太陽光発電で効率よく売電するには、FIT制度の活用が必要不可欠です。FIT制度の認定を受ければ、一定期間は固定の買取価格で電気を買い取ってもらえます。しかし近年、電力会社側が太陽光発電の電力の買い取りを拒否するケースもあり、多くの発電事業者に動揺と影響を与えています。
そこで今回は、太陽光発電の買取拒否問題や今後の動向、出口戦略について詳しくご紹介します。太陽光発電の運用について悩んでいる方や太陽光発電の買取拒否について関心を持っている方などは、参考にしてみてください。
太陽光発電の買取拒否問題とは
太陽光発電の設備を導入している企業や、売電を念頭に置いて太陽光発電を導入しようと検討している場合、電気の買取拒否はとても大きな問題です。太陽光発電の買取拒否問題について詳しく説明します。
電力会社の新規買取中断のこと
太陽光発電の買取拒否問題とは、電力会社が太陽光発電の新規の買い取り契約を中断することです。しかし新規の契約に限っているため、すでに買取り契約済みで、固定価格買取制度で売電をスタートしている設備からの買い取りを拒否するわけではありません。
2014年に買取中断を九州電力が発表
2014年9月、九州電力は初めて太陽光発電の新規買取契約の中断を発表しました。その後これに続くように、北海道電力・東北電力・関西電力・四国電力・沖縄電力が、太陽光発電の売電申請の保留や新規買取契約の中断について発表したのです。
出力10kW未満は買取中断されていない
2014年に九州電力が発表した太陽光発電の新規買取契約手続き中断の対象は、10kW以上の大型太陽光発電設備です。一般家庭の住居に設置する太陽光発電の多くは5kW程度の設備なので、こちらは対象外です。
沖縄電力を除く、北海道電力・東北電力・関西電力・四国電力でも同じように、新規手続き中断の対象は10kW以上の大型設備です。
太陽光発電の買取拒否で企業はどうなった?
FIT制度(固定価格買取制度)を念頭に太陽光発電の導入へ大規模な投資を行った企業は、電力会社から新規買取契約手続きの中断をされたことで大きな影響を受けました。太陽光発電の買い取りを拒否された企業には、どのような影響が出たのでしょうか。
倒産や事業撤退のケースも出た
電力会社は、設備に問題がない場合は申請された太陽光発電の売電契約を受け入れる義務があることから、多くの企業が太陽光発電の固定価格買取を見込み、太陽光発電投資に参入しました。
太陽光発電での発電量を予測し、売電できることを前提として投資の計画を行った企業は、手続きが中断されたことで、計画どおりの売電収入を得ることができなくなります。
そのため、資金繰りに影響が出たり、顧客からの要望で太陽光パネルの設置を計画していた事業で、計画どおりに手続きが進まず頓挫したケースもあったりしたと言われています。
また2018年に九州電力が行なった、日本初の太陽光発電の「出力制限」による受け入れ一時停止後、東京電力HDなどの電力会社でも法人向け新規契約の一時停止などに踏み切り、太陽光発電事業から撤退する企業や倒産する新電力会社などが出てきました。
海外で事業を継続している
地球温暖化防止対策として国が普及拡大を求め、受け入れ制限は起こらないという前提で太陽光発電などの再生エネルギー事業は始まりました。
しかし電力会社による「買取拒否」により、太陽光発電などの再生エネルギー発電所を所有する新電力会社でも経営が悪化したことで、イーレックスなどのように、再生可能エネルギー発電事業を海外に移して継続している企業もあります。
2023年時点で太陽光発電の買取拒否はどうなっている?
