太陽光発電の中でもメガソーラー事業は、固定単価で売電可能なFIT制度からFIP制度へ移行しています。市場の変化を読み取りながら適切に運用するには、より中長期的な視点から収益性を考えていく必要があります。そこで最近注目されているのがアセットマネジメントです。
今回は、太陽光発電事業にとって欠かせないアセットマネジメントの特徴や活用方法、事例について詳しくご紹介します。メガソーラー事業を手がけている方や、メガソーラー事業を行っているもののFIP制度への移行で運用方法について悩んでいる方は、参考にしてみてください。
アセットマネジメントとは?
まずは、アセットマネジメントの意味や太陽光発電における役割について1つずつ確認していきましょう。
金融用語で資産管理業務の代行
アセットマネジメントは元々金融に関する専門用語で、個人向けの資産や公共資産の管理業務代行に関するサービスを指しています。
個人向けの資産とは、不動産や投資信託、株式といった金融資産のことです。金融業界におけるアセットマネジメントは、投資信託の運用と投資顧問の2種類に分かれています。
投資信託は、株式や債券などといった複数の資産を1つの商品にまとめて、投資家達の資金で運用します。一方、投資顧問は、投資の運用に関する助言、もしくは投資一任業務を行います。
太陽光発電の場合は収支管理など
太陽光発電業界におけるアセットマネジメントとは、中長期的に利益を伸ばす・確保していくために必要な管理業務を行うサービスのことです。
アセットマネジメント業務で依頼できることは、主に事務作業や収支の管理といった内容です。
項目 | 詳細 |
太陽光発電プロジェクトの運営 |
・会計業務(月次予算など) ・FIT制度への対応 ・キャッシュマネジメント(現金の収集や管理) ・予算と実際の支出と比較 ・経済産業省への対応など |
連絡対応など |
・投資家からの対応 ・売電収入の請求書発行 ・自治体や周辺住民への対応など |
このように、事務手続きや会計処理、問い合わせ対応といった設備管理以外の業務に長けているのが大きな特徴です。
太陽光発電の売電事業を自社で対応しようとすると、設備の管理だけでなく毎月の収支に関する会計処理から売電収入の確認、自治体や経済産業省への対応など、さまざまな手続きや対応に追われます。そのため、リソースに余裕のない企業は、アセットマネジメントサービスを活用するのがおすすめです。
アセットマネジメントとO&Mの違い
アセットマネジメントO&M(Operation & Maintenance)サービスでは、運用管理してもらえるサービスの範囲という点で大きく異なります。
簡単に表すと、「アセットマネジメント=事務や会計処理」、「O&M=設備の保守点検と運用」といった違いがあります。
アセットマネジメントの場合は、前段で紹介したように事務手続き・会計処理・問い合わせ対応といった点をサポートしてくれます。
一方でO&Mは、太陽光発電所の性能向上・維持させる上で重要な発電効率の改善案に関する提示をはじめ、出力抑制に対するスピーディな対応、遠隔監視装置による24時間チェックといったサポートを提供しています。また、定期的な点検業務や故障発生時の対応まで行ってもらえるので、設備の故障や事故リスク抑制という点でメリットの多いサービスといえます。
太陽光発電におけるアセットマネジメントの重要性
アセットマネジメントのサービス内容について把握した方の中には、自社で導入すべきサービスなのかわからないという方も多いかと思います。
そこでここからは、太陽光発電事業におけるアセットマネジメントの重要性についてわかりやすく紹介していきます。
中小規模の設備を長期的に一括管理することで放置などを避けられる
アセットマネジメント会社による太陽光発電設備の管理業務が広まれば、中小型の太陽光発電設備に関する放置問題を解決できる可能性もあります。
国内では2012年のFIT制度実施に伴い、多くの企業や個人がFIT型太陽光発電の導入を行いました。しかし、一部の企業や個人の中には、コストやその他の都合から太陽光発電所の管理運用を継続できず、そのまま放置してしまう方も出てしまっている状況です。
そこで、アセットマネジメントが全国に放置されている・放置される可能性の高い太陽光発電所を一括で管理できれば、運用の再開や収支の改善、O&Mへの依頼といったさまざまな対策を打ち出すことが可能になります。
FIP制度の創設により収益最大化の難易度が上がった
特にメガソーラーを所有している企業は、FIP制度の創設と移行によって運用ハードルが上がっています。アセットマネジメントによるサポートを受けることができれば、自社の負担を抑えながら効率よく売電収入を得られるかもしれません。
FIP制度は、2020年4月に導入された国の制度です。電力の買取価格は市場に連動しているため、電力需給に合わせて発電しなければ効率よく売電できません。そのためメガソーラーを所有している企業は、需要値の予測や発電量の計算、実績値の計測とインバランスコストの負担、収支の管理や事務手続きといったさまざまな業務に対応していく必要があります。
アセットマネジメントに依頼した場合は、FIP制度の移行手続きや毎月の会計処理、新しい規制の内容チェックと対策の内容確認など、設備の制御や運営以外の部分を代行してくれますし、複雑なFIP制度への対応に集中できます。
アセットマネジメントの事例
