ソーラーシェアリングに失敗しないためには?デメリットや補助金も解説

ソーラーシェアリングに失敗しないためには?デメリットや補助金も解説

太陽光発電と営農を並行できるとして、一部農家ではソーラーシェアリングが導入されています。収益面や作業の効率面など、導入メリットの多いソーラーシェアリングですが、費用が高いといったデメリットに注意が必要です。本記事では、ソーラーシェアリングのメリット・デメリットから適した作物、補助金などについて、網羅的に解説していきます。

>ソーラーシェアリングとは?

ソーラーシェアリングは別名「農業型太陽光発電」とも称され、農地にソーラーパネルを設置し、農業と太陽光発電を並行して行う仕組みのことを言います。農林水産省が2013年に通達した「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」により、ソーラーシェアリングは注目を集めるようになりました。
一見すると、地上に設置する野立て太陽光発電と似通っていますが、ソーラーシェアリングでは2m以上の支柱を立て、その上にソーラーパネルを設置します。ソーラーパネルの下部にはスペースができるため、そこで農業を並行することが可能です。また、ソーラーパネルと地上の間には十分な高さがあり、トラクターなどの農機具も利用できます。
本来、農地に野立て太陽光発電を設置する際は、用途を変更するための農地転用が必要です。一方、ソーラーシェアリングは一定条件を満たせば、農地転用の手続きは要りません。新しく太陽光発電用の土地を用意する手間もかからないまま、増収に繋げられます。

ソーラーシェアリングは一時転用許可を受けることが条件

ソーラーシェアリングを運用するためには、農地の一時転用手続きが必要ですが、許可を受けるには複数の厳しい条件が設けられています。下記は、一時転用の条件を一部簡易的に抜粋したものです。

  • 営農の適切な継続を前提とし、支柱を立てること
  • 簡易な支柱構造で、容易に撤去できること
  • 申請面積が必要最低限で、適正と認められること
  • 農作物の生育に適した日照量を保てる設計であること
  • 支柱は最低2m以上で、農業機械を利用可能であること
  • 周辺農地の利用や農業用排水施設などに支障がないこと
  • 設備撤去費用の支払い能力があること

一時転用の許可期間としては最長3年で、期限を迎えるたびに更新する必要がありました。しかし、下記条件を満たせば、最長10年まで延長されます。

  • 担い手が、自ら所有する農地又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する農地等を利用する場合
  • 荒廃農地を再生利用する場合
  • 第2種農地又は第3種農地を利用する場合

一時転用期間が延長されれば、申請手続きの負担が減り、農業に一層集中可能です。
ただし、一時転用の許可を得た後でも、下記に該当する場合は取り消し措置を受ける可能性があります。

  • 営農が行われていない場合
  • 下部農地の単収が、同じ年の地域の平均単収より2割以上減少する場合
  • 下部農地で生産された農作物の品質が、著しく劣化している場合

太陽光発電に注目されるソーラーシェアリングですが、営農を継続し、高い品質で収益を上げることが必要不可欠です。ソーラーシェアリングの導入により、営農が疎かにならないよう注意しましょう。

ソーラーシェアリングのメリット

ソーラーシェアリングでは、限られた農地のスペースを有効利用できる以外にも、メリットが存在します。ここでは、ソーラーシェアリングの3つの導入メリットを見ていきましょう。

安定した増収を見込める

農業収入は天候に左右されやすく、また栽培する作物や土地の規模など、さまざまな要因で変動します。太陽光発電も天候の影響を受けますが、売電により1年通して収入を得ることが可能です。
ソーラーシェアリングでは、10㎡の面積で0.5kW発電できるとされています。営農しつつも収益源を増やし、安定して増収したい方や兼業から専業へ移りたい方などに、ソーラーシェアリングはおすすめです。

固定資産税を節税できる

農地へ野立て太陽光発電を設置する場合、農地転用を行い、宅地や雑種地といった扱いへ土地の地目を変更しなければなりません。しかし、土地の評価額が高くなり、固定資産税も上がってしまいます。
一方、ソーラーシェアリングの場合は、ソーラーパネルの支柱部分を農地へ一時転用する仕組みであり、支柱の面積分だけが宅地や雑種地扱いとなるため、固定資産税の出費を減らすことが可能です。野立て太陽光発電より税金を抑え、収入のアップも見込めます。

