太陽光発電は、他の発電設備と同様に経年劣化していき、設置から10年~15年程度で修理・交換が必要になりますが、寿命がまだ来ていなくても発電効率は徐々に下がっていきます。そこで昨今注目されているのが、リパワリングという技術です。太陽光発電の売電収益を伸ばしたいときや発電量を回復させたい場合に役立ちます。今回は、太陽光発電におけるリパワリングの意味や特徴、利用メリットや注意点について詳しくご紹介します。太陽光発電の設備を見直す必要がある方や太陽光発電の経年劣化で発電量低下に悩む方は、参考にしてみてください。
リパワリングとは?
リパワリングは、経年劣化した設備を新しい設備と入れ替えたり、追加のモジュールを取り付けたりしながら出力の増強を図る専門用語です。
太陽光発電において「リパワリング」とは、太陽光パネルやパワーコンディショナーなどを新品と交換して、発電量の増加を図ることを指します。耐用年数がまだ過ぎていなくても、発電効率が落ちてきたと感じたときに実施することで、発電量の増加をねらえます。
メンテナンスやリプレースとの違い
よく混同される、メンテナンス・リプレースとリパワリングの違いを解説します。
メンテナンスとの違い
太陽光発電におけるメンテナンスは、保守点検のことです。たとえば太陽光パネルの電圧や電気抵抗の点検、パワーコンディショナーを始めとした周辺機器の機械点検や電気点検、架台や部品の目視点検などを専門業者が行います。
一般的にメンテナンスは設備の異常や故障を発見するためのものなので、発電量の増加を目的として部品を交換するものではありません。両者の関係は、メンテナンスの結果、発電量の低下が発覚し、リパワリングを検討・依頼するというイメージです。
リプレース(交換)との違い
リプレース(交換)は、一般的に太陽光発電所全体を新しい設備、機器へ交換することを指します。
リパワリングと似た用語ですが、交換対象の設備が異なります。リパワリングとは、経年劣化した設備や部品、機器などを、「発電量の増加に必要なところだけ」最新の機器へ交換し、発電量を増やす行動のことです。
一方、リプレースは設備を建て直すなどして、丸々交換してしまうことを指すため、リパワリングよりも大規模な改修工事となります。
リパワリングが重要な理由
ここからはなぜ太陽光発電を運用する際にリパワリングが重要なのか、早めに行うのが大切なのか、という点を確認していきます。
10年から15年程度で劣化してしまうため
太陽光発電は、他の発電設備と同様に経年劣化していき、いずれ故障してしまいます。
太陽光パネルの寿命は、一般的に20年~30年程度とされています。寿命が来ていなくても、配線の腐食や半導体の劣化、ガラス部分の変色や破損などによって、徐々に発電量は低下します。
パワーコンディショナーの寿命は、太陽光パネルよりもさらに短く、10年~15年程度です。経年劣化していくと、直流電力を交流電力へ変換するための機能が低下していきます。発電効率が低下してしまうと、売電収入の低下や、自家消費に使用する電力量も低下してしまいます。
このためこうした太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの劣化によって発電量が確保できなくなってきたときに、リパワリングが必要となるのです。
向上し続ける半導体技術を取り入れられるため
太陽光パネルやパワーコンディショナー、遠隔監視装置などに組み込まれている半導体技術は、年々向上し続けています。
太陽光パネルの太陽電池では、技術向上によって発電効率20.0%を超えているタイプも出てきています。制御機能や熱暴走防止の送風機内蔵、サイズの小型化など、さまざまな機能が向上したパワーコンディショナーや、オプティマイザと呼ばれる発電量などのモニタリング機能が付いたパワーコンディショナーもあります。
発電所を実装した当初と今では、技術の差によってねらえる発電量にも大きく差が生じます。常により多くの発電量をねらっていきたいなら、リパワリングで新たな技術を取り入れるのも一つの手です。
FIT期間中なら売電収益増加も見込める
リパワリングは固定買取期間中でも実施でき、リプレースよりスピーディに交換作業を進められるため、FIT期間中でも劣化で下がっていた発電量の増加をねらい、売電収入の回復を目指せる可能性があります。
リパワリングのタイミングは設置から10年程度が目安
