FIT型太陽光発電で売電を行っている企業の中には、発電コストについて気になっている企業もあるのではないでしょうか。発電コストを把握できれば、効率的な売電が継続できているかを判断できます。LCOEは発電コストを分析するための指標で、太陽光発電を所有している企業にとって活用すべきものといえます。
そこで今回は、LCOEの意味や計算方法、活用メリットやコストの削減方法、太陽光発電の出口戦略について詳しくご紹介します。太陽光発電の運用方針について悩んでいる方やFIT型太陽光発電から他の運用方法へ転換すべきか考えている方などは、参考にしてみてください。
LCOEとは何?
LCOE(Levelized Cost Of Electricity:均等化発電原価、均等化発電コストなど)は、発電設備の発電コストを指標化したものです。
発電にかかった燃料費の他、発電設備の運転維持費用などを全て計算に含めることで、太陽光発電の設置から廃棄までにかかるコストを把握することが可能です。
太陽光発電を運用している場合は、LCOEを導入することによって、1kWあたりの費用よりも正確な費用計算を進められます。
LCOEの計算方法
LCOEの計算方法は以下のとおりです。数値が小さければ小さいほど、コストの低い発電設備といえます。
設備の廃棄までにかかるコスト=初期費用+運転維持費(維持管理費用)+燃料費(発電にかかった燃料)+その他費用(CO2などの環境対策費用+事故対策に関する費用+政策経費)÷生涯総発電量
初期費用は、太陽光発電設備の本体価格や設備費用を指しています。運転維持費用は、保険料やメンテナンス費用などを含めた費用です。また政策経費とは、発電設備の導入や運用に関して税金が使用されている場合に含まれる項目です。
なお、太陽光発電の場合は太陽光を用いるため、燃料コストや環境対策費用を抑えられます。
再生可能エネルギーのLCOE
再生可能エネルギーの平均的なLCOEは、資源エネルギー庁から資料として公開されています。
2021年に作成された「発電コスト検証に関する取りまとめ(案)」から、各再生可能エネルギーのLCOEを紹介します。
再生可能エネルギー | LCOE(1kWhあたりのコスト) |
---|---|
事業用太陽光発電 | 1kWhにつき8.2~11.8円 |
住宅用太陽光発電 | 1kWhにつき8.7~14.9円 |
小水力発電 | 1kWhにつき25.3円 |
中水力発電 | 1kWhにつき10.9円 |
地熱発電 | 1kWhにつき17.4円 |
バイオマス発電(専焼) | 1kWhにつき29.8円 |
バイオマス発電(混焼) | 1kWhにつき14.1~22.6円 |
陸上風力発電 | 1kWhにつき9.9~17.2円 |
洋上風力発電 | 1kWhにつき26.1円 |
再生可能エネルギーの中で発電コストの安い発電設備は太陽光発電で、そのLOCEは初期費用が多くを占めています。
2020年の事業用太陽光発電に関するLOCEは、1kWhにつき12.9円です。また、初期費用や廃棄費用を含む資本費は8.8円で、運転維持費3.2円、政策経費0.9円という内訳です。
既に太陽光発電を設置している場合は初期費用を抑えられないため、LOCEを下げるには運転維持費や廃棄費用の負担軽減に向けた対策を講じるのが大切です。
LCOEを活用するメリット
続いては、太陽光発電のLOCEを知るメリットを確認していきましょう。
自社で運用している発電設備の効率を分析できる
自社で運用している太陽光発電所の発電コストがわかるため、収支バランスが維持できているか、費用対効果の優れた設備として運用できているかを確認できます。
一般的に太陽光発電のコストを確認する際は、初期費用と維持管理費用の2点から計算していきます。また、初期費用の回収期間から利回りや収支を分析するため、廃棄費用や人件費などを含めた総合的なコストを確認できません。
LOCEを活用した場合は、初期費用からメンテナンス費用、人件費、固定資産税、修繕費、政策経費などを含めたコストで分析することが可能です。
また、設置から廃棄までにかかるコストも計算に含まれているので、運用期間中の発電コストを正確に分析できます。
費用や効率から今後の運用方針を策定できる
LOCEは正確な発電コストを分析できるため、今後の運用方針を定めやすいといえます。
平均的な発電コストより高い状態なら、太陽光発電の売却やLOCEの削減策について模索していく必要があります。反対に平均的な発電コストより安い状態なら、相場より高い価格で設備を売却しやすい状況といえますし、効率的な運用を継続できます。
太陽光発電のLCOEを削減していくには?
