風力発電投資とは?コストやメリット・デメリットについて詳しく解説!

風力発電投資とは?コストやメリット・デメリットについて詳しく解説!

風力発電は、風の力で発電を行なう再生可能エネルギー設備を指しています。また、風力発電投資は、FIT制度を活用して売電収入を得る運用方法です。

そこで今回は、風力発電投資の仕組みや特徴、メリット・デメリットについて詳しくご紹介します。太陽光発電と風力発電どちらにするか悩んでいる方は、参考にしてみてください。

風力発電の仕組み

風力発電は、風を回転力に変換し、さらに回転力を電力へ変換できる発電設備です。全体の形状は、タワーの上部にブレード(風を受ける金属の羽)を取り付けたものです。

以下に主な部品や構造を紹介します。

タワー ・風力発電設備を支える部分。また、タワーに固定されている送電用のケーブルを通じて電力を供給
・タワーの上部にその他の機器類が設置されている
ブレード、ロータ ・金属の羽で風を受ける部分がブレード
・ブレードの中心部分に組み込まれている部品がロータ
・ブレードが風を受けることによってロータを含め全体が回転し、風を回転力に変換
ナセル ・タワー上部のロータとタワーをつないでいる部材および機器
・ナセル内部にはロータと接続されたギアボックス(増速機)、ブレーキ、発電機が搭載されている

ナセル内部では、風を受けたブレードの回転数をギアボックスで調整し、発電に必要な回転数まで増幅します。また、回転の力が発電機によって電気へ変換される仕組みです。

なお、強風・暴風などで風力発電設備の破損を招く危険性が生じた場合は、ナセル内部のブレーキ装置によってブレードの回転を止めてくれます。

風力発電の設備規模に関しては、メガワットクラスの大型設備だけでなく出力20kW未満の小型風力発電も存在しています。

風力発電設備は2種類に分かれている

風力発電設備は、陸上・洋上の2種類に分かれていて、それぞれ特徴や強みに違いがあります。続いては、各風力発電設備の特徴を詳しく解説します。

陸上風力発電

陸上風力発電とは、一定の風速を見込める陸地に設置された風力発電のことです。

経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると、陸上風力発電の資本費は1kWあたり34.5万円(中央値)です。次に紹介する洋上風力発電と比較した場合、導入費用を抑えられるのが特徴と言えます。

ただし周辺に住宅などがある場合、騒音や景観などに関するリスクも生じます。そのため土地選定の際は、周辺環境を含めて確認するのが大切です。

出典:経済産業省ウェブサイト

洋上風力発電

洋上風力発電とは、洋上(海上)に設置された風力発電のことです。また洋上風力発電は、着床式と浮体式の2種類があります。着床式は、海底にタワーを固定させる洋上風力発電です。一方の浮体式は、浮体構造物の上に風力発電設備を設置し、シンカーで海底と設備をつなぎ留めます。

洋上の場合は陸上よりも一定の風速を見込めるほか、騒音や景観トラブルのリスクを抑えられるのがメリットのひとつです。また設置の自由度が高く、大型設備も設置・稼働しやすいと言えます。

ただし、経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると、洋上風力発電の資本費は1kWあたり137万円と陸上風力発電より4倍以上のコストがかかる傾向です。また、維持管理のコストや手間という点でも負担が大きいため、高い技術力の必要な発電方式と言えます。

出典:経済産業省ウェブサイト

風力発電投資とは?

ここからは、風力発電投資の特徴についてわかりやすく解説します。

FIT制度を活用して売電収入を得る

一般的に風力発電投資は、FIT制度を活用しながら売電を行なう事業を指します。

FIT制度とは、再生可能エネルギーを普及促進させる国の支援制度で、対象の再生可能エネルギーで認定を受けた場合、固定の買取単価で一定期間電力を買い取ってもらえます。また、費用回収および収益の見通しを立てやすいのが、メリットのひとつです。

風力発電はFIT制度の対象設備で、発電方式や出力に応じて固定買取価格による売電を始められます。

以下に2024年度の固定買取価格を紹介します。

陸上風力発電(50kW未満) 1kWhあたり14円
陸上風力発電(50kW以上) 入札制度により決定
着床式洋上風力発電
浮体式洋上風力発電 1kWhあたり36円

導入費用の高い洋上風力発電は、太陽光発電と比較して固定買取価格が高い傾向があります。出力50kW以上の陸上風力発電や着床式洋上風力発電の固定買取価格は、入札制度によって定められるため、ほかの項目と異なりFIT認定を受ける際に決まります。

