太陽光発電施設のほとんどは屋外に設置されるため、建築の際は土台をしっかり固定する必要があります。その方法のひとつに「杭打ち」があります。そもそも「杭打ち」とは何でしょうか?また、どんな土地で、どこを選べばよいのかわからない方も多いと思います。この記事では、太陽光発電における杭打ちについての理解と種類、適している土地をご紹介していきます。
太陽光発電の「杭打ち」とは何?
太陽光発電における杭打ちとは、主にスチール製のドリルのような形をした杭を利用した基礎工事です。杭を打ち込んだあとに架台を固定し、そこにパネルを乗せて太陽光発電設備を設置していく流れです。
なお一般的な杭打ちは建物の基礎工事のひとつであり、建物を安定的に建てるための工法です。本項では太陽光発電における杭打ちの詳細について解説します。
- 野立て太陽光発電の主流は「杭打ち」
- コンクリート基礎とスクリュー杭基礎の違い
- 杭打ち基礎の耐用年数
それぞれ順番に解説します。
野立て太陽光発電の主流は「杭打ち」
杭打ちは、野立て太陽光発電設備の土台の固定に用いられる方法のひとつです。太陽光発電設備は、固定買取制度がスタートしたタイミングではコンクリートの基礎の支柱架台を固定する方法が一般的でした。しかしその後は、スチール製のスクリュー杭を利用した工法が主流になってきています。施工期間が短く、コストが比較的安いことがその理由と言えるでしょう。
コンクリート基礎とスクリュー杭基礎の違い
続いて、コンクリート基礎とスクリュー杭基礎の違いを解説します。コンクリート基礎は、型枠などを利用してコンクリートを打つ工法です。メリットとデメリットは以下のとおりです。
- メリット:強度と耐久性に優れている。
- デメリット:工期が長い(固まるまで時間がかかる)、コストが高い。
また、コンクリート基礎は以下の3種類に分けられます。
- 布基礎:逆T字状の断面の鉄筋コンクリートを連続して設置した基礎。
- ベタ基礎:地面全体にコンクリートを流し込んだ基礎。
- 置き基礎:コンクリートブロックを置く基礎。
一方のスクリュー杭基礎は、スクリュー杭を地面に打ち込んで固定し、それを基礎として架台やパネルを取り付ける工法です。主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
- メリット:様々な地形に設置できる。
- デメリット:コンクリート基礎に比べ強度が低め。軟弱な土地や障害物(木の根、岩盤など)が埋まっている土地などには使用できない。
コンクリート基礎 | スクリュー杭基礎 | |
---|---|---|
施工期間 | 長い | 短い |
金額 | 高い | 安い |
適している土地 | 平らな土地 | 高低差のある土地、多少荒れた土地もOK |
杭打ち基礎の耐用年数
スクリュー杭の一般的な耐用年数は以下のとおりです。
溶融亜鉛メッキを活用したスクリュー杭の耐用年数および平均腐食速度
ばく露試験地域 | 平均腐食速度 (g/㎡/年) |
耐用年数 (年) |
---|---|---|
都市工場地帯 | 9.3 | 53 |
田園地帯 | 4.5 | 110 |
海岸地帯 | 11.1 | 45 |
参考:溶融亜鉛めっきの耐食性
スクリュー杭の耐用年数は、溶融亜鉛メッキの膜厚と土壌の条件に左右されます。なおスクリュー杭は、JIS規格である「2種55」という種類の溶融亜鉛メッキを使用しています。2種55は塩害にも強く、耐久値の高いメッキです。
「亜鉛めっき鋼構造物研究会」の公式発表によると、海岸地域で使用した場合の「2種55」の耐用年数は45年とされています。
太陽光発電設備で使われる杭の種類
太陽光発電設備に使われる杭には以下の3種類があり、全てスチール製です。
- スクリュー杭
- 鋼管杭
- H鋼杭
それぞれの特徴を順番に解説します。
スクリュー杭
スクリュー杭はグランドスクリュー杭とも呼ばれ、現在太陽光発電に最も利用されている杭資材です。主な特徴には以下のようなものがあります。
- 杭の先端から全長の約半分までドリルのように加工されている
- 防錆対策として全体に亜鉛メッキ加工されている
スクリュー杭はドリル部分を地面に突き刺し、回転させながら埋め込んでいきます。メーカーによってサイズは様々で、中には300cmという長さのものもあるので、土地の性質などによって使い分けることができます。
鋼管杭
鋼管杭は、丸鋼管を架台として利用する場合に選択され、スクリュー杭が使用できない場所で利用されることが多いです。
鋼管杭には以下のような特徴があります。
- 筒状のロケット型
- 杭の頭を手打ちハンマーなどの道具で叩き、地面に打ち込む