直射日光を避けて農作業を行える

農業は炎天下での作業となるケースが多く、加えて農家の高齢化も進む中では、熱中症のリスクを伴います。しかし、ソーラーシェアリングでは、頭上に設置されたソーラーパネルが太陽光を遮断し、日よけとしても効果的です。
また、健康面のリスクを排除できる以外に、日陰で作業を行えるのも大きなメリットと言えます。暑さによる作業パフォーマンスの低下を避け、効率良く営農したい方にも、ソーラーシェアリングはおすすめです。

ソーラーシェアリングのデメリット

収入面に限らず、身体的にもメリットがあるソーラーシェアリングですが、デメリットも存在します。導入を検討している方は、デメリットも必ず押さえておきましょう。

高額な費用が発生する

ソーラーシェアリングの運用には、高額な費用が必要です。例えば、農林水産省の「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」では、下記取り組み事例が紹介されています。

事業実施主体市民エネルギーちば株式会社
発電出力35kW
発電電力量2万7千kWh/年
下部農地面積6a
建設費1,000万円

ソーラーシェアリングの設置料金として、太陽光パネル・パワーコンディショナー・架台・工事代・その他オプション料金で構成されるのが一般的です。上記例では、初期費用は1,000万円ですが、kWあたり20~30万円が相場と言われることもあります。高額な初期費用を何年で償却できるか、導入前に予測しておくことも大切です。

毎年収穫状況を報告しなければならない

ソーラーシェアリングを設置し、営農を開始した後は、毎年農作物の収穫状況を許可権者へ報告しなければなりません。なお、報告書の記載内容には「報告内容について必要な知見を有する者の確認を受けること。」の条件が付いています。報告書を提出しない場合や基準に満たない場合、ソーラーシェアリングの撤去命令を受ける可能性もあるため、注意が必要です。

金融機関からの融資が通りにくい

ソーラーシェアリングの高額な初期費用は、金融機関からの融資で補うケースが多いです。しかし、野立て太陽光発電に比べ、ソーラーシェアリングに関する融資審査は通りにくいと言われています。融資審査が通りにくい理由としては、下記の通りです。

  • 利回りが低いため
  • 3年ごとに一時転用の更新が必要なため

順番に詳細を解説していきます。

▼利回りが低いため
ソーラーシェアリングは他の設置方法と比較すると、架台を設置する資材費や工事費が高いため、導入費用も割高です。また、営農も並行する関係で、日光を作物まで届かせなければならなく、架台に対するソーラーパネルの占有面積も少ない傾向にあります。
よって、投資金額に対する収益の割合が少ないのも、ソーラーシェアリングのデメリットです。利回りは融資を行う上での重要な基準ですが、当然収益性が低いと、審査も厳しくなると考えられます。

▼3年ごとに一時転用の更新が必要なため
太陽光発電では、発電した電気を一定期間、一定価格で電力会社が買い取る固定価格買取制度(FIT)を利用できます。通常、市場取引は時期や受給状況により価格も変動しますが、固定価格買取制度が適用されれば同じ金額で取引を行えるため、安定した収益を得ることが可能です。
ソーラーシェアリングに関しても条件を満たすことで、固定価格買取制度を適用して全量売電を行えますが、先述の通り3年ごとに一時転用を更新しなければなりません。更新条件を満たさない場合、事業を廃止せざるを得ないので、金融機関側としても融資にはリスクを伴います。
以上2つの条件から、ソーラーシェアリングの融資審査は厳しくなるということを覚えておきましょう。

ソーラーシェアリングに適した作物事例

ソーラーシェアリングによる営農では、ソーラーパネルが太陽光を遮ってしまいます。そのため、太陽光を受けなくても生育する作物を選ぶことが重要です。作物には日照特性と呼ばれる性質があり、大きく下記3つに分けられます。

  • 陽性植物:一日中日光に当たり、生育する植物
  • 半陰性植物:半日程度日光に当たり、生育する植物
  • 陰生植物:日陰でも生育する植物

ソーラーシェアリングに適しているのは、比較的太陽光に当たらずとも生育する半陰性植物と陰生植物です。半陰性植物・陰生植物の例としては、下記のような作物が挙げられます。

