CO2排出係数とは何?計算方法や活用の仕方についてもわかりやすく解説

CO2排出係数とは何?計算方法や活用の仕方についてもわかりやすく解説

企業にとってCO2の排出量は、企業価値や信頼性にかかわる要素です。また、自社の価値を高めていくには、CO2排出係数の意味や活用法についても理解しておく必要があります。

そこで今回は、CO2排出係数の意味や計算方法、活用の仕方について詳しく解説します。脱炭素経営に向けて環境関連の制度や情報を吸収したい方などは、参考にしてみてください。

CO2排出係数とは

CO2排出係数とは、エネルギーの使用に伴う二酸化炭素(CO2)の排出量のことです。

一般的には、電力会社で電気を作る・供給する際にどれだけCO2が排出されているかを示した数値を指しています。つまり、1kWhあたりの電力供給量に対するCO2排出量をわかりやすくしたものが、CO2排出係数です。

発電や電力供給の際にCO2排出量が少なければ、その分CO2排出係数も低い数値で示されます。

電気事業者のCO2排出係数一覧

環境省では、小売電気事業者と一般送配電事業者のCO2排出係数を毎年公開しています。

小売電気事業者とは、電気料金プランの設定や販売などを行なっている事業者のことです。一方の一般送配電事業者は、発電事業者から送電された電力を管理し、送配電網(送配電設備)を通して消費者へ電力を供給する事業者を指します。

以下に、一般送配電事業者のCO2排出係数を紹介します。

一般送配電事業者 基礎排出係数(t-CO2/kWh) 調整後排出係数(t-CO2/kWh)
北海道電力ネットワーク(株) 0.000438 0.000438
東北電力ネットワーク(株) 0.000438 0.000438
東京電力パワーグリッド(株) 0.000438 0.000438
中部電力パワーグリッド(株) 0.000438 0.000438
北陸電力送配電(株) 0.000438 0.000438
関西電力送配電(株) 0.000438 0.000438
中国電力ネットワーク(株) 0.000438 0.000438
四国電力送配電(株) 0.000438 0.000438
九州電力送配電(株) 0.000438 0.000438
沖縄電力(株) 0.000709 0.000672

続いて、小売電気事業者のCO2排出係数をいくつか紹介します。

小売電気事業者 基礎排出係数(t-CO2/kWh) 調整後排出係数(t-CO2/kWh)
(株)Looop 0.000164 メニューA:0.000000
メニューB:0.000217
メニューC:0.000282
メニューD:0.000304
メニューE(残差): 0.000562
(参考値)事業者全体: 0.000482
イーレックス(株) 0.000483 0.000441
(株)エネアーク関東 0.000458 0.000000
パーパススマートパワー(株) 0.000439 0.000383
シン・エナジー(株) 0.000481 メニューA:0.000000
メニューB(残差):0.000479
(参考値)事業者全体: 0.000435

出典:環境省ホームページ

一般送配電事業者のCO2排出係数は、沖縄電力以外どれも同じ数値で示されています。しかし小売電気事業者の場合では、各事業者によって数値に大きな違いがあります。

そのため、小売電気事業者を切り替えることで自社のCO2排出量を大幅に抑えられる可能性があり、また注目すべきポイントの1つでもあります。

なお、基礎排出係数と調整後排出係数の違いについては、次の項目で紹介します。

CO2排出係数の計算方法

CO2排出係数の計算方法は、基礎排出係数と調整後排出係数の2種類に分かれています。

続いては、CO2排出係数の計算方法と各方法の違いについて詳しく解説します。

基礎排出係数の計算方法

基礎排出係数とは、電力会社の発電設備から排出されているCO2を、同社で販売されている電力量で割った数値のことです。

数値は、「基礎二酸化炭素排出量(t-CO2)÷販売電力量(kWh)」という計算式で求めることができます。つまり基礎排出係数を確認すれば、電力会社の平均的なCO2排出量の水準を把握することが可能だということです。

調整後排出係数の計算方法

調整後排出係数は、CO2排出量を抑えるための施策や、CO2排出量ゼロもしくは極めて少ない再生可能エネルギー発電設備といった要素を加えた指標で、基礎排出係数より正確な情報が反映されています。

数値は、「(調整二酸化炭素排出量-国内および海外認証排出削減量など)÷ 販売電力量」という計算式で求めることができます。また調整二酸化炭素排出量は、前段で紹介した基礎二酸化炭素排出量に「固定価格買取と非FIT非化石電源調達によって調整された電力量×全国平均係数」を加えた数値です。

環境負荷軽減に向けた対策を行なっている電力会社から比較したい場合や、より正確な数値から電力会社を検討したい場合は、調整後排出係数を確認してみましょう。

CO2排出係数が企業活動に重要な理由

CO2排出係数の概要を理解した方の中には、「結局電力会社で用いられている数値であって、自社の脱炭素経営に重要な数値ではないのではないか?」といった疑問を抱いている方も多いかと思います。

