太陽光発電事業を5年、10年と継続していると、パワコン(パワーコンディショナ)も経年劣化していき、交換時期を迎えます。しかし問題なく使用できている状態であれば、少し劣化していても使い続けてしまう方も多いのではないでしょうか?パワコンの交換を先延ばしにしていると、さまざまなリスクにつながります。
そこで今回は、パワコンの交換時期や費用の目安、交換の流れについて詳しくご紹介します。パワコンの交換を先延ばしにしていて気になっている方や交換時期などについてよくわからない方などは、参考にしてみてください。
パワコンについておさらい
パワーコンディショナ(パワコン)は、太陽光パネルで発電された直流電力を交流電力へ変換するインバータおよび制御装置を指します。
太陽光パネルから発電された直流電力は、そのままでは照明設備や生産設備、オフィスのコンセントなどの機器や設備に供給および自家消費できません。ほかにも売電を行なうためには、交流電力への変換が必要です。
そのため、直流・交流変換を行なわなくてはなりません。
また上記のような変換機能だけでなく、事故防止や発電量の最大化といった役割を持っているのが、パワーコンディショナの特徴です。
太陽光パネルは、電圧と電流がある組み合わせの時だけ発電する仕組みです。しかし、発電に必要な日光は時間・天候などによって状況が変わります。そこでパワーコンディショナのMPPTという機能が、発電量を最大化できるポイントを探してくれます。
ほかにも、パワーコンディショナに搭載されている系統連系保護機能は、停電などによるトラブル発生時に電力系統と太陽光発電を切り離し、発電した電気を送電しないよう保護してくれる役目をしています。(系統連系:売電のために送配電網と太陽光発電を接続する仕組み)
このようにパワーコンディショナは、太陽光発電システムの事故防止、発電および発電効率アップという点で欠かせないシステムです。
一般的にパワコンの寿命は10~15年程度
パワコンの交換時期は、一般的に10~15年程度とされています。
しかし使用方法や設置環境によっては、10年未満で故障してしまう場合があります。
太陽光パネルの耐用年数は一般的に17年なので、パワコンの方がより短いスパンで劣化していきます。そのためパワコンの管理を行なう際は、この年数を考慮して保守点検や交換を検討することが大切です。特に寿命と言われている10年前後には、O&M業者へ保守点検を依頼しましょう。
パワコンの交換費用はいくら?
パワコンは太陽光パネルより劣化しやすい機器なので、設置から早い段階で修理もしくは交換しなければいけません。
またパワコンの交換工事には費用がかかるため、あらかじめ交換費用や経費に関して確認しておきましょう。
それでは、パワコンの交換費用についてわかりやすく解説します。
1台あたり40万円程度
メーカーや施工業者によって異なるものの、パワコン1台あたりの交換工事費用は30~40万円程度が目安です。交換工事の費用内訳については、パワコンの本体価格と工事の2種類に分けられています。
また、経済産業省の「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」によると、住宅用太陽光発電のパワコン交換費用は、1台につき29.2 万円程度です。
なおパワコンに関する保証制度の中には、保証期間内の交換費用を無償にしてもらえるサービスもあります。費用負担を少しでも抑えたい時は、なるべく保証期間内に新品のパワコンと交換しておきましょう。
またパワコンを交換せずに使用できる状態であれば、専門業者へ修理を依頼してみるのもいいでしょう。修理の場合は5~10万円程度の費用で済むため、費用負担を抑えられます。
施工業者を比較する際は、本体価格に加えて交換工事の見積もり内容を1つずつ確認しておくのが重要です。また見積もり内容を比較する際は、費用項目などを丁寧に作成しているか、ユーザーにわかりやすく説明してくれるかもチェックしましょう。
交換後のパワコンは減価償却可能
交換後のパワコンは、機械装置として減価償却することが可能です。
減価償却とは、耐用年数に合わせて毎年費用の一部を計上できる制度のことです。
新品のパワコンと交換した場合は、交換費用を17年に分けて少しずつ経費として計上できます。交換工事費用を節税に活用できるのは、大きなメリットと言えます。