太陽光発電のLCOEを削減できれば、費用対効果を高めることが可能です。そこでここからは、太陽光発電のLCOEを削減していく方法をわかりやすく紹介します。
発電効率が下がらないように維持管理していく
太陽光発電のLOCEを削減していくには、発電効率と維持管理に着目することも大切です。
設備を設置したあとは、初期費用を抑えることができません。そのため、維持管理費用の削減もしくは、発電効率を維持していくための対策を立てる必要があります。
具体的には、O&M業者に定期的な太陽光パネル洗浄やメンテナンスを依頼することで、早い段階で変換効率低下を発見できます。太陽光パネルには砂やホコリ、鳥の糞、落ち葉などが付着しやすく、それにより陰を形成してしまいますし、注意の必要な事象でもあります。
落ち葉などによる陰を放置してしまうと発電効率低下に直結するだけでなく、ホットスポット現象を引き起こします。(ホットスポット:部分的な影の形成によって抵抗が増えて、太陽光パネルが故障してしまう現象)
このほか、早期の点検や清掃・洗浄は大きな修繕を事前に防げるので、修繕費削減につながります。
温度上昇に強い太陽光パネルを導入する
太陽光パネルの交換時期に差し掛かっている時は、温度上昇に強い太陽光パネルを検討してみるのもおすすめです。
夏場は晴れの日が多い傾向にあり、発電量を伸ばしやすいイメージがあるかと思います。しかし太陽光パネルに搭載されている太陽電池は、温度上昇に弱い性質を持っています。
太陽光パネルの発電効率は、一般的に気温25℃程度でピークを迎え、1℃上昇ごとに0.4%程度ずつ低下していきます。また気温が10℃上昇した場合は、約5%効率が下がります。
そのため、気温35℃や40℃といった日の多い夏場は、太陽光パネルの発電効率が大幅に低下してしまいます。
温度上昇による発電効率の低下を抑えるには、一般的なパネルより温度上昇に強いHIT型太陽光パネルを検討してみるのもおすすめです。HIT型太陽光パネルは、気温10℃上昇で2.5%前後の効率低下なので、一般的な太陽光パネルより発電効率を維持できます。
変換効率の高い太陽光パネルやパワーコンディショナを導入
太陽光発電の導入・増設もしくは修繕をする場合、変換効率の高い太陽光パネルやパワーコンディショナを検討してみるのが大切です。
出力や変換効率の高い太陽光パネルやパワーコンディショナを導入できれば、その分発電効率や発電量を改善できますし、発電コストを圧縮できます。
ただし、太陽光パネルやパワーコンディショナを全交換した場合は、施工費用の負担増加により費用対効果を改善できない可能性もあります。
設備導入の際は初期費用を抑える
これから太陽光発電を導入する時は、初期費用をなるべく抑えるために低金利の融資を探したり、相場より安い施工販売業者を見つけたりしてみるのがおすすめです。また、補助金制度の要件を満たすことができれば、申請もできます。
たとえば、「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」という国の補助金制度では、全量自家消費型太陽光発電と蓄電池を同時に設置する際に補助金を受けられます。
補助金額は、太陽光発電設備に対して1kWあたり4万円、産業用蓄電池に対しては1kWあたり5.3万円です。(リースやオンサイトPPAの太陽光発電は1kWにつき5万円の補助金)
申請要件は多数あり、手続きに時間と手間がかかりますが、初期費用を一定程度削減できるため、費用回収期間の短縮につながります。
LCOEから見て太陽光発電の発電コストが高い場合は?
LOCEの分析によって売電型太陽光発電の発電コストが高く、なおかつ運用継続の厳しい状況なら、売却を検討してみることをおすすめします。そこで最後は、太陽光発電の売却を検討すべき理由についてわかりやすく紹介します。
まとまった売却益を得られる
太陽光発電所を解体撤去するには、出力50kW台でも100万円前後かかります。また、太陽光発電に適した土地は一般的に不動産投資向きではないため、太陽光発電以外の用途では買い手がつきにくい状況です。
一方、売買仲介サービスを利用した売却の場合は、手数料負担などを含めても売却益を残せます。さらに設備と土地を一式売却できるため、土地売却にかかる手間を省略することが可能です。
売買仲介サービスが充実
太陽光発電の売買仲介サービスは、情報発信や買い手との交渉・契約手続き、売却後の税務処理などを代行およびサポートしてもらえます。
弊社とくとくファームでは、太陽光発電所の査定と現地調査、専門スタッフによるメンテナンスや洗浄、自社HPによる物件情報の無料掲載、買い手との交渉や契約手続きなどに対応しています。売却後に発生する税務処理に関しては、無料で対応いたします。
初めて太陽光発電所を売却する方も簡単に手続きを進められるので、少しでも関心をお持ちの方はぜひご相談ください。
幅広い需要がある
特にFIT型中古太陽光発電所は、全国各地から買い手が集まりやすく、なおかつ低圧からメガソーラーまで需要のある設備です。
なぜなら、2023年から新規FIT認定を受けるよりも、高い固定買取価格で売電できるためです。
中古太陽光発電所を購入した場合は、FIT認定を受けた年度の固定買取価格で売電を始められます。たとえば、2020年にFIT認定を受けた中古太陽光発電所を購入すると、2020年度の固定買取価格で売電することが可能です。
また、FIT制度の固定買取価格は年々下落傾向で更新されています。初期費用は安くなっているものの、廃棄費用積立義務化や出力制御などで収益を伸ばしにくいといえいます。
そのため多くの買い手は、少しでも固定買取価格の高い中古太陽光発電所を探しているのです。
太陽光発電のコスト負担に悩むなら売却がおすすめ!
LCOEは、発電設備の設置から廃棄までに発生する発電コストを指標化したものです。太陽光発電所の設置後に発電コストを抑えるには、定期的なメンテナンスと洗浄、人件費の見直しなどに限定されます。そのため費用負担に悩んでいる場合は、太陽光発電所の売却を検討するのがおすすめです。
太陽光発電の発電コストが高く悩んでいる方や太陽光発電所の収支バランスが崩れてきている方は、中古太陽光発電の売買仲介サービスを検討してみてはいかがでしょうか。
15,000件以上の実績を持つとくとくファームでは、FIT型中古太陽光発電所や未稼働案件の売買仲介サービスを展開しています。専任のアドバイザーが物件の調査から査定、買い手との交渉、売却額最大化に向けたサポートを行います。
また、売却額最大化に向けたサービス内容には、太陽光発電所の点検や買い手向けの資料作成など、価値を高めるためのサポートが多数含まれています。
売却を希望される方は、30秒で完了するかんたん査定や約30項目で詳細な内容を把握できるしっかり査定、お電話からお気軽にご相談ください。