出典:資源エネルギー庁ウェブサイト

一般的に融資を受けて設置を行なう

風力発電投資は、太陽光発電投資と同じく融資を受けながら設置・運用していくのが特徴です。

前半でも紹介したように、風力発電の導入費用は陸上風力発電で1kW30万円台、洋上風力発電なら130万円台と負担が大きいと言えます。そのため融資を受けて設備を導入し、FIT制度による売電収入で費用回収を進めていくのが一般的な流れです。

利回りは一般的に10%前後

風力発電投資の利回りは、一般的に10%前後で推移しています。

例えば1,000万円の初期費用で風力発電を設置した場合、FIT制度による売電で年間100万円程度の収益を得られる計算です。また初期費用の回収期間は、設備を設置した年から約10年間です。

利回りに関しては、太陽光発電投資と大きく変わらないと言えます。

ただし、一定の風速を見込める土地で発電を始められず、またシミュレーションに誤りがあると収支のバランスは大きく変動するため、必ず利回りが10%前後あるわけではありません。

そのため風力発電投資を始める場合は、発電量を左右する土地・気候を慎重に調査した上で検討するのが大切です。

風力発電設備の建設費用

ここからは、風力発電設備の一般的な建設費用について紹介します。

出力1kWあたり30万円前後

前半でも触れたように、陸上風力発電設備の建設費用は1kWあたり30万円前後です。一方、洋上風力発電設備は1kWあたり130万円以上かかります。

また陸上風力発電の場合は、土地の購入や造成工事費用、固定資産税などもかかります。

建設後は維持管理費用がかかる

風力発電設備はメンテナンスフリーではないので、建設後に施工販売会社へ定期的なメンテナンスを依頼する必要があります。また、定期メンテナンスが義務化されているため、依頼費用などは必ずかかります。

メンテナンスのほかには、管理運用に必要な遠隔監視システムや損害に備えるための保険、土地の管理費なども発生します。

なお、経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」による、と陸上風力発電の維持管理費用は1kWあたり年間1.35 万円です。また、7,500kW以上や37,500kW 以上と出力の大きな設備は、維持管理費用1kWあたり1万円未満で推移しています。

出典:経済産業省ウェブサイト

風力発電投資のメリット

続いては、風力発電投資のメリットについて紹介します。

FIT制度の活用で収支の見通しを立てやすい

風力発電投資は、FIT制度の活用で収支の見通しを立てやすいのがメリットのひとつです。

前半でも解説したように、FIT制度の認定を受けた場合は一定期間固定買取価格で売電を行なうことが可能です。風力発電の場合は、出力や設置方式にかかわらず20年間適用されます。

さらに風は時間に関係なく吹くので、太陽光発電と異なり夜間でも発電できます。そのため設置場所の環境によっては、発電量を伸ばせる可能性もあります。

固定買取期間中に費用回収が可能

風力発電投資では、太陽光発電投資と同じくFIT制度の固定買取期間中に費用回収を完了させることが可能です。

具体的には利回り10%前後なので、固定買取期間20年の間に初期費用の回収を完了させ、なおかつ残りの期間に売電収益を残せます。ただし、風力発電に必要な風は状況によって向きや速度なども変わります。シミュレーション通りに発電できるとは限らないため、さまざまな条件で発電量や収支を計算するのが大切です。

脱炭素につながるので企業価値を向上

風力発電は再生可能エネルギーであり、脱炭素化につながりますし企業価値を向上させられる可能性もあります。

風力発電は、火力発電と異なり化石燃料を燃焼せず、温室効果ガスを発生させる仕組みもありません。そのため、二酸化炭素の排出量削減実績としてアピールできるほか、投資家や消費者、取引先からの信頼性などの向上につなげられます。

脱炭素経営の方法を模索している方は、風力発電を含めて再生可能エネルギーの活用を検討してみるのがおすすめです。

風力発電投資のデメリット

風力発電投資にはメリットがあるものの、デメリットも存在しています。これから導入を検討する場合は、デメリットも把握した上で判断しましょう。それでは、風力発電投資の主なデメリットを紹介します。

初期費用が高い傾向

風力発電を導入費用は、陸上風力発電でも1kWあたり30万円前後と、太陽光発電より高い水準です。また洋上風力発電の場合は、1kWあたり100万円以上の導入費用がかかります。