そこでここからは、CO2排出係数の活用が企業活動に重要な理由を解説します。

CO2削減策を決める際に必要な要素

前半でも少し触れたように、自社のCO2排出量を削減するためには、節電や省エネのほか、電力会社から供給された電力に含まれているCO2に注目する必要があります。

なぜなら、CO2排出係数の高い電力を使用すれば、自社のCO2排出量も増加してしまうことになるからです。

まずは、「自社の電力消費量(kWh)×契約中の電力会社から公開されているCO2排出係数」という計算を行ない、どの程度の負担につながっているか把握しておきましょう。もし環境負荷の大きな状況であれば、環境省から公開されている資料からCO2排出係数の小さな電力会社を選ぶことで、CO2排出量を少しでも削減することができます。

温対法の排出量報告義務化で活用される

「地球温暖化対策の推進に関する法律」(温対法)の対象事業者として定められている場合は、事業活動によって排出されたCO2を含む温室効果ガスの量を国へ報告しなければいけません。

つまり、設備から排出されるCO2のほかに、電力使用量に含まれるCO2排出量も算出する必要があるため、CO2排出係数について理解しておくことが大切です。また、万が一法律に沿って報告書を作成しなかったり虚偽のデータを提出したりすると罰則を受けてしまうので、正確なデータを算出しましょう。

省エネ法のエネルギー使用状況報告で必要

「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」(省エネ法)では、一定以上のエネルギーを使用している事業者に対して、エネルギーの使用量や状況に関する報告が義務付けられています。

省エネ法の対象とされているエネルギーは、燃料、熱、電気、非化石エネルギーの4種類で、再生可能エネルギーへの転換や具体的な取り組みについても報告が求められています。

そのため義務対象の企業は、CO2排出係数を含む複数の指標や数値を用いて、事業活動に伴うエネルギー使用量や使用状況をまとめなければいけません。

また、省エネ設備の導入や再生可能エネルギー発電設備への転換といった対策も必要なので、さまざまな観点から脱炭素経営を進めていきましょう。

CO2排出量の削減方法

ここからは、事業活動におけるCO2排出量の削減方法について解説します。

自社の事業活動を見直す

CO2は多くの場面で排出されているので、あらゆる方法を用いながら自社の事業活動を見直しましょう。

コストや時間をかけずに取り組める方法としては、全社を挙げた節電活動があります。

以下に節電方法をいくつか紹介します。

  • 空調の暖房設定を28℃、冷房を20℃に設定
  • 照明設備をLEDに取り替える
  • 人感センサー式照明で消費電力を削減
  • PCの省エネモードを活用
  • 業務の効率化で残業を減らし、消費電力量を削減する

節電のほかには、自社の設備を省エネ性能の高い設備へ切り替えたり、生産ラインの見直しを図ったりなどしながらCO2排出量を減らす方法もあります。

まずは節電からスタートし、少しずつCO2削減効果の大きな省エネ設備の導入や建物全体の省エネ化などに取り組んでみましょう。

サプライチェーン排出量の観点から対策

CO2排出量を削減して脱炭素経営を進めていくには、サプライチェーン排出量の観点から対策を立てていくことも大切です。

サプライチェーン排出量は、原材料の調達や物流、製造、販売、製品の廃棄などさまざまな過程で排出される温室効果ガスを指します。

つまり自社単体ではなく、取引先や関連企業、販売された製品・サービスの廃棄に伴う温室効果ガスまで計測・分析しているのが、サプライチェーン排出量の特徴です。

また、サプライチェーン排出量は3種類のカテゴリーに分かれています。

スコープ1 自社の事業活動、エネルギー使用によって排出される温室効果ガス
スコープ2 電力・ガス会社から供給される電気、ガスを作り出す際に排出される温室効果ガス
スコープ3 ・自社の事業活動、エネルギー使用によって排出される温室効果ガス
・自社から供給された製品・サービスの消費や廃棄によって排出される温室効果ガス

スコープ1は、自社の発電設備や焼却炉などといった設備から排出される温室効果ガスを指します。一方、スコープ2とは、社外から購入した電気やガスの供給時に排出される温室効果ガスのことです。

例えば、再生可能エネルギーを活用して原材料の供給を行なっている企業や、EVによる配送を展開している企業と取引した場合、スコープ3のCO2などを削減することが可能になります。