なお、交換および廃棄したパワコンの減価償却が完了していない場合は、固定資産除却損として残りの費用(残価)を損失計上できます。
パワコンの交換メリット
ここからは、パワコンの交換メリットについて1つずつ確認していきましょう。
古いパワコンより変換効率が高くなる
パワコンは、経年劣化によって電力の変換効率や出力が低下してしまいます。すると、売電収入の減少や自家消費率の低下などにつながります。
太陽光発電事業において出力低下は、収益の低下を招く大きな問題です。
そこで、パワコンを交換すれば、高い変換効率で電力を出力することが可能になります。
パワコンは太陽光パネルと同様に収益を支える柱なので、経年劣化による出力低下といったトラブルが起きる前に交換し、電力損失を可能な限り抑えるようにしましょう。
メーカー保証の期間をリセットしてもらえる
新しいパワコンと交換した場合は、メーカー保証の保証期間がリセットされます。故障やその他の不具合発生時の補償を受けられる期間を元に戻せるのは、メリットのひとつと言えます。
パワコンをはじめとした太陽光発電システムを対象としたメーカー保証には、10年や15年といった期間が定められています。保証期間が終了した場合は修理交換費用などを負担しなければいけないため、維持管理費用の一時的な増加につながります。
また、保証期間の過ぎた古いパワコンは劣化していることが考えられるため、より点検修理費用がかかる傾向にあります。
そこで、故障する前に新品のパワコンへ交換すれば、突発的なトラブル発生時にも無償で点検・修理してもらえるだけでなく、その他の保証サービスも受けられます。
経年劣化による故障リスクを抑えられる
パワコンの定期的な交換は、故障および事故リスクの軽減という点でもメリットのある対策です。
パワコンが経年劣化していくと、変換効率の低下だけでなく冷却ファンの故障、誤作動といったさまざまな不具合を起こしてしまう可能性があります。また故障の内容によっては、発火および火災事故に発展するリスクもあり、注意の必要なポイントです。
太陽光発電で事故が発生してしまうと、パワコンの交換だけでなく全ての機器を交換しなければいけない場合もあり、余計な費用負担につながります。
そのため、パワコンは定期的に点検してもらい、状況に応じて修理交換するのが大切です。
パワコンを交換しないとどうなってしまうのか
パワコンの交換メリットを確認しても、なるべく既存のパワコンを使い続けたいと考える方も多いかと思います。
しかし、パワコン(パワーコンディショナ)を交換・点検をせずに使い続けると、さまざまな不具合やトラブルにつながるおそれがあります。
続いては、パワコンを交換せずに使い続けた場合、どのようなトラブルやリスクが生じるのか確認していきましょう。
故障リスクが上がる
パワコンを長期間使用し続けると経年劣化が進み、故障リスクも上昇してしまいます。パワコンの耐用年数は、一般的に10~15年です。保守点検や交換をせずに10年、15年と使い続けていると少しずつ劣化していくため、内部の回路や半導体、配線が故障してしまう可能性も出てきます。
また、パワコンのフィルターを掃除しないと目詰まりの原因になり、内部の冷却を行なえずに耐久性の低下および故障につながります。
電力の損失による収益減少
前段でも触れたように、パワコンの長期稼働は変換効率の低下を招きます。
新品のパワコンは、一般的に96~98%程度の変換効率を保っています。しかし、経年劣化やその他の要因から変換効率が数パーセントずつ低下していき、出力も減少します。すると、太陽光発電事業の減収にも関係することになります。
一般に、パワコンの交換費用よりも収益減少による損失の方が大きいので、耐用年数や設備状態を見ながら交換を検討するようにしましょう。
突然エラーコードが表示される可能性
パワコンの交換をせずに使用していると、ある日突然エラーコードが表示される可能性もあります。
パワコンの経年劣化や保守点検不足などで故障した場合、パワコンのモニタにエラーコードが表示されます。エラーコードの番号や文字列はメーカーによって異なりますが、取扱説明書でエラーの内容を把握できます。
万が一エラーコードが表示された場合は、パワコンの説明書を確認し、何が起きているのか迅速に確認しましょう。
パワコンをDIYで修理交換してはいけない理由
有資格者を持っていない自社の社員にパワコンの交換工事を任せた場合、法律違反により罰則・罰金を受けることになります。
