物流や運送関係の企業にとって、EVトラックの導入検討は脱炭素化につながります。しかし、EVトラックの導入で自社の事業活動にどのような影響を与えるのかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、EVトラックの特徴や仕組み、メリットやデメリットについて詳しく解説します。EVトラックに関心を持っている方やEVトラックの運用方法を知りたい方などは、参考にしてみてください。
EVトラックとは?
EV(Electric Vehicle:エレクトリックビークル)は、車載バッテリーに直流の電気を充電し、電気の力でモーターを回転させる自動車を指します。つまりEVトラックとは、電気で走行可能なトラックのことです。
ガソリンや軽油を利用しないので、化石燃料の燃焼に伴う温室効果ガスの排出量を抑えられます。また、ガソリン価格の高騰している2023年時点では、維持管理費用の軽減につながるのが特長です。
EVトラックの費用相場
EVトラックの歴史は浅く、2022年頃から国内の自動車メーカーでも製造され始めました。そのため車両の種類は少なく、平均的な費用を割り出すのがまだ難しい状況です。
EVトラックとして代表的な車両は、三菱ふそうのeCANTERです。eCANTERは、2023年3月に発表された新型タイプで、バッテリーSサイズ(積載量5トンクラス)で1,370万円程度、Lサイズバッテリー(積載量8トンクラス)なら2,000万円程度となっています。
一般的な5トントラックの価格は1,000万円台なので、EVの方が高い傾向にあります。ただし、2倍、3倍と極端に高いわけではないため、現実的に導入検討可能な価格帯と言えるでしょう。
EVトラックの課題
EVトラックは、脱炭素経営を加速させる車両です。しかし技術的な課題があり、導入前に把握しておくべき内容もあります。
続いては、EVトラックの課題についてわかりやすく解説していきます。
航続距離が短いため長距離運転においてデメリット
EVトラックの航続距離はエンジン式と比較して短く、特に長距離輸送が必要な場面においては活用が難しい状況と言えます。
LサイズバッテリーのeCANTERの航続距離は、最大で324km程度です。例えば、車内の暖房や冷房などでも電気を消費してしまいますし、航続距離を伸ばすためにバッテリーを増設すると、その分重量が重くなってしまい積載量や航続距離に影響を与えてしまいます。
ちなみにエンジン式の大型トラックは1,200km以上の航続距離で、小型トラックでも700km前後を保てます。
そのため、中距離以上の輸送にEVトラックを使用する場合は、特に充電のコストや頻度を考慮しながら運用していく必要があります。
充電時間が長く業務に支障が出る可能性も
給油と比較して充電に時間がかかるため、充電のタイミングを間違うと業務に支障をきたす可能性もあり、注意の必要なポイントです。
トラックの給油は、最短5分もあれば完了します。一方、EVの場合は、自家用車向け充電器でも充電に24時間前後、V2Hを活用しても12時間程度かかります。(V2H:交流・直流変換機能を持つため効率的に充電可能)
営業開始前後に充電を始めると、業務を継続できません。
ただし、最近ではEVトラックなど大型車両向けの急速充電設備が開発され始めていて、1時間以内に充電が完了できる設備も実証実験の段階で実現しています。
EVトラックを導入するには、自社の敷地内に充電設備を設置し、夜間や営業時間外のタイミングで満充電させたり、輸送ルート上に急速充電設備があるか確認したりしておくことも重要になります。
使い方によっては劣化による修理交換コストを考慮する必要あり
バッテリーは過充電や充放電の繰り返しによって劣化していくため、早い段階でバッテリーや周辺機器の修理交換を行わなければいけない場合もあります。
EVトラックに限らずEVは、走行中のバッテリー温度上昇、急速充電の使い過ぎ、夏場の車体温度上昇などによってバッテリーの充電容量が減少する傾向があります。
ちなみに経年劣化の場合、突然走行不能になるわけではありません。あくまで充電容量の減少に伴い航続距離が少しずつ短くなっていくだけなので、5年、7年と走行し続けることは可能です。
EVトラックを購入する際は、メーカー保証の年数や走行可能距離などを確認しておくのも必要です。
ガソリン車やディーゼル車より費用が高い