例えば出力100kWの陸上風力発電では、3,000万円以上かかる計算です。洋上風力発電なら、3億円以上の初期費用として検討する必要があります。さらに風力発電の導入実績は太陽光発電より少ないため、融資におけるハードルが高い側面もあります。

発電に適した土地を探す必要がある

風力発電を始めるためには、発電に適した土地を探す必要があります。

しかし、年間を通して一定の風が吹き、なおかつ風力発電にとって丁度いい風速を見込める土地は、すぐに見つからないと言えます。

風力発電に適した風速は、一般的に6.5m/s以上です。また、風速が1mや2m変わるだけで発電量は30%以上変動します。

風の吹きやすい場所を見つけたとしても風力発電設備の建設が難しい場所も多く、土地選定だけでもハードルの高い状況です。

発電が安定しないため利回りが変動することも

風力発電投資は風という不安定なエネルギーを活用しているため、発電量や利回りも大きく変動してしまうリスクがあります。

前段でも触れたように、風力発電の発電量は風速1mの違いが数10%変動する傾向です。さらに風力発電投資自体の実績が少なく、さまざまな条件での発電量や変換効率の変化といったデータ、運用ノウハウなどを蓄積した施工販売会社は限定されています。

風力発電投資より非FIT型太陽光発電の方がおすすめの理由

再生可能エネルギーを活用した事業では、風力発電投資より非FIT型太陽光発電の方がおすすめです。

そこで最後は、非FIT型太陽光発電がおすすめの理由について紹介します。

初期費用は太陽光発電の方が安い

非FIT型太陽光発電の初期費用は、風力発電よりも安く抑えられます。

経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると事業用太陽光発電の初期費用は、1kWあたり14.7万~25.1万円です。出力が大きくなるほど1kWあたりの費用は下落するので、メガソーラーなどの大型設備なら1kWあたり20万円以下で導入できます。

さらに風力発電より導入実績が多いので、さまざまな施工販売会社の見積りを比較しながら費用負担の軽減を目指せます。

初期費用の負担を抑えながら再生可能エネルギーを導入できるのは、太陽光発電の大きな強みです。

蓄電池の活用で効率的に売電や自家消費が可能

非FIT型太陽光発電事業の場合は、産業用蓄電池の活用によって効率的な売電や自家消費を行なうことが可能です。

太陽光発電単体では、夜間や早朝・夕方、雪の日などには発電できません。

ただし、太陽光発電で発電した電気を産業用蓄電池に充電しておけば、電力需要の高い時間帯に再エネ電力を活用できるため、デメリットをカバーできます。

さらにFIT認定を受けていない非FIT型太陽光発電なら、アグリゲーター(発電事業のサポートを行う)のサポートを受けながら電力の活用先を探して売電事業を始められるほか、全量自家消費型にシフトすることも可能です。

さまざまな場所に設置運用できる柔軟性も強み

非FIT型に限らず太陽光発電は、自社の敷地内や建物の屋根などに設置できる柔軟性の高さが魅力のひとつです。

風力発電投資の場合は、風の吹きやすい沿岸部などに限定されます。

一方、太陽光発電は、発電に日光が差し込む場所であればどこでも設置・稼働できます。また、建物の屋根など自社の敷地内に設置することが可能なので、自家消費しやすい再生可能エネルギーです。

環境価値のある電力を活用できる

非FIT型太陽光発電はFIT認定を受けていないので、環境価値のある電力を活用できますし、企業価値向上を目指す上で大きなメリットと言えます。

FIT制度の認定を受けた電力の買取コストは、電力会社だけでなく国民も再エネ賦課金という形で負担しています。つまり、電力買取コストを負担してもらう代わりに、環境価値が消費されている状態でもあります。さらに、FIT由来の電力は、火力発電や原子力発電の含まれている電力市場で取引されているため、再生可能エネルギー100%の電力とは言えません。

一方、非FIT型太陽光発電の電力は、電力市場を介さずに供給したり全量自家消費したりできます。

環境価値の保たれた電力の供給・活用をアピールできるのは、自社の脱炭素経営を進める上で重要なポイントです。

風力発電投資は実績が少ない傾向!太陽光発電投資の検討がおすすめ!

風力発電投資は、FIT制度を活用して売電収入を得る運用方法のひとつです。ただし、初期費用の高さや導入実績の少なさなどの課題が多く、慎重に判断する必要もあります。

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