出力50kW未満の産業用太陽光発電を稼働させている方や検討している方の中には、10年後の運用方式について悩んでいる方もいるのではないでしょうか。2020年度以降からFIT制度は、出力10kW以上50kW未満の買取方式について大きな変更が生じました。
そこで今回は、出力50kW未満の産業用太陽光発電は10年後自家消費へ切り替えるべきか、メリットや注意点について詳しくご紹介します。出力10kW以上50kW未満の産業用太陽光発電を検討している方などは、参考にしてみてください。
FIT制度の何が変更された?
出力10kW以上の産業用太陽光発電は、全量買取を選択できました。しかし、2020年の制度改正によって出力10kW以上50kW未満の産業用太陽光発電は、全量買取の対象外となります。
そのため、今後固定買取にさらなる規制が入る可能性があります。
これから産業用太陽光発電を始める方などは、FIT制度の変更点を把握しておくのが大切です。まずは、FIT制度の変更点を1つずつ確認していきます。
出力10kW以上50kW未満は原則余剰買取へ変更
出力10kW以上50kW未満の産業用太陽光発電は、全量買取から余剰買取へ変更されます。
2019年度までは、出力10kWの産業用太陽光発電を含め全量買取を選択できました。しかし、2020年度の制度改正によって出力10kW以上50kW未満の産業用太陽光発電を所有している方は、原則余剰買取にてFIT認定を受けます。
- 全量買取:発電した電気を全て売電可能
- 余剰買取:発電した電気を自家消費し、余った電気のみ売電可能
全量買取の方が、余剰買取よりも多くの売電収入を見込めます。出力10kW以上50kW未満の余剰買取は、売電収入を伸ばしたい方にとって大きなデメリットです。
しかし、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)方式で売電を行う場合は、出力10kW以上50kW未満でも全量買取を選択できます。ソーラーシェアリングとは、農地を一部転用した上で農地に太陽光発電設備を設置し、農業と発電を行う運用方式のことです。
低圧太陽光発電で全量買取を継続するには、農業を視野に入れる必要がありますが、今後FIT制度に変更があったら切り替えるのも手段としておすすめです。
固定買取価格の区分は変更されない
出力10kW以上50kW未満の産業用太陽光発電は、固定買取価格と固定買取期間について2019年度以前と変わりません。固定買取価格は、出力ごとに区分されています。たとえば、2021年度の固定買取価格は、以下の通りです。
- 出力10kW未満:19円/kWh
- 出力10k以上50kW未満:12円/kWh
- 出力50kW以上250kW未満:11円/kWh
- 出力250kW以上:入札制度によって決定
出力10kW未満の方が、高い固定買取価格で売電可能な状況です。出力10kW以上50kW未満の固定買取可能な期間は、出力50kW以上の設備と同じく20年間です。なお、出力10kW未満の太陽光発電は、固定買取期間10年間です。
どちらも余剰買取ですが、出力10kW未満より出力10kW以上50未満の方が多くの売電収入は見込めます。
出力50kW以上も規制が強化された
出力50kW以上の太陽光発電は、引き続き全量買取できます。しかし、規制強化されているため、初期費用がかさむ可能性もあります。具体的には、主に以下の要件が追加されました。
- 自家消費比率30%以上
- 自家消費に関する計画書の提出
- 自家消費可能な設備状況
つまり出力50kW以上の太陽光発電を所有している方は、災害時などに自家消費へ切り替えられるよう設備状況を整えなければいけません。さらに全量買取可能といっても発電量に対する売電量は、最大70%です。
出力50kW以上の太陽光発電を検討している場合は、自家消費に関する要件を確認しておくのも大切です。また、今後の制度変更などに備えて、常にFIT制度をチェックしてみると良いです。
FIT制度の改正による影響
FIT制度の改正による影響を知ることは、太陽光発電設置から10年後に自家消費へ切り替えるべきか考える上で重要なポイントです。ここからは、FIT制度改正による影響について確認していきます。
