ライフサイクルアセスメントとは?どこよりも簡単に解説!

ライフサイクルアセスメントとは?どこよりも簡単に解説!

自社の脱炭素経営やサプライチェーンについて検討する際は、ライフサイクルアセスメントを取り入れるのも大切です。ライフサイクルアセスメントは評価手法の1つで、サービスや製品の環境への影響を分析できます。

そこで今回は、ライフサイクルアセスメントの意味や特徴、導入メリットやデメリット、事例について詳しくご紹介します。脱炭素経営とライフサイクルアセスメントの関係を知りたい方や、ライフサイクルアセスメントのメリットを把握した上で取り入れるか判断したい方などは、参考にしてみてください。

ライフサイクルアセスメントとは何?

ライフサイクルアセスメント(LCA、Life Cycle Assessment)とは、自社商品やサービスの原材料調達から材料加工、生産工程、品質管理、流通、販売後の廃棄やリサイクルまでに発生する環境負荷を定量的に算出する方法のことです。(定量的:数値で示す)

環境負荷とは、人間の活動によって排出された二酸化炭素や窒素酸化物などが原因で、気候変動や環境汚染といった影響をおよぼしている状況を指します。

ライフサイクルアセスメントをより簡単に説明すると、自社商品・サービスが環境へどの程度影響を与えているのか、数値などで見える化させたものです。

自社に導入すれば、環境に悪い影響がある工程を把握できますし、環境経営を推進していく上で役立ちます。

ライフサイクルアセスメントの経緯

ライフサイクルアセスメントの発祥は、1969年にまでさかのぼります。

アメリカのコカ・コーラ社が、「飲料容器に関する環境影響評価に関する研究」という製品のライフサイクルについて研究・評価し、世界初のライフサイクルアセスメントを提唱しました。

当初のライフサイクルアセスメントは、主に製品とエネルギー消費・効率を中心とした評価でした。そして第一次オイルショックが発生した際、効率的なエネルギー利用で製品を生産するために、他の企業もライフサイクルアセスメントを導入しました。

その後、ライフサイクルアセスメントの目的は、エネルギーの分析評価から少しずつ変化していき、環境負荷の評価へ変わりました。さらに環境負荷への注目からライフサイクルアセスメントの需要が高まり、ISO規格も定められています。

サプライチェーン排出量との違い

ライフサイクルアセスメントとサプライチェーン排出量には、大きな違いがいくつかあります。

ライフサイクルアセスメントは、環境負荷測定に関する概念でもあります。そのため、サプライチェーン排出量は、ライフサイクルアセスメントの1つとして区分されます。

サプライチェーン排出量は、自社だけでなく自社と取引している企業や子会社など、事業活動全体(製品の生産以外で発生した事象も含む)の二酸化炭素排出量に関する評価方法を指しています。

一方、ライフサイクルアセスメントは、自社製品やサービスの原材料調達から廃棄までに発生した二酸化炭素を含む、さまざまな環境負荷を総合的に評価するための手法です。

そのため、ライフサイクルアセスメントの方が、二酸化炭素以外の物質や事象を評価しやすいといえます。また、評価対象が製品か事業活動かという点で大きく異なります。

他にも算定の対象年は、ライフサイクルアセスメントが製品使用年、サプライチェーン排出量は販売年度という違いもあります。

つまり、ライフサイクルアセスメントから習得した方が、サプライチェーン排出量など他の環境負荷に関する評価方法を理解しやすいといえます。

ライフサイクルアセスメントの手順

ここからは、ライフサイクルアセスメントの主な手順について1つずつ確認していきましょう。

ライフサイクルアセスメントの目的や分析の範囲を決める

ライフサイクルアセスメントを実施する際は、まず評価目的を明確にします。

どの分析・評価でも目的を設定しなければ、どのような方法で何を調べていくべきか決められません。そのため、最初は評価対象の自社製品やサービス、どのような環境問題を評価していくのか、評価結果を何に使用するのか定めましょう。

環境問題は、気候変動だけでなく大気汚染や水質汚染、資源の枯渇、森林伐採など1種類ではありません。自社製品・サービスと環境負荷を調べる際は、さまざまな点から確認する必要があります。

インベントリの分析作業

ライフサイクルアセスメントの目的や評価範囲を設定したら、自社製品の原材料や素材、生産、流通、部品、組み立て、製品の生産と流通、修理や解体、廃棄、リサイクルといった各工程の環境負荷を表にまとめていくことが大切です。