EVトラックの価格は一般的なトラックより数100万円程度高く、充電設備を設置しようとするとさらに費用がかかります。費用負担を抑えたい場合は、補助金制度を活用したり普通充電器を選択したりしましょう。
普通充電器は1回の充電に24時間程度かかるものの、本体価格は25万円前後と比較的安価です。急速充電器の場合は本体価格のみで500万円前後なので、費用を抑えたい企業にとって悩むポイントと言えます。
補助金制度に関しては、「令和5年度環境対応車導入促進助成事業」にEVトラックも含まれており、30万円の補助金を交付してもらえる可能性があります。
また東京都の補助金事業「令和5年度EVバス・EVトラック等購入補助金」に申請し、審査が通過した場合は、EVトラックと同じ燃費水準のディーゼル車の車両価格を比較し、差額を補助金として交付してもらえます。
自治体によってはEVトラックに関する補助金制度を実施している場合があるので、管轄の自治体ホームページや窓口で確認してみましょう。
EVトラックの導入メリット
技術的課題もあるEVトラックですが、一方で導入メリットも複数存在します。それでは、運輸業などでEVトラックを導入するメリットについて1つずつ確認していきましょう。
排出ガスが出ないため自社の環境価値向上につながる
自社の環境価値や信頼性を向上できるのが、EVトラックのメリットです。
国土交通省の資料によると、2021年度の二酸化炭素排出量に関する割合は、運輸部門だけで17.4%を占めています。年間1億8,500万トンもの二酸化炭素が排出されており、環境への影響を考慮した経営も求められています。
そこでエンジン式からEVトラックへ切り替えれば、走行中の二酸化炭素排出量を抑えられるだけでなく、化石燃料の使用率減少で環境負荷の軽減にも貢献できます。
出典:国土交通省
無段階変速で走りやすくメンテナンスしやすい
EVトラックは無段階変速(CVT)なので、滑らかな加速が期待できます。また車体の部品点数が少なく、整備費用を抑えやすいといったメリットも得られます。
無段階変速とは、ギアではなくベルトや滑車によって回転数を変化させる仕組みのことです。ギアの場合は1速や2速など、段階的に回転数を切り替えます。一方で無段階変速は、ギアの切り替えがないためギアチェンジによる振動もありません。さらにギアチェンジの手間を省略でき、運転手の負担を軽減することが可能です。
また、EVトラックにはエンジンのシステムやエンジン周辺の冷却部品、排気システムなどがなく、エンジン車に対して部品点数が10分の1もしくは5分の1以下まで減っています。これにより、メンテナンスにかかる手間や部品の修理交換費用を抑えられます。
トラックの維持管理費用を抑えたい方や走行しやすさなどを重視している方にとっては、メリットの多い車両といえます。
エンジンと異なり静かに走行できる
静音性に関しても、エンジンより高い特徴があるので、騒音トラブルのリスクを抑えながら事業を展開できます。また騒音問題の解決につながれば、SDGsという点でもメリットを得られます。
大気汚染の改善や騒音対策は、SDGsの11番「住み続けられるまちづくりを」に関連した内容です。そのため静音性の高いEVトラックの導入は、環境や社会に配慮した経営の実行につながりますし、ステークホルダーからの信頼性向上も期待できます。(ステークホルダー:経営において利害関係のある組織や人、消費者や取引先なども含む)
EVトラックの導入が重要な理由
日本を含め世界各国では、環境や社会に関する対策やさまざまな規制を進めています。また企業の価値は、業績だけでなくESGを重視しているかどうかで変わる時代になってきています。
ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の略称で、それぞれが企業に求められています。例えば環境の項目に関しては、脱炭素化や生物の保護など環境に配慮した事業活動や、環境保護活動の推進によって評価されます。
また投資家は、企業のESGに関する取り組みを重視しており、環境や社会問題などの改善につながる事業を行なっている企業に価値や信頼性を見出すようになっています。
EVトラックの導入は環境問題の改善につながる事業活動なので、運輸業において検討の価値があり、また自社の信頼性も向上することでしょう。
EVトラックと自家消費型太陽光発電で脱炭素経営を加速!