10kW以上50kW未満は収益減少につながる
出力10kW以上50kW未満の太陽光発電は、FIT制度改正の影響を大きく受けます。低圧の太陽光発電は、住宅の屋根もしくはカーポートなど、自宅の敷地内に設置可能な設備規模です。そのため、土地を別途取得することなく全量買取可能でしたし、収益を伸ばしやすい状況でした。
今後は余剰買取となるため、自宅の敷地で売電を行うと家電製品などの使用で自家消費してしまいます。また、別途土地を取得した場合は、土地取得費用分を含め売電収入でカバーできるか不透明です。
一部自家消費の状態となる
出力50kW以上の太陽光発電は、全量買取を選択可能なものの売電比率に制限をかけられています。前半でも触れた通り出力50kW以上の太陽光発電で全量買取を選択するには、自家消費比率30%を維持しておく必要があります。
- 発電量の70%まで売電可能
- 発電量の最低30%は自家消費可能な状態(事実上売電不可)
つまり、発電した電気を自由に売電可能というルールですが、一方で自家消費分を常に用意しておかなければいけません。また、自家消費比率などの要件を満たしていない場合は、FIT認定が取り消されます。
高圧の産業用太陽光発電を検討している方は、自家消費の比率を考慮しながら収支のシミュレーション、初期費用回収期間の計算を行っておくのも大切です。
今後さらに規制が厳しくなる可能性にも注意
政府では、太陽光発電を含む再生可能エネルギー事業の自立へ向けた制度改正、規制の強化などを準備、実行しています。
今後も太陽光発電の固定買取に関しては、規制強化される可能性があるため、制度変更があったら、切り替えるのも手段としておすすめです。
また、太陽光発電投資を検討している個人や法人は、自家消費を含めた運用を視野に入れるのがおすすめです。また、売電収入を重視している時は、中古太陽光発電所の購入を検討した方がいい場合もあります。
中古太陽光発電所の中には、2012年や2013年など高い固定買取価格でFIT認定を受けた設備も残されており、売電収入を伸ばせるカテゴリです。
なお、弊社サービスとくとくファームでは、常時多数の中古太陽光発電物件を掲載しています。また、会員向けに非公開の物件情報をお伝えしております。
10年後に太陽光発電を自家消費へ切り替えるメリットはある?
出力10kW以上の産業用太陽光発電設置から10年後に自家消費へ切り替えるメリットは、状況に応じて変わります。たとえば、設置から10年程度で初期費用の大部分を回収している場合は、自家消費へ切り替えても電気代削減分や本業の収入などで、残りの返済を進めることが可能です。
他にもFIT制度は、今後さらに規制強化されたり廃止されたりといった可能性も想定できます。このような事態に備えるという意味では、設置から10年程度で自家消費へ切り替えるメリットもあります。
ただし、安易に10年後に自家消費へ切り替えるとローンの負担をカバーできず、設備撤去もしくは売却を検討しなければいけない場合も考えられます。自家消費のメリットは、初期費用回収の状況や出力、その他要素から判断する必要があります。
産業用太陽光発電を自家消費へ切り替えるメリット
ここからは、産業用太陽光発電を自家消費へ切り替えるメリットについて紹介します。
電気代を削減することが可能
産業用太陽光発電で自家消費した場合は、電気代削減効果を期待できます。また、電気代の削減により発生した余剰資金を貯蓄や別の投資へ活用できるのが、自家消費メリットの1つです。
自家消費とは、発電した電気を自宅や自社のオフィス、工場などで消費する運用方法のことです。自家消費は電力会社から電気を購入せずに済むため、毎月の電気代を削減できますし、高圧電力契約のピークカットも実現できます。
高圧電力契約の基本料金は、最大デマンド値の高い(電力量の高い)月を基準に算出されます。また、毎月の電力量は、30分ごとの平均消費電力量を集計および確定される仕組みです。自家消費型太陽光発電の導入は、最大デマンド値の抑制および基本料金の削減につながります。