たとえば、製品の生産工程で排出された排水にどのような成分が含まれているのか、年間の排水量と海や川への影響などを数値で示します。また、製品の加工で原材料をどれくらい消費するのか、生産工程に必要な電力やガス、水などを数値で示すことで、製品1個あたりの環境負荷と種類を把握できます。

環境への影響を評価

分析作業が完了したあとは、各データを整理していき、定量的に評価していきましょう。

定量的に評価するには、以下のような流れで作業を進めていく必要があります。

  1. 環境に影響を与えている成分や事象を、どの環境や社会問題と関連しているか紐づける
  2. 自社で排出している環境汚染物質などが、各環境問題においてどの程度影響を与えているのか数値で示す
  3. 自社のデータを、国内の温室効果ガス排出量などの正規のデータと比較する
  4. 各カテゴリを評価していき、総合的な評価を下す

ライフサイクルアセスメントにおけるカテゴリは、温室効果ガスをはじめ、オゾン層、陸域や水域システムの富栄養化(プランクトンなど特定の生物が異常に増えた状態)、非生物的資源の多用などに分かれています。

総合的な評価を下したあとは、実績として公開したり、自社製品・サービスの環境負荷低減へ向けて改善を試みたりするなど、さまざまな場面で活用することが可能です。

ライフサイクルアセスメントの特徴

ライフサイクルアセスメントの主な流れを把握したあとは、特徴についても確認していきましょう。

原材料の調達から廃棄までの環境負荷を分析できる

一連の作業における環境負荷を分析できるのが、ライフサイクルアセスメントの大きな特徴です。

たとえば、二酸化炭素を排出しない製品で「二酸化炭素排出量がゼロ」と宣伝してしまうと、原材料の調達や輸送、素材加工や製品製造、流通時には二酸化炭素を排出していないの?という疑問を抱かせてしまいます。

また、各工程を個別に評価しようとすると時間がかかりますし、データを総合的に評価するための手間が増えてしまいます。

ライフサイクルアセスメントの手法を導入すれば、原材料調達から廃棄までの各工程における環境負荷を客観的に分析することが可能です。

定量的な評価なので比較が可能

ライフサイクルアセスメントは定量的な評価手法なので、他のデータと比較しながら分析したりアピールしたりできるのも主な特徴です。

たとえば、ある製品の二酸化炭素排出量を調べた場合、どの工程で最も排出量が多いかkgや割合で整理できます。また、製品使用時の二酸化炭素排出量が最も多いのであれば、省エネ性能を高めることで、環境負荷の低減を実現できます。

一方、資源の採掘で二酸化炭素排出や森林伐採などの影響を与えている時は、材料調達の方法を見直したり、少ない部品点数で製品を作る方法を研究したりする必要があります。

二酸化炭素排出量だけでなく生物多様性などさまざまな点を評価できる

ライフサイクルアセスメントでは、二酸化炭素や窒素酸化物といったガスだけでなく、水質汚染やオゾン層、資源、経済や社会など、さまざまな視点から環境に対する影響や改善点を評価することが可能です。

多種多様な視点から自社の環境経営に関する課題を把握できれば、改善に向けた計画を立てやすいといえます。また、SDGsやCSR活動にもつながる内容なので、環境経営に必要なデータを収集したい場合に役立ちます。

ライフサイクルアセスメントのメリット

ここからは、ライフサイクルアセスメントを導入することで得られるメリットをわかりやすく紹介していきます。

自社のサービスが環境に配慮されているか確認できる

ライフサイクルアセスメントを実施することで、自社のサービスや製品が環境に配慮しているのか、現状の環境負荷はどの程度なのかを正確に把握できます。また、客観的なデータを取得できるので、効率よく環境経営を進めることが可能です。

近年、日本でも環境負荷やカーボンニュートラルといった、環境に配慮した製品・サービスが注目されたり、積極的に利用されたりし始めています。

そのためどの企業も、環境への影響や測定などといった取り組みが求められている状況です。

ライフサイクルアセスメントを積極的に導入することで、原材料調達から素材加工、生産、輸送や販売、消費、廃棄やリサイクルといった、各工程における環境への影響を数値などのデータで評価できます。