また、無資格かつ専門技術のない状態で交換工事を行なってしまうと、メーカー保証の対象外としてみなされます。そのため万が一故障や不具合が発生しても、無償修理・交換といったサービスを受けられなくなります。
さらに、誤った作業で事故・被害を出してしまうおそれもあり、大きな問題につながりかねません。
パワコンの交換費用は上記のようなリスクを避ける上で必要なコストと考え、専門の施工販売業者へ依頼しましょう。
パワコン交換工事の流れ
ここからは、パワコンの交換手順について紹介していきます。
太陽光発電の施工・点検業者へ問い合わせ
パワコンの調子が悪い、故障している時は、太陽光発電のO&M業者や施工販売業者へ相談し、現時点の状況について確認してもらいましょう。
O&M業者(Operation&Maintenance)とは、太陽光発電の定期点検や保守運用といったサービスを請け負っている業者のことです。
現時点の設備状況について把握しなければ、本当にパワコンの交換が必要なのかわからず、ほかに不具合がないかも確認できません。そのため、O&M業者や施工販売業者とメンテナンスに関する契約を交わし、定期点検などのサービスを受けるのが大切です。
パワコン修理もしくは交換も請け負っている業者へ交換相談
専門業者による点検の結果、パワコンの交換が必要と判断されたら、パワコンの修理交換を専門とする業者へ相談しましょう。
パワコンを含む太陽光発電設備の設置交換工事には、電気工事士や施工管理士、施行IDといった資格が必要です。そのため交換工事を依頼する際は、取得済みの資格などを確認したり、パワコンの施行実績について調べたりしておくのも大切です。
担当者による現地調査を実施
パワコンの交換業者は、依頼者からヒアリングを行なった上で現地調査を実施します。
修理交換業者の担当者は、太陽光発電所へ赴きパワコンの状態や破損状況、修理で対処できるのか、それとも交換しなければ設備を維持できないのかなど、細かい部分を確認します。
そこで交換の必要な状況と判断された場合は、交換工事に関する見積もりを作成してもらい、契約手続きを進めるか検討していく流れです。
契約前に各種手続きの確認
パワコンの交換工事先を決めたら、運転費用報告と変更認定申請に関する手続きの流れや進め方を確認しておく必要があります。
パワコンを交換する場合は、経済産業省向けに変更認定申請、電力会社へ向けてパワコンの仕様を報告します。
出力10kW以上の太陽光発電を運用している時は、パワコンの修理点検、交換費用の詳細について、再生可能エネルギー電子申請を使用して報告しなければいけません。また、再生可能エネルギー電子申請へのログインや手続きには、パスワードが必要です。そのため、原則専門業者へ手続きの代行を依頼することは難しいと言えます。
電力会社に報告が必要な内容は、交換後のパワコンに記載されている型番です。パワコンの型番に関しては、原則として交換業者側で確認および電力会社へ報告してもらえます。
パワコンの交換工事を実施
無事に契約手続きを交わした後は、パワコンの交換工事に関する日程を担当者と相談し、いつ交換してもらうか決めていきます。
施工日当日は、半日もしくは1日かけてパワコンの交換および配線などの接続作業を行なってもらいます。
なお、パワコンの本体の発注から手配までは通常2週間程度、長いと1ヵ月以上かかる場合もあります。交換工事を検討する際は、年末年始を避け、できるだけ余裕をもって依頼するようにしましょう。
パワコンを製造しているメーカー
パワコンを製造しているメーカーから、主な取扱製品を紹介します。
メーカー | パワコンに関する主な取扱製品 |
---|---|
パナソニック |
屋内屋外兼用マルチストリング型パワーコンディショナ、屋外用集中型パワーコンディショナ 変換効率:96.5% 出力:5.5kW 自立運転出力:1.5kVA |
シャープ |
JH-55NF3、JH-WD2111v
変換効率:97.0%、96.5% 出力:5.5kW 自立運転出力:5.5kVA、4.0kVA |
オムロン |
KPW-A48-J4、KPW-A55-J4、KPW-A55-SJ4 変換効率:96.0% 出力:KPW-A48-J4のみ4.8kW、5.5kW 自立運転出力:1.5kVA |
パワコンを比較検討する時は、設置可能な場所や変換効率、塩害に対する耐久性などを細かく確認しておくことが大切です。
ほかには、太陽光パネルの容量に合ったパワコンを選択するようにしましょう。
