太陽光発電で売電を行う際は、出力抑制のルールを把握した上で対策を施したり収支の見通しを立てたりするのが大切です。しかし太陽光発電を初めて導入した方の中には、出力抑制についてよくわからず悩んでいる方も多いかと思います。
そこで今回は、出力抑制の仕組みや2023年時点のルール、電力会社ごとの対応や注意点について詳しくご紹介します。出力抑制についてよくわからない方や、太陽光発電の売電収入と支出のバランスについて考えている方などは、参考にしてみてください。
出力抑制とは何?
まずは出力抑制の仕組みや特徴、対象の設備について確認していきましょう。
電力買取量の制限
出力抑制は、電力の買取量に関する制御のことです。
電力会社では、電力の需要と供給を一致させながら常に制御管理しています。そこで電力の供給量が急激に増えないよう、電力買取量の一時的な制限をかける場合があります。これを出力抑制と呼びます。
出力抑制を行えるのは、一般送配電事業者でもある大手電力会社10社です。対象の設備と出力抑制の要請に関する順番は、次の項目で紹介します。
出力抑制の要請には順番がある
電力会社では、出力抑制のルールに沿って要請を行っています。優先給電ルールでは、どの発電所から順番に抑制していくか決められています。
以下に優先給電ルールを紹介します。
- 一般送配電事業者が確保、もしくはオンラインで調整可能な発電機の出力抑制と、揚水式発電の稼働による需要創出(くみ上げ運転)
- 一般送配電事業者がオンラインで調整できない火力発電の出力抑制と、揚水式発電機の稼働による需要創出(くみ上げ運転)
- 長周期広域周波数調整(他社の管轄エリアへ送電し、電力の周波数を調整する作業:電力の需要を調整)
- バイオマス発電(バイオマス燃料をのみを使用した設備のみを対象)の出力抑制
- 地域資源バイオマス発電(家庭ごみやおがくずなど)の出力抑制
- 太陽光発電、風力発電の出力抑制
- 電力広域的運営推進機関による広範囲の電力調整
- 原子力発電、水力発電、地熱発電の出力抑制
太陽光発電は、出力抑制の順番に関するルールで6番目に該当しています。旧ルールでは、出力10kW未満の太陽光発電に関しては、出力抑制の対象外としてみなされていました。しかし2023年時点においては、出力10kW未満の太陽光発電を含めて出力抑制の対象に含まれています。
出力抑制が必要とされている理由
出力抑制によって何が起こるのか把握したあとは、なぜ電力買取の制限を行わなければいけないのかという点について1つずつ確認していきましょう。
電力の安定供給にかかわるため
出力抑制は、電力の安定供給にかかわる極めて重要な判断です。私たちが使用している電気の安定性は、送配電事業者(大手電力会社)などによる制御管理のおかげで保たれています。
安定した電気を維持するには、24時間365日、電力の需要量と供給量を一致させなければいけません。万が一この需給バランスが崩れてしまうと、長期停電や瞬停(瞬間的な停電)といった大規模なトラブルに発展するおそれがあります。
電力の需要は、時間帯や季節によって変わるため、供給量に合わせて瞬時に需要量を増減させるのは容易ではありません。
そこで電力会社各社は、電力の安定供給を維持するために、必要に応じた出力抑制を実施しているのです。
再エネ電源が増えたことで不安定な電力供給につながる可能性
出力抑制が必要とされている背景には、電力供給量に大きな変化が生じていることも挙げられます。
近年、電力供給量は、再生可能エネルギーの普及によって急激に増加・減少しています。なぜなら、再生可能エネルギーは火力発電や原子力発電と異なり、時間帯や天候によって大きく変動してしまうからです。
さらにFIT制度やFIP制度、アグリゲータービジネスによる再エネの売電事業が活発化しており、これも電力買取量の急激な増加につながっています。
電力供給量が急に増えてしまうと、変電設備の故障、発電機の自動停止といったトラブルに発展します。そこでこれらを防ぐため、火力発電所だけでなく再生可能エネルギーも出力抑制の対象設備としてみなされるようになりました。
出力抑制と出力制御の違い
出力抑制と出力制御に違いはありません。資源エネルギー庁のHPでは、出力制御という用語も用いられています。太陽光発電や電力関係のHPは、出力抑制もしくは出力制御いずれか一方の用語で統一されています。
出力抑制や出力制御といった用語を見かけた場合は、電力買取量の制限に関する措置として認識しておきましょう。
太陽光発電の出力抑制に関するルール
