯留した場合は、周辺の地盤に影響をおよぼす可能性もゼロではありません。そのため経済産業省や環境省は、CCUSの普及推進に向けて、二酸化炭素の貯留場所として適している地域の調査を継続しています。
市場での研究開発だけでは伸びにくい
CCUSの技術やサービスの発展には、市場と官民、国が連携しなければ難しい状況といえます。
CCUSの技術そのものは画期的で、かつ循環型社会を実現させるために重要な要素の1つです。また脱炭素経営に役立つ技術でもあるので、企業にとっても利点の多い内容です。
しかし現状では、CCUSを活用して二酸化炭素の排出量削減・再利用によるメリットがわかりにくく、なおかつ認知度という点でも課題があります。
また、CCUSを活用した事業モデルが確立していないこと、CCUSに関する法律など、不透明な部分も存在していないのが現状です。
まずは国による事業環境の整備が、CCUS市場の発展に必要なポイントといえます。
CCUSに関する実証実験
苫小牧市では、日本初のCCUSに関する大規模実証実験を行いました。
2012~2015年度にかけては、CCUS実証試験に必要な設備の設計図作成と設備の設置工事、試運転といった準備段階でした。二酸化炭素の注入試験は2016年度に実施され、2019年度に試験目標の30万tまで注入できたようです。
また二酸化炭素は、製油所の水素製造設備から排出される空気から分離回収されています。
今後のスケジュールとして、二酸化炭素注入後の地層に関するモニタリングと地中の振動、海洋調査などが予定されています。他には、貯留させた二酸化炭素を活用したカーボンリサイクルに関する実験もあり、実用化に向けた研究開発が続いています。
太陽光発電がCCUSに用いやすい理由
CCUSが実用化された際、同技術を用いたサービスについて検討している企業もあるかと思います。しかしCCUSのみを導入したとしても、事業へ発展させるのは難しいところです。
そこで最後は、CCUSに太陽光発電を組み合わせるのがおすすめの理由について紹介していきます。
CCUSの電源として活用できる
CCUSの稼働に必要な電力は、太陽光発電でカバーすることが可能です。前半でも紹介したように、排気ガスや空気の回収、二酸化炭素との分離作業や回収、輸送、貯留には、専用のシステムを稼働させるための電力が必要です。
しかしこの分を電力会社から購入すると、調達コストがかかります。さらに火力発電由来の電力では、二酸化炭素の排出量が増加してしまうかもしれません。
そこで太陽光発電を導入すれば、化石燃料不使用の電力を自社でまかなうことが可能です。さらに太陽光発電と産業用蓄電池を組み合わせれば、夜間や電力使用量の多い時間帯でも設備を稼働させられます。
他の再生可能エネルギーより導入コストが安い
太陽光発電システムは、他の再生可能エネルギーと比較してコストの安い設備です。
CCUSを再生可能エネルギーで稼働させるには、発電効率の高い水力発電の方がいいと考える方もいるかと思います。また、風の吹きやすい地域でCCUSの設備を設置できるなら、風力発電で効率よく発電できるかもしれません。
しかし、水力発電や風力発電システムを設置するには、億単位の初期費用が必要です。さらに水力発電の場合は、ダムを建設しなければ発電環境を整備できません。
太陽光発電であれば、産業用設備を稼働させるだけの電力を1,000万円台の初期費用で調達できますし、ダムといった発電設備以外の建物や設備も不要です。また風の吹きやすい地域は限られていますが、日光の降り注ぐ地域は全国各地に存在します。
CCUSは太陽光発電との相性がよい新技術!
CCUSは、工場などで排出された空気から二酸化炭素のみ分離回収し、地中や海底深くに貯留させて、必要に応じて取り出しながら再利用する技術を指しています。
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