このように売電から自家消費への切り替えは、個人、法人どちらにとってもメリットのある運用方式です。今後FIT制度に変更があった場合には、切り替えるのもおすすめですが、初期費用を回収してからにした方が良いでしょう。
今後のFIT制度変更の影響を受けずに済む
自家消費型太陽光発電への切り替えは、FIT制度の影響を受けずに済むといったメリットも含まれています。
FIT制度は、全量買取の対象区分変更や固定買取価格下落、FIT認定の要件追加など、度々制度改正されてます。また、売電の規制強化、固定買取価格下落など、太陽光発電の売電収入を軸に考えている方にとっては、デメリットの多い改正内容です。
一方、産業用太陽光発電を自家消費型へ切り替えた場合は、上記のような規制強化や固定買取価格下落といった影響を受けずに稼働できます。
非常用電源に使いやすい
自家消費型太陽光発電は、災害時に非常用電源として活用することも可能です。
日本は、地震や台風、噴火などさまざまな災害リスクの生じている環境なので、停電を想定した災害対策を行う必要があります。
また、事業者の場合は、早期復旧および必要最低限の事業活動再開を目指すために、非常用電源設備を確保するのも重要です。
自家消費型太陽光発電は、照明や各部屋のコンセントへ電力供給できます。たとえば、停電によるエレベーターの停止やデータ消去を防いだり、生産活動を継続したりすることが可能です。
災害対策を考える上で太陽光発電は、役立つ設備の1つです。
産業用太陽光発電の自家消費を検討しない場合
設置から10年後に自家消費へ切り替えるメリットの少ない場合は、別の出口戦略を考える必要があります。
最後に自家消費以外の出口戦略について確認していきます。
太陽光発電の売却
自家消費しない場合は、設置から10年後もしくは初期費用回収後に売却を検討してみるのもおすすめです。
太陽光発電の売却時には、売却益を得られます。売却額は、設備規模や設備状況、需要によって変わりますが、数100万円から数1,000万円まで見込めます。
弊社とくとくファームの掲載物件には、以下のような売却価格で売り出し中の物件もあります。
- 出力118.8kW:売却額2,295,256円(税込)
- 出力550kW:売却額148,500,000円(税込)
低圧物件でも数100万円の売却益を見込めるため、再投資や別の投資、貯蓄などさまざま活用方法を検討することが可能です。
とくとくファームでは、忙しい方にも利用しやすい30秒査定や税務処理を含めたサービスなど、売主の負担を最小限にしながら売却できるようサポートいたします。まずは、1度お問い合わせください。
太陽光発電の撤去と土地貸し
設備撤去後の土地貸しは、太陽光発電に関する投資を継続したい場合などにメリットのある運用方法です。
太陽光発電の土地貸しは、土地を太陽光発電関連会社や個人へ貸し出して、賃料を得られます。土地貸しによる賃料は、太陽光発電の発電量に応じて算出されます。なお、太陽光発電設備の設置費用や維持管理費用は負担しません。
太陽光発電投資を検討している方は、2021年時点で存在しますし、発電効率の高い土地を探している方も存在しています。
不動産投資に関心を持っている太陽光発電投資家は、太陽光発電の土地貸しを含めた土地活用を検討してみてはいかがでしょうか。
太陽光発電は10年後に自家消費へ切り替えるメリットもあるが注意も必要
産業用太陽光発電の設置から10年後に自家消費する場合は、状況に応じてメリットを得られます。自家消費は、FIT制度や固定買取価格下落の影響を受けずに済みますし、買電量の削減および電気代の負担を抑えられます。
ただし、産業用太陽光発電は20年間固定買取可能なので、FIT制度の適用終了後や初期費用回収後に自家消費した方がいい場合もあります。
自家消費型太陽光発電への切り替えを考えている事業者やFIT制度改正によって自家消費へ関心を持っている方は、今回の記事を参考に太陽光発電の出口戦略を検討してみてはいかがでしょうか。
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