リパワリングは発電量の低下を感じてきたら、いつでも導入の余地があります。メンテナンスの結果を確認したタイミングや、売電収入に変化を感じたタイミングなどがよい機会です。
とくにパワーコンディショナーは劣化しやすいため、設置から10年程度(パワコンの寿命)を目安に更新すべきかどうか検討してみてください。FIT制度の発足当初(2012年頃)に太陽光発電所を導入している企業は、この機会にリパワリングを検討してみましょう。
太陽光発電でリパワリングを行うメリット
ここからは、太陽光発電を長期的に運用していく上で、リパワリングを行うメリットをわかりやすく紹介します。
発電効率を改善できる
設備導入時より性能のアップした太陽光パネルやパワーコンディショナーへ交換することで、発電効率を改善できます。
太陽光パネルなど各種製品の性能や耐久性などは、5年や10年で向上します。とくにパワーコンディショナーは、モニタリング機能や冷却機能内蔵など、新たな機能が追加されたタイプも開発・販売されています。
リパワリングによって新製品を導入した場合は、設備導入時を上回る発電量の確保をはじめ、設備の小型化、耐久性の向上、有効電力の出力向上などといったメリットを得られます。たとえば、年間約1%ずつ発電効率が低下するなら、設置から10年目に交換することで10%以上発電効率を改善できる可能性もあると考えると、決して小さな数字ではありません。
ランニングコストを削減できる
リパワリングを行うと、ランニングコストを削減することが可能です。こまめに新品の部品に交換することで、大規模な修理が必要になることが減ったり、発電できない期間が増えたりするのを防ぎ、結果としてランニングコストを下げられる可能性があります。
また、出力の高い太陽光パネルへ交換すれば、パネル枚数を抑えながら合計出力を保つことが可能です。パネル枚数を抑えられれば、太陽光パネルの洗浄や点検費用が軽減できる場合もあります。
経年劣化による事故や火災などのリスクを抑えられる
リパワリングは、安全面でもメリットのある考え方です。経年劣化によって太陽光パネル内でショートしたり配線の被覆が破れたりしてしまうと、火災や漏電のリスクをまねいてしまいます。
メンテナンスとリパワリングを定期的に行っておけば、劣化した箇所を見つけられますし、故障リスクの高い状態で運用し続けずに済みます。太陽光発電の事故リスクを抑えるには、定期的なメンテナンスとリパワリングも重要です。
収益アップにつながる
リパワリングは、売電収益を伸ばす上でもメリットの大きな方法です。
たとえば、設置から10年程度経過した低圧太陽光発電所をリパワリングした場合、年間で20~40万円程度売電収益を伸ばせる可能性があります。また、高圧太陽光発電所のリパワリングでは、年間200万円~収益を向上させることも可能です。
とくに発電量や売電収益の低下で悩んでいる場合は、太陽光パネルやパワーコンディショナーなどのリパワリングを検討してみるのが重要です。
リパワリングの注意点
続いては、リパワリングを検討する際に注意しておくべきポイントを3つ紹介します。
交換の費用がかかる
各種機械の購入や交換には、それぞれまとまった費用が発生します。リパワリングは、太陽光発電の施工会社や販売店へ相談したり、リパワリングやメンテナンスを取り扱っている業者へ依頼したりしますが、いずれも部材や工事費などが必要です。産業用太陽光発電であれば、リパワリングの規模によっては100万円単位で予算が必要となる可能性もあります。
設備の規模や、リパワリングの内容によっても費用は大きく異なるため、正確な金額は各業者に見積もりを依頼して確認してください。
収益率の向上は固定買取価格の状況によっても変わる
リパワリングでどの程度収益が向上するかは、いつFIT認定を受けたかによっても変わります。
リパワリングによる投資効果は、固定買取価格の単価によって左右されます。FIT期間中は太陽光パネルの出力(発電量の上限)を増やすことはできません。あくまでもパワーコンディショナーの発電効率(電力の変換効率)を改善するにとどまるため、増加する収益の数字は、単価が高ければ高いほどよくなります。
2025年から高い固定買取価格で太陽光発電投資を始めるなら、中古太陽光発電を購入するのがおすすめです。弊社とくとくファームでは、2012年や2013年など、高い固定買取価格でFIT認定を受けた中古太陽光発電物件を多数掲載しています。
一定要件を満たせばFIT期間中も太陽光パネルの出力更新を伴う交換は可能!