太陽光発電の導入を検討している場合、2023年現時点での太陽光発電の買取拒否の状況がどのようになっているか気になっている方も多いでしょう。今後も発生する可能性があるのかについて説明します。
2023年時点で新規買取拒否は起きていない
2023年1月時点では、10kW以上の大型太陽光発電設備においても、電力会社による新規買取契約の手続き拒否は起きていません。しかし、太陽光発電の買取単価は年々下がってきています。
固定買取価格は年度毎に異なり、年初に行われる経済産業省の調達価格等算定委員会にて決定されます。
出力10kW以上の大型太陽光発電の設備では、固定買取価格が10円を下回る場合もあります。
経済産業省は、2025年度には太陽光発電の買取価格を11円まで値下げすることを目標としていますが、これはFIT制度がスタートした2009年度と比べると4分の1以下の価格となります。
FIT制度で太陽光発電の導入を検討している場合には、事前に申請年度の買取価格をしっかりと調べること、またその買取価格で投資した場合に利益が出るかどうかを検討することが必要です。
電力需給の大きなバランス変化が起きれば発生する可能性も
2023年時点では新規買取拒否は起きていません。しかし、新規契約件数が予想を上回る、電力需要が大幅に下回るなど、電力需給のバランスが大きく崩れた場合には、再び新規買取契約の中断が発生する可能性もあります。
太陽光発電の買取拒否に関する課題
世界的に地球温暖化が問題になっており、CO2の排出量を削減するための取り組みとして世界各国が太陽発電などの再生可能エネルギーの普及・拡大に力を注いでいます。
環境問題対策にも貢献する再生可能エネルギーは、とくに化石燃料などの自給率が低い日本にとって自国で自給できる新たなエネルギーであり、積極的に普及拡大に取り組むべきです。
ではなぜ、電力会社による買取拒否が起きるのでしょうか。電力会社が買い取りを拒否する理由などについて説明します。
電力会社にとっては安定供給に大きく関わる
電力会社は、利用者に対して質の高い電気を安定供給できるように努めています。なぜなら、電気は発電する量に対して消費する量が極端に下回るなど、供給と需要のバランスが崩れると、周波数が乱れたり、出力変動などにより大規模な停電につながったりするおそれがあるためです。
質の高い電気を安定的に供給するには、電気の発電量と利用者の消費が同時に同じ量で行われる必要があります。そのため、電力会社は変動する利用者の消費需要に合わせて発電する量を調整しているのです。
しかし天候や気温に左右される太陽光発電などの再生可能エネルギーの場合、発電量をコントロールすることができません。
電力会社は再生可能エネルギーで発電された電気を買い取ります。また、利用者(需要家)の需要に合わせて電気を安定供給するべく、火力発電や水力発電などの設備の発電をコントロールすることで供給と需要のバランスを保っています。
電力会社は、一年を通して利用者の需要がどのぐらいの量になるのか、太陽光発電など再生利用可能エネルギーでの買取量がどのぐらいになるのかの予測を立てています。
その上で、日々の発電量をコントロールできる火力発電などを用いることで、需要と供給のバランスを保ち、電気の安定供給を行っています。
そんな状況の中、電力会社の予測を上回る量の太陽光発電の新規買取契約の申請があった場合、供給と需要のバランスを保てなくなる可能性が出て来ます。そのため新規買取契約の手続きを中断する必要があるわけです。
発電事業者にとっては事業継続に関わる
電力会社への売電で収益を得ようとしている太陽光の発電事業者は、予定している発電量での売電が行えることを見通して資金計画を立てます。土地の購入と合わせて太陽光発電設備の導入を行う場合や、工場などの大規模な施設への設備導入する場合などでは、多額の投資が必要となるでしょう。
すでに資金を投資している状態で、電力会社の新規契約中断などで買取契約が進まなかったり、たとえ契約が行われたとしても、電気の安定供給のために太陽光発電の「出力制限」が電力会社から要請されたりすると、計画どおりの収益を得られず、発電事業の継続が困難になる可能性もあります。
太陽光発電の買取拒否に備える方法
環境経営に取り組むべく、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を検討している企業が増加する中、電力会社による太陽光発電の買取拒否に備えることはとても重要です。
太陽光発電の買取拒否に備える方法について具体的に説明します。
FIT制度に頼らない事業を検討する
FIT制度(固定価格買取制度)は、2023年現在も電力会社による新規の買取契約は行われているものの、買取単価は年々低減しています。
さらに電力会社による新規買取契約の中断や「出力制限」要請が出るおそれもあるため、FIT制度を適用しない非FIT太陽光発電事業を検討するのもいいかもしれません。非FIT太陽光発電では、太陽光で発電した電力を自社で消費することができ、売電を行う場合でも売り先を自由に選択することができます。
太陽光発電の売却を行う
FIT制度による電力の買取単価は、すでにFIT制度の認定を受けている太陽光発電のほうが新規に導入するよりも高くなっています。そのため、発電事業者や投資家にとって、稼働済みの太陽光発電所は投資リスクの低い資産として需要があります。
現在すでにFIT制度を適用した太陽光発電設備の運用を行っている場合には、売却を行うことで、電力会社による買取拒否に備えることが可能です。
太陽光発電の買取拒否は電力需給が原因!
電力会社による太陽光発電の買取拒否は、電力の需給バランスを保ち、質の高い電気を安定供給するために必要な対策であることがわかりました。
2023年度現在では、電力会社による新規買取契約の中断は起きていませんが、将来的に電力の需給と供給のバランスが崩れた場合などには、再び買取拒否や出力制限が要請される可能性もあります。
FIT制度を適用した太陽光発電は、電力会社からの出力制限が頻繁に要請されると売電収益に大きな損失が出ることでしょう。
すでにFIT制度を適用した太陽光発電を運用している場合には、太陽光発電の売却がリスク回避につながるため検討してみてはいかがでしょうか。
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