EVトラックを活用して脱炭素経営を進めていこうと考えている場合は、自家消費型太陽光発電の同時設置を検討してみるのがおすすめです。
しかし、太陽光発電の導入経験がない企業の中には、設備導入のメリットについてよくわからないという企業も多いのではないでしょうか。
最後は、EVトラックと自家消費型太陽光発電のメリットについて詳しく解説します。
二酸化炭素排出量の大幅な削減と環境価値の向上
自家消費型太陽光発電を併用すれば、二酸化炭素排出量の大幅な削減による企業価値の向上が期待できます。
太陽光発電は、火力発電と異なり化石燃料を使用せず、なおかつ発電時に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しません。自家消費型とは、環境価値のある電力を自社の事業へ活用していく運用方式のことです。
つまり、火力発電由来の電力使用量を大幅に削減できるため、二酸化炭素排出量の削減に貢献できます。EVトラックを導入すれば、さらに二酸化炭素排出量を削減できるため、脱炭素経営をステークホルダーへアピールすることが可能です。
充電コストを削減もしくはゼロにできる
自家消費型太陽光発電で発電した電気は、自社の生産設備などへ供給できます。さらに、V2Hや充電器と接続すればEVトラックにも充電できるため、電気料金を削減することが可能です。
また自家消費型太陽光発電の発電量は、太陽光パネルの設置枚数によって変わります。
弊社和上ホールディングスの設置事例では、出力150kWの全量自家消費型太陽光発電で、年間300万円弱の電気料金削減額を達成したケースもあります。
EVトラックの充電費用だけでなく、自社の照明や生産設備などにかかる電気料金も削減できるので、ぜひお気軽にご相談ください。
非常時でもEVトラックへの充電や自社の設備へ給電できる
災害などによる停電時でもEVトラックや自社のオフィス、工場へ電力を供給できるのは、BCP対策という点でもメリットの大きなポイントです。
BCP対策とは、早期に事業復旧するための方針や対策に関する取り組みのことです。企業にとって停電対策は、リスクマネジメントおよび事業継続に重要な要素と言えます。
ガソリンやガス式の非常用発電機も停電対策につながりますが、燃料の管理や保管場所の確保など、手間とコストもかかります。
自家消費型太陽光発電の場合は燃料が不要ですし、停電時でも発電・給電することが可能です。また自社のオフィスや倉庫、EVトラックへ給電すれば、事業の早期復旧につながります。
さらに、晴れの日なら継続的に発電できる上、産業用蓄電池と連携すれば発電量の少ない時間帯でも自家消費できるようになります。
EVトラックは長期的に見て自社のメリットへつながる
EVトラックとは、車載バッテリーでモーター回転させるトラックのことです。エンジンがないためガソリンや軽油が不要で、走行時の二酸化炭素排出量を抑えられます。
また、自家消費型太陽光発電と併用すれば、電気料金負担を抑えながらEVトラックの充電が行なえます。
物流や運送業における環境経営について模索している方や、EVトラックの充電コストに悩んでいる方は、全量自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
弊社和上ホールディングスでは、お客様のご要望に関するヒアリングから全量自家消費型太陽光発電のご提案、専門スタッフによる設計から補助金制度の申請サポート、部材調達と施工およびアフターフォローまで一括サポートいたします。また専門の税理士が在籍しているので、税制優遇に関するサポートにも対応できます。
全量自家消費型太陽光発電の設置方法について少しでも気になる方は、お電話やWebフォームからお気軽にご相談ください。