FIT期間中における太陽光パネルの出力更新は、2024年の改正再エネ特措法によって規制緩和されています。そのため、固定買取価格の低下や規制などが心配な方も、リパワリングを検討しやすい環境へ変わりました。
従来の規制では、太陽光パネルを更新したり、増設したりしたとき、設備全体の固定買取価格を最新の単価へ変更する必要がありました。たとえば、2012年にFIT認定を受けた設備で、2020年に増設を行った場合、2020年度の固定買取価格へ変更されてしまうということです。
固定買取価格は年々下落しているため、新しい固定価格に更新されてしまうと、いくら発電効率が上がっても意味がありませんでした。
2024年4月以降は、更新・増設した分の太陽光パネルのみに最新の固定買取価格が適用される仕組みへ変わったため、収益が下がる可能性も減っています。つまり2025年に太陽光パネル100kW分を更新した場合、更新分のパネルのみ2025年度の固定買取価格へ変更されるということです。
設備の状態によっては、一部更新することで発電効率がよくなる可能性があり、収益低下を懸念していた方にとっても、リパワリングは一考の価値があるといえるでしょう。
リパワリングの際に見直しておきたい周辺設備
リパワリングを行う際は、太陽光パネルやパワーコンディショナーの他にも周辺設備や機器の更新も必要ないかどうか、合わせて確認しましょう。
たとえば、架台やフェンスの腐食、配線類の被覆や接続部などといった状態を確認しておくのがおすすめです。一度に修理・交換できれば工事費用をおさえられます。
太陽光発電設備はメンテナンスフリーではありませんので、メンテナンス業者と契約し、定期的に部品や機器、敷地内の状態を確認してもらうのが大切です。
リパワリングの流れ
リパワリングの期間については設備の規模や状態によって異なります。低圧の太陽光発電所であれば8日前後で終わることもあります。
交換工事そのものは数日で完了する場合はあるものの、設備機器の調達に数ヶ月かかることもあるため、早めにリパワリングを検討することが大切です。ここからは、リパワリングを実施するまでの流れについて確認していきます。
太陽光発電所の状態を調査
まずは、リパワリングに対応している施工業者へ相談し、太陽光発電所の状態などについて調査してもらう必要があります。
太陽光発電所が設置されている土地の環境、発電量に関する情報、FIT認定を受けた時期、図面、過去のエラー状況などといった、さまざまな情報から設備の状態を判断してもらいましょう。
配線図などの図面データなども必要とされるため、各資料を紛失しないよう丁寧に保管しておくことが大切です。
リパワリングの必要な機器の選定
設備の状態を分析し、リパワリングにより発電量の増加が見込まれたら、機器の選定作業に入ります。
なるべく互換性のある型番を優先するのがポイントです。太陽光パネルの形状や厚さによっては、これまで使用していた架台の金具で固定できない場合もあります。また、現在使用している太陽光パネルや周辺機器と連携できないパワーコンディショナーを選んでしまうと、他の機器も交換しなければならず、費用がかさむ可能性があります。
発注後に設備変更申請を行う
発注後は、設備変更申請の手続きを進めていきます。FIT制度の認定を受けていて、かつ固定買取期間中の場合は、太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの交換、増設などの際に申請する必要があります。
中でも設備変更申請は、発電事業に大きな変化を与える工事の際に必要な手続きです。出力50kW未満の小規模な太陽光発電所を所有している場合は、再生可能エネルギー電子申請システムからオンラインで手続きを行うことが可能です。
出力50kW以上の太陽光発電所を所有しているときは、変更認定申請書をはじめとした必要書類を用意した上で、管轄の経済産業局へ提出します。一般的には、リパワリングの施工業者側で手続きをサポートすることが多いですが、手続きも含めて依頼できるかどうかもあわせて確認しましょう。
