脱炭素経営を進めていくにあたり、建築物の省エネ性能向上は重要なポイントです。中でもBELSという評価制度の取得ができれば、自社の企業価値アップなどさまざまなメリットを得られます。
そこで今回は、BELSの仕組みや取得方法やメリット、注意点についてわかりやすくご紹介します。脱炭素経営の方法で悩んでいる方などは、参考にしてみてください。
BELSとは?
BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)は、建築物の省エネ性能に関する評価制度です。住宅や非住宅含めすべての物件が、BELSの対象建築物としてみなされています。
BELSの評価を取得できた場合は、建築物の資産価値向上や自社の企業価値アップといったさまざまなメリットを得られるのが特長です。
同制度は2014年4月にスタートし、住宅性能評価・表示協会によって運用管理されています。また、BELSに申請された建築物を評価しているのは、民間企業で構成された評価機関です。
BELSの評価機関は建築物省エネ法に沿って建築物を審査・評価しており、公平性や信頼性のある組織と言えます。
非住宅向けBELSの評価方法
BELSの評価方法は、住宅と非住宅向けによって異なります。非住宅とは、オフィスビルや工場といった建築物のことです。
非住宅向けBELSの評価方法は、標準入力法とモデル建築物の2種類に分かれています。
BELSへ申請するには、指定の評価方法で一次エネルギー消費量を算定し、なおかつ所定の資料を添付する必要があります。一次エネルギー消費量は、建物および設備機器の利用に伴うエネルギー消費量で、数値が低ければ低いほど省エネ性能という点で高い評価を受けられます。
ここでは、非住宅向けBELSへ申請の際に選択可能な評価方法について紹介していきます。
標準入力法
標準入力法は、BELSへの申請対象として検討している建築物の省エネ性能や一次エネルギーを詳細に計算していく方法です。
各部屋に設置されている空調や水道設備など、あらゆる設備の一次エネルギー消費量を計算する必要があります。また、エネルギー量の計算結果に影響を与えない部屋も項目に含めなければいけません。
計算と調査に時間がかかり、後述のモデル建築物と比較して負担の大きい方法といえます。
ただし、正確な一次エネルギー消費量を算定できるだけでなく、BELSにおいて高い評価を期待できます。
モデル建築物
モデル建築物は、一次エネルギー消費量を簡易的に求める計算方法です。
国が調査したデータをベースに一次エネルギー消費量の算定を行なったり、一部の部屋で消費されているエネルギー量を集計したり、標準入力法より負担がかからずに調査を進められます。
自社のリソース面で各部屋の一次エネルギー消費量を算定できない場合は、モデル建築物の方がおすすめです。ただし、標準入力法ほど正確なデータではないため、実際の一次エネルギー消費量より数10%程度高めに算定される可能性もあります。
BELSとZEHの違い
BELSは評価制度、ZEHは省エネ性能の高い住宅といった違いがあります。
具体的には、建築物の省エネ性能を評価し、誰でもわかりやすい数値で示すための制度がBELSです。一方のZEHは、年間の一次エネルギー消費量ゼロを目指した住宅のことです。断熱性能や太陽光発電などの創エネ機器が充実しているので、光熱費の負担を抑えやすいというメリットもあります。
またZEHの対象は住宅なので、建築物の範囲という点でもBELSと異なります。
BELSとZEBの違い
ZEBとは、ZEBと同じく一次エネルギー消費量ゼロを目指した建築物のことです。その定義については曖昧な部分もありますが、一般には延べ面積10,000㎡以上の建築物が対象とされています。
また、判断基準によってZEBはいくつかの種類に分けられ、外皮性能(窓や外壁、床などにおける断熱性能など)や省エネ性能の高性能化を目指した建築物をZEB Oriented、また再生可能エネルギーを除いて基準一次エネルギー消費量50%削減を実現した建築物は、ZEB Readyとして認定されます。さらに、省エネと創エネ機器で一次エネルギー消費量25%以下を実現可能な建築物は、Nearly ZEBです。
企業にとってZEBの認定は脱炭素経営につながる取り組みなので、自社の建物で適合できるよう少しずつ改修工事を進めていくのもいいかもしれません。
BELSの申請方法
BELSの申請を行なうには、事前に一次エネルギー消費量の算定結果を示した資料を含め、指定の書類を準備しておく必要があります。
以下に申請手続きで必要な主な書類を紹介します。
一次エネルギー消費量の資料
BELSに関する評価申請書一式
建築物の配置図や平面図など設計図一式
設備機器の制御図など
申請書類一式を準備した後は、最寄りの評価機関へ申請書類を提出します。そこで評価および審査をしてもらい、通過できた場合はBELSの評価書が交付されます。また申請書類は、審査通過時に押印され、返却してくれます。
評価機関でBELSの評価プレートやシールを作成してもらえるので、自社の建築物に取り付けたり資料などに貼ったりすることが可能です。
BELS取得のメリット
ここからは、BELSの評価を受けるメリットについてわかりやすく解説していきます。
わかりやすい表示で建物の省エネ性能をアピールできる
BELSは星の数で評価されます。そのため、省エネ性能についてわからない消費者や取引先でも、自社の取り組みをスムーズに理解してもらえます。
例えばBELSのプレート中央部に記載された星が5個なら、特に省エネ性能に優れた建築物を意味します。またプレート下段には、建築物の一次エネルギー消費量削減率や適合可否などが視覚的に表示されます。
脱炭素経営の取り組みをわかりやすい方法で伝えたい企業や、自社の省エネ性能を高めたい企業にとってはメリットの大きな制度です。
第三者機関による評価なので信頼を得やすい
BELSは第三者機関による評価制度なので、自社評価と比較して信頼性の高い方法だと言えます。
