電力データの活用が可能に!何ができるのか、ビジネスでの活用事例について解説

電力データの活用が可能に!何ができるのか、ビジネスでの活用事例について解説

2023年10月より、一部エリアの電力データが電気事業者以外の企業にも開放されるようになりました。電力データの活用は、自社サービスの発展や新たなサービス開発につながるので注目すべき内容です。

そこで今回は、電力データの活用に関する新制度の概要や特徴、ビジネスシーンにおけるメリットについて詳しく解説します。電力データの開放に関する情報を集めている方などは、参考にしてみてください。

電力データとは?

資源エネルギー庁の「電力データ活用による新たな付加価値創造」によると、電力データとは、スマートメーターで取得した電力使用量を含むデータの総称です。

スマートメーターは、従来のメーターと異なり通信機能が搭載されており、30分ごとに電力使用量を計測します。そのため検針員による計測が不要で、より詳細な電力需要を分析できるのが特長です。

なお、電力データの取得に必要なスマートメーターの設置工事は、2021年3月時点で85%程度(6,917万台)進んでいて、2024年度に完了予定とされています。

出典:内閣府ホームページ

電力データの活用に関する新しい制度

電力データとスマートメーターについて把握した後は、電力データ活用に関する新制度について確認していきましょう。

2023年10月から一部エリアで開放

2022年4月、改正電気事業法の施行によって電力データの使用制限が一部緩和されることになりました。実際に電力データの活用を行なえるようになったのは2023年10月からで、一部エリアから開放されています。

なお、2023年10月に開放されたエリアは、東京電力エリアと関西電力エリア、中部電力エリアの3エリアで、2023年12月に中国電力エリアと九州電力エリア、2024年から残り5エリアの東北電力エリア、北陸電力エリア、四国電力エリア、北海道電力エリア、沖縄電力エリアも開放されていく予定です。

これまで電力データは一般送配電事業者が保有管理していて、同事業者以外の企業側でデータの取得や活用などについては制限されていました。そのため、電力データを用いたサービス提供などが難しい状況でした。

今回の電気事業法改正による電力データの活用に関する制限緩和は、多くの企業にとってメリットのある内容で、脱炭素経営を進める上でも役立ちます。

詳細については、後半で紹介します。

審査に通過した企業は電力データの取得と活用が可能

電力データを取得するためには、まず所定の手続きを行ない、審査に通過する必要があります。

電力データは個人情報のひとつであり、データ活用の緩和といっても取得や使用に関して一定のルールや規制が課されています。

データ取得の流れは、以下のとおりです。

  1. 一般社団法人電力データ管理協会の会員登録手続きを行なう
  2. 審査に通過した場合は同協会の会員となる
  3. 電力データの取得が可能になる

統計データを活用する際は、20万円の年会費がかかります。また、個別の電力データを取得したい場合の年会費は50万円です。

なお統計データは、匿名化された自治体ごとの電気使用量をまとめた電力データになります。対して個別データは、文字どおり個別の詳細なデータを記録したもので、より細かく分析したい場合に役立ちます。

あくまで有償のサービスであり、事前に電力データ利用に必要な予算を確保しておくのが大切です。

活用可能なデータは需要家側が同意したケース

一般社団法人電力データ管理協会で提供されている電力データは、需要家側が同意したケースに限られています。需要家とは、電力やガスの供給を受けている個人や企業のことです。

電気使用量は30分ごとに記録されていて、前日のデータが翌日昼頃に順次開示されていく仕組みです。将来的には、リアルタイムでデータ提供可能な仕組みに変わっていく予定とされています。

少なくとも現時点では全世帯・企業の電力データを活用できるわけではないため、データ分析を行なう際に注意が必要です。

電力データに含まれる情報

電力データには、電気使用量のほかにも以下のような内容が含まれています。

  • 契約者の各種情報
  • 電気が使用されている建物の分類
  • 契約電力
  • 受給契約の有無
  • 発電設備の有無や設備容量

電気使用量以外にも詳細な情報を取得できるので、地域の電力需要に関する分析をはじめ、さまざまな事業に役立てられます。

電力データの活用で何ができる?

電力データの概要について把握した方の中には、事業へどのように役立てられるのかイメージできない方も多いかと思います。そこでここからは、電力データの活用で何ができるのかわかりやすく紹介します。

見守りサービスへ活用可能

電力データを活用すれば、見守りサービスを提供することが可能です。

現在の見守りサービスは、サービススタッフが実際に訪問したり宅配の際に安否確認したりする訪問型や、カメラなどの機器を設置して健康状態などを把握したりするタイプなどが代表的です。

一方、電力データを活用した見守りサービスなら、いつもと異なる電気使用量の変動を検知した際に家族へ通知するなど、カメラなどの機器設置やスタッフによる訪問といった手間をかけることなくシステムを構築することができるようになります。