ここからは、アセットマネジメントサービスを提供しているサービス事例について紹介していきます。
株式会社スマートエナジー
再エネ関連の事業を展開している株式会社スマートエナジーは、再エネ特化型アセットマネジメントサービスを提供しています。
再エネ特化型アセットマネジメントサービスは、太陽光発電をはじめバイオマス発電や小水力発電などの開発運用から資産管理まで幅広く対応してもらえます。
具体的には、以下のサービスが提供されています。
項目 | 詳細 |
開発 |
・工事請負業務に関するサポート ・自治体や周辺住民への対応や助言 ・系統連系におけるサポートや助言 ・共同出資者の募集など |
運用 |
・太陽光発電のローンに関する申請書類作成や提出 ・事業計画書の作成 ・会計業務や財務処理の対応 ・O&M業者からの報告、報告書のチェック |
出口戦略 |
・出口戦略の策定 ・設備の処分へ向けた準備 ・設備の売却に関するサポート |
スマートエナジーの場合は、運用中の事務手続きや財務処理だけでなく、開発段階から資金面や外部対応までサポートしてくれるのが強みです。
また、これまで総額200億円以上のファンド組成を実施するなど、実績という点でも強みのあるサービスといえます。
オリックス・リニューアブル エナジー マネジメント合同会社
オリックス・リニューアブル エナジー マネジメント合同会社の場合は、太陽光発電所に関するアセットマネジメントからO&Mサービスまで一括対応しているのが特長です。
以下にアセットマネジメントに関するサービスを紹介します。
項目 | 詳細 |
アドバイザリー |
・アセットマネジメント契約やO&M契約の内容確認と契約手続き ・業務スコープの確認(対応業務の範囲確認) ・事業計画書の内容精査 |
在庫管理 | ・太陽光発電設備に必要な消耗品の管理 |
テクニカル | ・太陽光発電関連保証の契約に関する請求代行やサポート |
アセットマネジメントの他には、太陽光発電所の保安監督業務をはじめ、電気主任技術者の選任や除草作業、太陽光パネルの洗浄、ドローンなどによる異常の有無といった保守点検パックも提供されています。
メガソーラーの運用ではO&Mにも注目
メガソーラーの運用にアセットマネジメントが重要という点を把握したあとは、O&Mサービスについても確認しておきましょう。
冒頭で説明したようにアセットマネジメントは、あくまで設備の点検や修理といった点までサポートしていません。アセットマネジメントのみに注力してしまうと、設備の劣化や故障リスクの増加につながります。
発電量低下の際にすぐサポートしてくれる
O&Mサービスと契約すると、太陽光発電の発電量低下に関する対策やサポートを行ってもらえます。
太陽光発電設備は、経年劣化などによって性能が低下していきます。また、鳥のフンや砂、泥といった汚れが太陽光パネルに付着してしまうと、影を作り出してしまい発電量の低下につながります。
特にメガソーラーのような大規模太陽光発電所は、遠隔監視システムで発電量の低下を監視していても、どのパネルで異常が発生しているのか見つけるだけでも時間がかかってしまいます。
そこでO&M事業者と契約しておけば、突然の発電量低下でも駆けつけてくれますし、ドローンと赤外線カメラといったさまざまな機器で、原因を探ってもらえます。
定期的な保守点検で異常を早期発見
太陽光発電所はメンテナンスフリーではないため、使用し続けていると少しずつ劣化していきます。
O&M事業者は、定期的に太陽光パネルおよびモジュールの割れや汚れ、配線の焼け付きやちぎれ、接続部分のゆるみ、架台の状態などを定期的に点検してくれます。また、故障している部分や劣化のひどい部分があれば、新しい部材や部品と交換してもらえます。
災害発生時に復旧してもらえる
O&Mサービスは、平時だけでなく災害発生時にも対応してくれます。
日本は、地震や台風、豪雨に伴う土砂災害、津波、噴火といったさまざまな災害が発生しやすい環境です。メガソーラーは設置面積が広く、なおかつ山間部や平地など雨の影響を受けやすい場所に設置されているため、被害を受けやすい傾向といえます。
そこで復旧対応可能なO&M事業者と契約しておけば、災害による被害を受けた際に破損したパネルやパワーコンディショナなどの回収と廃棄、新しい設備の搬入と接続といった作業までサポートしてもらえます。
アセットマネジメントは特にメガソーラーで重要なサービス!
太陽光発電におけるアセットマネジメントは、収支や資産管理、FIT制度などの各種制度に関する手続き、経済産業省への対応、自治体や周辺住民への対応など、設備管理以外の部分でサポートしてくれるサービスを指しています。
特に管理業務の多いメガソーラーでは、アセットマネジメントによるサポートも欠かせません。しかし、予算の関係などからメガソーラーの運用を継続すべきか、悩んでいる方も多いかと思います。
メガソーラーの維持管理コストで悩んでいる方やメガソーラーの管理方法について悩んでいる方は、今回の記事を参考にしながら売却についても検討してみてはいかがでしょうか。
とくとくファームでは、稼働済み中古メガソーラーの売買仲介サービスにも対応しています。中古メガソーラーは、多くの企業にとって需要のある設備ですが、売却先の選定や交渉などの手間などといった負担もかかります。
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