リパワリング工事を実施
手続きが無事終われば、いよいよ工事です。雨や雪の多い時期は、電気工事の際に感電リスクが生じるため、作業日数に影響を与える可能性もあります。交換工事は、なるべく晴れの多い時期に実施できるよう、スケジュールを調整しましょう。
リパワリング工事後は系統連系を行い、正常に稼働するかどうか確認してから引き渡しという流れです(系統連系:電力系統との接続)。
O&Mサービスではリパワリング以外もサポート
リパワリングを実施したい場合は、O&Mサービスから比較検討するのが大切です。O&Mサービスは、太陽光発電所の運用管理から保守点検まで幅広くサポートしてくれます。リパワリング以外もサポートしてもらえるため、太陽光発電事業を継続する上でメリットの大きなサービスです。それでは、O&Mサービスの強みを確認していきましょう。
遠隔監視で発電量などを常時監視してくれる
遠隔監視で設備を常時監視してくれるのは、O&Mサービスを利用するメリットのひとつです。
遠隔監視とは、太陽光発電所に遠隔監視システムを設置し、O&Mサービスの事務所から遠隔で発電量、その他設備の状態を常時監視してもらえるサービスのことです。また、緊急時には、現地へ駆けつけて点検や修理交換を行ってもらえます。
パワーコンディショナーのエラー、発電量の低下などは、いつ発生するかわかりません。遠隔監視サービスがあれば、早期に異常を検知してもらえるほか、設備の点検や修理まで対応してもらえます。
長時間の発電停止、発電量低下を避けるためには、O&Mサービスの遠隔監視も欠かせません。
定期点検と敷地内の清掃を実施してもらえる
O&Mサービスと契約した場合は、定期点検や敷地内管理を行ってもらえます。
太陽光発電所の点検は、低圧設備で4年に1回以上、高圧設備で年間2回以上必要とされています。また、太陽光パネルやパワーコンディショナーについては、半年に1回以上の点検が必要です。
O&Mサービスの定期点検へ加入していれば、都度専門業者へ相談しなくとも実施してもらえるため、点検し忘れといったリスクを回避できます。また、点検の際は太陽光パネルの洗浄、敷地内の清掃、除草作業も行われるため、敷地内管理に関する負担を軽減することが可能です。
防犯や防災に関する提案やサポートも受けられる
O&Mサービスによっては、防犯や防災に関する提案、サポートを受けられる場合があります。
日本は地震や台風といった災害の多い環境といえます。太陽光発電所はさまざまな災害の影響を受けやすいため、あらかじめ災害対策に取り組んでおく必要があります。また、被災した場合に備えて、早期に復旧するための対応策を検討することが大切です。
さらに、太陽光パネルや配線ケーブルは盗難されやすいため、破壊行為や盗難に関する対策も講じなければなりません。実績豊富なO&Mサービスへ相談すれば、台風や地震対策、被災後の復旧作業、盗難対策を含めて総合的にサポートしてもらうことが可能です。
リパワリングで設備不良防止や売電収益の改善を目指そう!
リパワリングは、新品の太陽光パネルやパワーコンディショナーへ交換し、劣化による発電量や発電効率低下の改善を図る考え方・行動を指しています。とくに収益率の改善を見込めるのは、2012年や2013年など、高い固定買取価格でFIT認定を受けた設備でしょう。
太陽光発電投資を検討している方や太陽光発電の設置から10年程度経過している方は、今回の記事を参考にリパワリングや中古太陽光発電を検討・調べてみてはいかがでしょうか。
O&Mサービスのとくとくサービスは、産業用太陽光発電の運用管理から保守点検に対応しています。太陽光パネルの目視点検や電気点検、周辺機器や架台の機会点検といった定期点検のほか、遠隔監視による発電量や設備状態のチェック、緊急時の駆けつけ対応までサポートいたします。
さらに、リパワリングについてもご提案可能で、発電量低下などでお悩みの方にも検討しやすいサービスです。
リパワリングや各サービスについて詳しくお知りになりたい方は、メールやお電話からお気軽にご相談ください。