太陽光パネルの容量に対して出力の小さいパワコンを選んでしまうと、発電した電気を全て交流変換できません。反対に出力の大きすぎるパワコンは、太陽光パネルで発電した電気を全て変換できるものの機能を持て余し、費用負担が大きくなってしまいます。
パワコンの交換を検討する際に押さえておくべきポイント
最後は、パワコンの交換を検討する際に押さえておくべきポイントを紹介します。
可能であればリパワリングを目指す
パワコンの交換を検討する時は、リパワリングを目指してみるのがおすすめです。リパワリングとは、新型モデルの設備へ交換していく計画や動きのことです。太陽光パネルやパワコンの技術開発は日々進んでいて、2024年時点でも新型のパワコンが発売されています。
そこで新型モデルのパワコンへ交換すれば、変換効率や発電効率を向上させることができ、20%以上の改善につながる場合もあります。
パワコンの故障前にリプレイスすることで発電損失を抑えられる
リプレイスとは、故障によって稼働停止する前にパワコンなどの各種機器、もしくは太陽光発電システム全体を新品の設備へ交換する作業のことです。
パワコンが故障する前にリプレイスしておけば、長期的な発電損失リスクを抑えられます。
2012年7月~2014年9月までに販売されたパワコンは、累計で15万台を超えています。一方、メーカー側のパワコン生産・供給量は、年間1万2,000台程度で推移しています。
つまり、2012~2014年までに設置されたパワコンは2024年時点で寿命を迎えているものの、供給量が追い付いていない状況です。
経年劣化などで故障するまでパワコンを稼働させていると、いざメーカーから取り寄せようとしても品切れですぐに交換できない可能性が出てきます。また在庫のあるメーカーへ変更する場合、契約変更などの手続きや確認などで導入までに2~3ヵ月かかることも考えられます。
このような状況は数ヵ月単位の発電停止を招いてしまい、大きな損失が発生します。
特に設置から10年前後経過している場合は、リプレイスを検討することをおすすめします。
メンテナンス実績の豊富な業者と契約する
メンテナンス実績の豊富な業者へ相談し、パワコンの故障前に交換や修理の検討を行なえるよう、維持管理に関する環境を整えておくのも重要なポイントです。
O&M業者や施工販売業者は太陽光発電オーナー向けに定期メンテナンスパックを提供しているので、1度契約しておけば、定期的にパワコンを含む各機器の点検、清掃を行なってもらえます。
そのため、メンテナンス実績の豊富な業者と契約し、早めに破損や異常を見つけて対処できるようにしておくのが、大きなトラブルを防いだり、パワコンの交換時期を延ばしたりする上で大切です。
ハイブリッド型蓄電池がなければ導入を検討してみる
現時点で蓄電池を設置していない場合は、パワコンの交換と同時にハイブリッド型蓄電池の導入を検討してみるのもおすすめです。
ハイブリッド型蓄電池とは、1台のパワーコンディショナで太陽光発電と蓄電池の制御および直流・交流変換などに対応できるシステムのことです。
単機能型蓄電池(蓄電池のみ制御可能なパワーコンディショナ)よりも電力の損失率が低いため、発電した電気を余すことなく活用できます。またパワコンの交換時期にハイブリッド型蓄電池を導入すれば、1台分のパワコン購入費用で太陽光発電・蓄電池の運用を進めることが可能になります。
パワコンの交換時期を見極めるのが太陽光発電事業で大切!
パワコンの交換をせずに長年使用し続けていると、経年劣化が進むだけでなく故障や事故につながるおそれがあります。太陽光発電事業を行なう際は、パワコンを含む各種機器の点検だけでなく、設備の修理交換について専門業者へ相談・依頼することが大切です。
パワコンの導入から10年前後経過している方や太陽光発電の経年劣化が気になっている方などは、今回の記事を参考にしながら太陽光発電のリパワリングやリプレイスを検討してみてはいかがでしょうか。
弊社和上ホールディングスは、全量自家消費型太陽光発電に関するプランのご提案から機器や部材調達、設計施工、アフターフォローまで一括サポートしています。パワコンの交換だけでなく設備全体の改修や売電型の運用方法に悩んでいる場合は、全量自家消費型太陽光発電を検討してみることをおすすめします。
パワコンについて詳しくお知りになりたい方は、メールやお電話からお気軽にご相談ください。