鋼管杭は引き抜き強度が非常に高く、スクリュー杭が差し込めないような硬い地盤でも使用できるのがメリットです。最長400cmの鋼管杭も存在します。
H鋼杭
H鋼管は、3種類のスチール杭の中で一番頑丈な杭素材です。
以下のような特徴を持っています。
- 肉厚で重量がある
- 高コスト
H鋼杭は、もともと小柱や梁などに用いられていたものを、杭の基礎として転用したものです。H鋼杭を地面に打ち込むには、専用のアタッチメントを装着したバックホウ(油圧ショベルの一種)を使用します。
太陽光発電の杭打ちに向いている土地
太陽光発電の杭打ちに向いている土地には以下が挙げられます。
- 平坦で強い地盤
- 関東ローム
- 傾斜した土地
平坦で強い地盤
平坦で強い地盤であることも、太陽光発電の杭打ちには重要です。地盤が弱いと杭の強度を保てなくなるため、太陽光発電の重みで設備自体が沈んでしまったり、杭がずれたりする可能性があるからです。地盤が強いというのは、次のような土地を指します。
- 赤土や粘土質などの土で、土壌が締まっている
- 障害物(岩・砂利・瓦礫など)が埋設していない
- 空洞がない
- 水はけが良い
- 沿岸から離れている
地盤が弱いとスクリュー杭自体は簡単に設置できますが、太陽光パネルやその他の部品の荷重が増えていくことで沈下する可能性があります。特に地下に空洞や水脈がある土地は沈みやすいと言えるでしょう。また、地盤が軟らかいと強風などの影響でスクリュー杭が抜けてしまうこともあります。
このほか、地盤の強さとは異なりますが。沿岸から近い土地は潮風などによる「塩害」のリスクがあります。スクリュー抗はオールスチール製が多く、「サビ」が大敵です。塩害を要因としたサビはスクリュー抗の腐食につながるため、沿岸から離れている土地の方が杭打ちに適していると言えます。どうしても沿岸部で杭を使用する必要がある場合は、サビの影響を受けにくい、オールスチール製以外の杭を選ぶことが大切です。
ただし、地盤が硬ければ硬いほどいいというわけではありません。硬すぎる地盤は、スクリュー杭を打つことができないという問題が発生するおそれがあります。そのため杭打ちをする場合は、現地調査を行なうようにしましょう。
関東ローム
関東ロームとは、約2万~13万年前に蓄積された火山灰の地層です。特徴は、古くから蓄積された粘土状の地層のため安定しています。
日本で有名なのは九州南部の「シラス台地」と関東ロームです。前項で説明した「強い地盤」と共通していますが、粘土状の土地はスクリュー抗の引き抜き強度が確保されるため、架台の安定が期待できます。
傾斜がある土地
傾斜や高低差のある土地でも強みを発揮するのがスクリュー杭の特長です。傾斜地に合わせた架台や接合部品があり、平らな土地以外でも施工が可能となっています。例えば高低差が90cm程度なら、杭の長さを調節することで平らな基礎に仕上げることが可能です。しかし条件によっては難しい場合もあるので、事前に専門業者に確認してもらいましょう。
【太陽光発電】杭打ち工事の道具
太陽光発電で使用する杭打ちの道具を紹介します。スクリュー杭を地面に差し込むために必要な道具です。
- 杭打ち専用アタッチメント
- 測量機
特殊な道具となりますので、それぞれ順番に解説します。
杭打ち専用アタッチメント
1つめは杭打ち専用アタッチメントです。スクリュー杭を打ち込むためにバックホウ(油圧ショベルの一種)専用のオーガ(オーガー)と呼ばれるアタッチメントが必要です。このアタッチメトをスクリュー杭にセットしたのち地面と垂直に立て、回転させながらゆっくりと押し込むことで地面に埋めていきます。
測量器
2つめは測量器です。杭を打ち込む際、設計図に沿って正確な位置を実際の土地に落とし込む必要があります。そのマーキング(墨出し/位置出し)のために必要不可欠なのが測量器です。杭打ちは太陽光発電設備を支える基礎作りに大きく影響することから、マーキングはもっとも重要な作業のひとつだと言えます。
野立て太陽光発電は専門業者へ
本記事では太陽光発電における杭打ちについて解説しました。
太陽光発電はほとんどの場合で屋外に設置されます。建築の際、土台の固定に必要な工法として、現在主流となっている杭打ちを紹介しました。
杭打ちに使われる杭の種類は様々です。杭打ちに適した土地の探し方や道具の選び方についてわからないことがあれば、信頼できる専門業者へのご相談をおすすめします。
創業30年の和上ホールディングスでは、多数の全量自家消費型太陽光発電に関する企画から設計、設置工事、運用保守までトータルサポートしています。
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