サプライチェーン排出量の基準に沿って分析すれば、より正確にCO2排出量を計測できるだけでなく、どの部門から対策すればいいのかも把握することができます。

再生可能エネルギーによる自家消費

CO2排出量を大幅に削減したい時は、再生可能エネルギーを導入してみるのがおすすめです。

太陽光発電や風力発電、水力発電などの再生可能エネルギーは、火力発電と異なり化石燃料を燃焼させずに発電できます。つまり、発電の際にCO2を排出しないのが再生可能エネルギーの大きなメリットです。

また、再生可能エネルギー発電設備で発電された電気を自家消費すれば、電力会社から供給される火力発電由来の電力使用量を削減できるため、電気料金とCO2排出量の両方を削減できます。

CO2削減策に非FIT型太陽光発電が特におすすめの理由

最後は、CO2の排出量を削減する上で非FIT型太陽光発電がおすすめの理由を紹介します。

ほかの再生可能エネルギーより初期費用を抑えられる

太陽光発電が多くの企業にとって導入しやすい発電設備だと言える理由は、ほかの再生可能エネルギーより初期費用を抑えられるためです。

経済産業省の「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」によると、太陽光発電の初期費用は、1kWあたり23.6万円です。

一方、同じく1kWあたりの初期費用をほかの再生エネルギーと比較した場合、陸上風力発電は41.4万円程度、地熱発電は168万円程度、中小水力発電だと225万円程度かかります。

このように、同じ再生可能エネルギーであっても、初期費用負担はそれぞれで大幅に異なります。

そのため、設備費用を抑えながら脱炭素経営へシフトしていきたい企業は、特に太陽光発電から検討してみるのがいいでしょう。

出典:経済産業省ウェブサイト

さまざまな場所や敷地面積に合わせて設置可能

太陽光発電の大きな特長は、設計・設置する場所やスペースをほとんど問わない点です。

風力発電の場合は風の強い場所でなければ設置する意味がなく、また稼働もできません。地熱発電も、地下に高温の熱水や蒸気がない環境では設置しても発電できません。そのため、設備の設置場所が限定されています。

一方で太陽光発電所は、太陽光パネルの設置枚数で発電量だけでなく設備規模を調整できるほか、設置角度や向きも変えられるので、土地や建物の形状に合わせて設計することが可能です。

さらに、日光の降り注ぐ場所であれば発電できるため、建物の屋根や地上、水上など、ほかの再生可能エネルギーよりも設置場所の自由度が高く、発電しやすい設備だと言えます。

FIT制度の影響を受けずに稼働可能

太陽光発電を導入する際、FIT制度の影響を受けない非FIT型太陽光発電であれば、柔軟に運用することが可能です。

FIT制度は、再生可能エネルギーから発電された電気を一定期間電力会社で買い取る義務を定めた国の制度です。買取価格は固定なので、年間収支や初期費用回収期間を予測しやすいといったメリットもあります。

しかし、FIT制度の固定買取価格は毎年下落傾向で更新されており、売電収入を伸ばしにくいといった課題もあります。また、以前よりも太陽光発電の初期費用が下落しているので、固定買取期間に費用回収できるものの、収益という点でデメリットの大きなポイントです。

そこで、FIT認定を受けない非FIT型太陽光発電として稼働すれば、目的に合わせて自家消費や売電を自由に選択できます。また電力需要の高い時間帯に売電した場合では、その分収益を伸ばすことが可能です。

環境価値の売却が可能

非FIT型太陽光発電の場合は、FIT型と異なり電力に付帯される環境価値を売却できます。

再生可能エネルギー由来の電力はCO2を排出していないので、火力発電と異なる価値を持っています。また、電力と別に環境価値が付帯されています。

しかし、FIT型太陽光発電の電力買取コストは、電力会社だけでなく再エネ賦課金として国民も負担しています。環境価値が電力買取コストという形で消費されているので、グリーン電力としての価値を高めにくい状況です。

非FIT型太陽光発電で発電した電力であれば、売電や自家消費といった電力としての価値を活用できるほか、環境価値をJクレジットとして売却できます。

Jクレジットは、再生可能エネルギーの発電によって削減されたCO2を証書として残したもので、CO2削減実績として活用することができます。

自社の企業価値を高めたい、再生可能エネルギーをより効率的に活用したいといった場合は、非FIT型太陽光発電を検討してみることをおすすめします。

CO2排出係数を活用しながらCO2削減策を策定していこう

CO2排出係数は、一般的に電力会社で電気を作る・供給する際にどれだけCO2が排出されているかを示した数値のことです。また、CO2排出係数の小さな電力会社を選択すれば、間接的なCO2排出量を削減することが可能になります。

脱炭素経営に向けてさまざまな指標を活用したい方や、企業価値向上のために省エネ・創エネ対策を進めていきたい方は、今回の記事を参考にしながら、CO2排出係数を活用したり再生可能エネルギーの導入を検討してみたりしてみてはいかがでしょうか?

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