従来、太陽光発電の出力抑制に関するルールは、電力会社ごとに異なる内容でした。しかし2021年4月1日以降は、出力10kW未満の太陽光発電を含め、すべての太陽光発電が出力抑制の対象設備としてみなされています。
出力抑制の指定ルールは、30日以上無償で出力抑制に対応し、なおかつ出力抑制の期間について上限がありません。
つまり、2023年時点で出力抑制が要請された場合、無期限・無補償で電力の買取制限に対応しなければいけないということです。
太陽光発電運用時に想定される出力抑制のリスク
太陽光発電を所有している場合は、設置場所に関わらず出力抑制のリスクが発生します。過去に出力抑制を実施したのは、北海道電力と東北電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の6社です。
最近では、2023年に沖縄電力が出力制御を実施しました。実施日は元旦で、沖縄本島にある再生可能エネルギーが対象でした。元旦で電力需要が下がっているものの、快晴ということもあって太陽光発電の発電量が増加したためです。
出力抑制が実施されると、最短でも数時間、長いと1日以上太陽光発電を稼働できなくなります。
出力抑制の対応策
出力抑制が要請された場合は、太陽光発電の電力を買い取ってもらえません。また系統接続(売電するための接続)している場合は、発電量も制限しなければいけません。
最後は、太陽光発電運用時に押さえておくべき出力抑制の対策について確認していきましょう。
保険へ加入して補償してもらう
FIT制度の認定を受けている場合は、出力抑制保険に加入することで損失をカバーできる可能性があります。出力抑制保険とは、出力抑制の要請によって本来得られるはずだった売電収入の損失分を補償してもらえる保険のことです。
ただし、保険会社によっては出力抑制保険の新規受付を停止しているため、補償を受けにくい状況かもしれません。
全量自家消費へ切り替えて売電のリスクから離れる
売電収入で収支のバランスを維持することが難しい時や売電重視でない時は、全量自家消費型太陽光発電へ切り替えてみてはいかがでしょうか。
出力抑制の対象は、系統接続されている発電設備です。電力会社へ売電可能な設備状況なら、出力抑制のリスクが発生してしまいます。
一方、全量自家消費型太陽光発電は系統接続されていないので、発電した電気を売電せずに済みます。また出力抑制による影響を受けないため、抑制中でも発電を継続することが可能です。
さらにFIT制度の固定買取価格は年々下落しており、自家消費の方が電気料金削減効果を伸ばせるでしょう。
太陽光発電所を売却する
出力抑制のリスクだけでなく、太陽光発電所の維持管理費用も含めた負担を抑えたい時は、売却を検討してみるのがオススメです。
太陽光発電のセカンダリー市場(中古太陽光発電の売買市場)では、小規模な野立て太陽光発電をはじめ、中規模~メガソーラークラスまで日々取引されています。
さらに中古太陽光発電所は、売電収入や収支の見通しという点でメリットの多い設備です。
- 過去の稼働実績から年間の発電量を計算できる
- 過去の稼働実績から売電収入を計算できる
- 新規FIT認定と比較して高い固定買取価格で売電できる
中古太陽光発電の購入者は、過去の発電・売電・維持管理コストに関する実績から年間の収支を正確に計算できます。また売電単価は、過去にFIT認定を受けた年の単価を適用してもらえます。FIT制度の固定買取価格は年々下落しているので、過去の単価の方が高い売電収入を見込めます。
このような理由から中古太陽光発電は、需要のある再生可能エネルギー設備なのです。
出力抑制は太陽光発電の売電収入低下につながる!
出力抑制は、電力会社の電力買取を一時的に制限させる措置のことです。また、太陽光発電は出力抑制の対象設備なので、要請を受けたら数時間もしくは数日程度売電および発電を止めなければいけません。
出力抑制を含むリスクに対応しきれない方や太陽光発電のコストやリスクに悩んでいる方は、今回の記事を参考にしながら太陽光発電所の売却を検討してみてはいかがでしょうか。
弊社とくとくファームでは、中古太陽光発電所の売買仲介に関するサポートを行っています。ご相談を受けた担当者が、太陽光発電所の設備状況から見積もりを作成いたします。また、ご契約後は各種資料の作成や査定額アップに向けたメンテナンス、物件情報の掲載と管理、買い手との交渉と売買契約手続きまでサポート。
さらに売却後の税務処理にも無料対応しているので、売却前後の手間をかけずに手続きを進められます。
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