評価内容を公開することで信頼性を高められる

ライフサイクルアセスメントで測定したデータや評価後の取り組みを公開することは、消費者や投資家、取引先からの信頼向上にもつながります。

投資家や消費者、企業は、人権や倫理、環境などに配慮・改善しているかどうか注目し始めています。そこで、製品やサービスの販売過程でどのような環境負荷があるのか、どのような対策を講じているのかといった情報をオープンにできれば、企業イメージや信頼性の向上へつなげることが可能です。

また、製品やサービスの環境性をアピールする際、定量的な情報を根拠にすることで、曖昧な宣伝や誇大広告などのリスクを避けられます。

ライフサイクルアセスメントのデメリット

続いては、ライフサイクルアセスメントのデメリットや注意点について1つずつ確認していきましょう。

専門的な知識や経験が必要

ライフサイクルアセスメントを導入するには、専門的な知識や経験が必要です。

ライフサイクルアセスメントの評価方法などは、国際規格のISOで明確に定められています。また評価基準については、ライフサイクルアセスメントの内容を把握し、かつ豊富な経験を持つ担当者を用意しなければいけません。

なぜなら、担当者の経験や知識によっては、評価結果が大きく異なってしまうからです。

自社で担当者の育成が難しい場合は、ライフサイクルアセスメント専門のコンサルタント会社を活用してみるのも大切です。コンサルタント会社は、調査から環境負荷の測定、評価まで一括で対応しています。

業界全体で取り組むことが大切

ライフサイクルアセスメントで環境問題を解決するには、業界全体で取り組まなければいけません。

たとえば、温室効果ガスの排出量は、1社だけでなく鉄鋼産業や自動車産業など、複数の業界で協力しなければ抑制できません。

また、ライフサイクルアセスメントを業界全体で取り組むことで、産業全体の中でどのように環境負荷をかけているのか、どのような環境問題を抱えているのか、より大きな課題を見つけることが可能になります。

これからライフサイクルアセスメントへ取り組む企業は、関連企業や取引先と協力しながら、環境負荷の計測や評価を進めてみるのがおすすめです。

ライフサイクルアセスメントの事例

ここからは、ライフサイクルアセスメントの事例について紹介していきます。

トヨタ

自動車メーカーのトヨタでは、トータルクリーンという環境に配慮するための理念を持ち、ライフサイクルアセスメントも実践しています。

トヨタのライフサイクルアセスメントは、自動車の素材製造から車両製造、走行状態、メンテナンス、廃棄といった5つの段階でどのような環境負荷をかけているのか測定・公開しているのが特徴です。

具体的には、窒素酸化物や非メタン炭化水素、粒子状物質、硫黄酸化物といった物質を測定しています。

マツダ

自動車メーカーのマツダは、部品および車両製造、販売後の走行状態、廃棄の段階で環境負荷を測定し、改善活動を進めています。

たとえば、工場や物流における二酸化炭素排出量の削減、自社で製造している自動車の燃費向上と二酸化炭素排出量削減、ガソリン以外の代替燃料開発、廃棄量削減やリサイクル量の増加へ向けた推進活動など、カーボンニュートラルおよび持続可能な社会につながる取り組みが行われています。

このようにライフサイクルアセスメントを導入することで、自社にできる省エネ対策、環境経営、持続可能な社会の貢献活動などを見つけられます。

脱炭素経営の分析にはライフサイクルアセスメントを活用しよう!

ライフサイクルアセスメントは、自社製品・サービスの原材料調達から部品加工、生産、販売、輸送、使用、廃棄、リサイクルといった一連の工程で発生した環境負荷の調査、計算、評価方法を指しています。

ライフサイクルアセスメントの重要性から脱炭素経営の必要性を把握した方や、ライフサイクルアセスメントの他に脱炭素経営へつながる活動を知りたい方は、非FIT型太陽光発電を活用してみてはいかがでしょうか?

非FIT型太陽光発電は、FIT制度の認定を受けていない太陽光発電設備を指します。FIT制度の規制による影響を受けない・環境価値を活用可能といったメリットがありますし、二酸化炭素排出量を直接削減できます。

弊社とくとくファーム0では、非FIT型太陽光発電所の設置に必要な太陽光発電用地の斡旋や太陽光発電所の企画設計、施工、運用保守、太陽光発電物件の仲介などといったサービスを提供しています。

手間や負担をかけずに導入できるので、事業活動で忙しい方にも導入しやすいといえます。

少しでも関心を持った方は、電話やメールよりお気軽にご相談ください。専任の担当者が、脱炭素経営に関するお悩みに応えます。

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