出典:内閣府ホームページ

災害時の避難情報や防災計画のシステム開発に役立つ

電力データは、防災計画を作成している自治体や関連企業にとってもメリットがあります。

災害時は、スーパーやコンビニ、医療機関などあらゆる施設で停電が起きることが想定されます。しかし現状では、どこで電気設備が稼働しているか瞬時に確認することができません。

そこで商業施設や医療機関、住宅の電力データを一括管理すれば、災害時にどこで施設が稼働しているかどうかすぐに把握でき、医療機関などへ情報提供することが可能になります。

出典:内閣府ホームページ

各地域の電力使用量を防犯対策の強化策に活用可能

地域の防犯対策強化に乗り出す際は、電力データも活用してみましょう。

各住宅や事務所、工場などの電力データを取得して地図と照らし合わせれば、どの時間帯にどこで人が少なくなるのか、どこに空き家があるのか、といった分析を行なえます。

電力データを活用した分析によって、人の目が届かない場所へ防犯設備を設置したり警察の巡回を増やしてもらったりすれば、地域の治安改善につながります。

このように電力データは、防犯対策を行なう上でも役立つ情報です。

出典:内閣府ホームページ

CO2排出量の分析が可能

電力データを活用すれば二酸化炭素排出量の分析も可能なので、脱炭素経営を進めていく上でも役立つ情報と言えます。

例えば、サプライチェーン全体の電力データを取得すれば、自社だけでなく取引先の企業で排出されている二酸化炭素を計測でき、より効率的に脱炭素化を進められます。

また、新たに生産や流通拠点を検討する際、候補地周辺の企業で排出されている二酸化炭素排出量を電力データから分析できます。つまり、脱炭素経営に適した拠点を選べるようになるので、企業価値アップという点でも重要なポイントです。

出典:内閣府ホームページ

電力データの活用事例

建設業界向けのソリューションを提供している株式会社リバスタは、電力データ管理協会へ参画し、建設業界における二酸化炭素排出量の削減へ向けたサービス提供を検討しています。

各建設現場で消費されている電気使用量から二酸化炭素排出量を計算するには、各検針票を集計しなければいけません。しかし、それには膨大な作業負担が発生してしまいます。

そこで株式会社リバスタは、電力データを取得することで、重機などの使用・産業廃棄物の輸送による二酸化炭素排出量を簡単に計測できるサービス提供を検討しています。

ほかにも太陽光発電企業のヒラソル・エナジー株式会社は、電力データを活用して太陽光発電所の買取やリパワリングなどの効率化につながるツール開発を検討しています。

太陽光発電事業において電力データ関連サービスは役立つ!

前段でも少し触れたように、電力データは太陽光発電事業でも役立つ情報です。最後は、太陽光発電事業と電力データ関連サービスの組み合わせによるメリットを紹介します。

太陽光発電所導入および脱炭素経営に役立つ

電力データを活用したサービスの中には、ZeroCa(ゼロカ)のような、二酸化炭素排出量の見える化といった脱炭素化に必要な情報を簡単に確認できるサービスも出てきています。

自社の二酸化炭素排出量や再生可能エネルギーの導入状況を電力データで見える化してもらえるサービスが展開されれば、どの程度二酸化炭素を排出すればいいのか、出力何kWの太陽光発電所を追加で導入すれば目標値まで電力をカバーしたり二酸化炭素を排出したりできるのか、などといった指標を簡単に示すことが可能になります。

そのため、太陽光発電事業を展開する企業は、電力データの活用のほか、電力データ関連サービスについても調べるのが大切です。

太陽光発電所の性能評価の精度を高められる

電力データを活用すれば、太陽光発電所のリパワリングを実施する際に性能評価が行なえます。

リパワリングとは、既に稼働している太陽光発電所の中で劣化している機器や部品を新しい機器と交換し、性能を向上させる取り組みのことです。太陽光パネルやパワーコンディショナなどは徐々に劣化するため、本来の性能を発揮できず収益率や電気料金削減効果の低下につながります。そのため、リパワリングは太陽光発電事業において重要です。

電力データによる過去の実績値があれば、太陽光発電所の劣化状況をスムーズに分析できるだけでなく、メンテナンスと組み合わせれば高い精度の性能評価を期待できます。

電力データは脱炭素経営においてもメリットが多い

電力データの有償利用は、2023年10月から3エリアで開放されました。また、2024年にかけて残り7エリアも開放される予定です。自治体の防災・防犯計画といった街づくりのほか、企業の脱炭素経営にも役立てられる可能性があります。

脱炭素経営に向けて再生可能エネルギーの設置を検討している方や、電力データの有償利用解禁から自社でも何か取り組みたいという方は、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

とくとくファーム0は、非FIT型太陽光発電の導入支援や太陽光発電用地としての売却に関するサポートなどを行っております。また、無料の個別セミナーでは、非FITの特徴や太陽光発電の運営やメリット・デメリット、更に脱炭素経営の基礎まで丁寧にご説明いたします。

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