自社独自で事務所やビルなどの省エネ性能を測定した場合、正確なデータを公開しても消費者や企業から都合のいい資料を公開しているのではないか、といった疑問を抱かれる可能性もあります。
一方、BELSへ申請した場合、一定の基準をベースにした評価と審査が行なわれるので、評価の公正さや正確さという点でも信頼されやすいでしょう。
省エネ性能の向上による光熱費削減を期待できる
BELSでの高い評価を目指して省エネ性能を改善させる取り組みを始めれば、光熱費削減効果も期待できるようになります。
BELSでの評価を向上させるには、一次エネルギー消費量の削減を目指す必要があります。具体的には、照明や給湯設備、空調、換気設備といった機器のエネルギー使用量を抑えなくてはなりません。
そこで一次エネルギー消費量削減に向けた節電活動をはじめ、省エネ機器の導入、創エネ機器を活用した場合、省エネ性能の向上だけでなく自社の固定費削減も見込めることになります。
BELS取得を目指す際の注意点
続いては、BELS取得時に注意しておくべきポイントを解説します。
評価を受けるための設備本体や工事費用がかかる
BELSで評価を受けるには、一定の省エネ性能を持った建築物に改修しなければいけません。
省エネ性能を高めるためには、建て替えや大規模な改修工事で断熱性能や換気性能を向上させたり、空調や給湯設備、生産設備の高効率化を図ったりする必要性が出て来ることがあります。
しかし建物の建て替えや改修工事、設備機器の買い替えには費用負担がかかりますし、改修工事中に事業活動を制限しなければいけないケースも出てきます。
BELSの取得を目指すかどうかは、費用と評価取得のバランスを考慮した上で判断するのも大切です。
申請に手間がかかる
BELSへ申請するには、一次エネルギー消費量の算定および資料作成、建築物の設計図や設備機器の図面など複数の書類を用意しなければいけません。
BELSの申請担当者にとっては、社内で承認を得ながら各種書類を手元に用意する必要があり、手間と時間のかかる作業と言えます。また、申請書類の誤表記といったミスがあると、再度申請に向けて準備を進めなければいけません。
申請ミスを防ぐには、なるべく余裕をもって準備できる環境とスケジュールの構築も求められます。
BELS取得には太陽光発電の設置が適している理由
BELSの審査を通過するには、太陽光発電の設置もおすすめです。2023年、佐川急便では、自社の営業所に自家消費型太陽光発電を設置し、BELSなどの評価制度へ申請を行ない、審査に通過し評価を受けました。
年間で150tを超える二酸化炭素排出削減を実現できるようになったことは、脱炭素経営という点でも大きな取り組みと言えます。
このように建物や設備の改修だけでなく再生可能エネルギーの導入も、BELS取得に役立つことがおわかりかと思います。
太陽光発電事業を始めるなら非FIT型がおすすめ
BELS取得や脱炭素経営のために太陽光発電事業を始める場合は、非FIT型の方が向いていると言えます。それでは、非FIT型太陽光発電がおすすめの理由についてわかりやすく解説します。
FIT制度に関する規制を受けずに運転可能
FITの規制や変更に縛られず太陽光発電を運用できるのは、非FIT型の大きなメリットであり注目すべき点です。
FIT制度は、再生可能エネルギー発電設備導入時に10年間もしくは20年間、固定買取価格で電力を買い取ってもらえる国の支援制度です。売電収入の見通しを立てやすいのが、特長といえます。
ただし、FIT制度の認定に関するルールや規制は、国の方針によって度々変わります。その都度、太陽光発電所の運用方法を見直したり負担を受け入れたりする必要があり、自由度という点においてデメリットもあります。
一方、FIT制度の認定を受けずに運用する非FIT型太陽光発電の場合は、制度の変更や規制強化に関する影響を受けません。
BELS以外にも環境関連枠組みへ参入したり評価を受けたりしやすい
非FIT型太陽光発電を導入した場合は、BELS取得以外にも環境関連の枠組みへの参入に一歩近づきます。
例えば、RE100というエネルギーに関する国際的イニシアチブへ加盟するには、自社の事業に必要な電力を非FIT型かつ再生可能エネルギーでまかなう必要があります。
RE100への加盟は、自社の企業価値や信頼性向上につながりますし、投資家からの評価を高められます。
再エネ電源の供給事業で売電収入やカーボンクレジット収入を得られる
非FIT型太陽光発電を導入すると、自家消費だけでなく再エネ電源の供給事業による売電収入、カーボンクレジットの販売など、さまざまな事業へ展開できます。
カーボンクレジットとは、非FIT型の再生可能エネルギーで発電された電力によって削減された二酸化炭素排出量のことです。カーボンクレジットを所有している企業は、J-クレジット制度や今後常設される排出量取引所で売却できます。
FIT型太陽光発電では選択できない方法を検討できるのが、非FIT型太陽光発電の強みです。
BELS認定は企業にとってメリットが多い!非FIT型太陽光発電の導入で実現しよう!
BELSは、一次エネルギー消費量の基準を満たした建築物を評価する制度です。また評価を受けた企業は、省エネ性能の高さをアピールできます。
BELSによる企業価値向上に関心を持っている方やBELSにも役立つ非FIT型太陽光発電をもう少し知りたいという方は、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電について検討してみてはいかがでしょうか。
弊社とくとくファームでは、非FIT型太陽光発電を導入したい方に向けて太陽光発電所の設置計画から設計、設置、運用方法まで総合的に対応しています。また、CSR活動やRE100加盟など、脱炭素経営を含めサポートしているので、環境経営を目的としている方もぜひお気軽にご相談ください。
お電話やメールのほか、無料の個別セミナーでも受け付けています。個別セミナーでは、脱炭素経営の基本から丁寧にご説明いたします。