  • キャベツ
  • 白菜
  • レタス
  • ねぎ
  • アスパラ
  • ナス
  • ぶどう
  • いちご

また、農林水産省のソーラーシェアリング取組事例として、大豆・茶・水稲・麦・ブルーベリーを生育した実績もあります。栽培したい作物を明確にした上で、ソーラーシェアリングに適しているか、あらかじめチェックしておくことが必要不可欠です。

ソーラーシェアリングに失敗しないための施策・思考

2013年に設置が認可されて以来、ソーラーシェアリングの導入は全国的に進んでいます。農林水産省が発表した「営農型発電設備の設置に係る許可実績(都道府県別)について」によると、2020年3月時点でソーラーシェアリングの許可実績は2,653件です。2017年では約1,500件、2018年では約2,000件の累計許可件数だったため、着実に伸長しているのがわかります。
一方で、ソーラーシェアリングの事業から撤退するケースが多いのも実情です。ここでは、ソーラーシェアリングに失敗しないための施策・思考をご紹介していきます。

ソーラーシェアリングに適した作物を生育する

先述の通り、ソーラーシェアリングに適した作物は半陰性植物・陰生植物と概ね決まっていますが、栽培実績の多い作物もあります。農林水産省が調査した「営農型太陽光発電設備設置状況等について」によると、ソーラーシェアリングで栽培された作物の割合としては野菜が34%、観賞用植物が30%で実績が多いです。一方、米や麦などの土地利用作物は9%、ブルーベリーや柿などの果樹は14%でした。
さらに、ソーラーシェアリングを実施するにあたり、約64%の1,664件が栽培作物を従来から変更しています。特定の作物にこだわりがある場合でも、ソーラーシェアリングによる栽培実績の多い作物を育てたほうが、事業に失敗する可能性は低いと考えられます。

営農を最優先に考える

ソーラーシェアリングは一時転用の条件にも明示されている通り、農業収入を上げ続けることが前提です。しかし、農林水産省のデータによると、ソーラーシェアリングによる下部農地で、営農に支障があった事例は12%(308件)とされています。そのうち、営農者の不適切な栽培管理が起因し、単収減少に繋がった事例が80%(247件)です。
太陽光発電を導入したものの、営農を疎かにしていることがわかるデータと言えます。売電による収益向上に一喜一憂せず、農業第一で運営することが、ソーラーシェアリングでは重要です。

20年営農するための人材育成・確保が大切

ソーラーシェアリングの事業期間としては、固定価格買取制度を適用できる20年間が一般的とされています。太陽光発電は維持費が必要であるものの、政府が再生可能エネルギーの利用を推奨していることもあり、今後20年間で人材が不足するとは考えにくいです。
しかし、農業従事者は年々減少し、平均年齢も上がっているため、営農を20年間継続することと、太陽光発電を20年間継続することは別々に捉える必要があります。将来の人材ビジョンも考え、農業従事者を育成・確保していくことが大切です。

ソーラーシェアリングの成功事例

全国各地では、ソーラーシェアリングを運営し、実際に成功を収める農家も多いです。ここでは、ソーラーシェアリングの成功事例をご紹介します。

ブルーベリー栽培を行う五平山農園

ソーラーシェアリングでブルーベリー栽培を行っているのが、千葉県いすみ市の五平山農園です。1,500万円の建設費を支払うため、金融機関による融資を受けましたが、1年で200万円の売電収入が発生しており、年間返済額の115万円を補っています。
下部農地で栽培されたブルーベリーは平均糖度15度以上で、12~13度で良品と言われる中、高い糖度を誇るのが特徴です。また、ソーラーパネルの日陰で炎天下の作業負担が軽減されたことに加え、乾燥を防いで散水作業が楽になりました。若者へ向けた新しい農業スタイルとして、ソーラーシェアリングの提案を進めています。

自家消費を行う茅ヶ崎農場

茅ヶ崎農場では、ハウス上部に太陽光パネルを設置し、ソーラーシェアリングを運用しています。発電した電気は売電せず、農業用ICT・井戸用ポンプ・養液灌水システムなどの電源に充てているのがポイントです。蓄電池を導入することで、天候の影響を受けない営農を実現しています。
また、太陽光で貯めたエネルギーは、災害時の停電に備えているのも特徴のひとつです。非常時には設備を無償開放し、防災拠点としての役割も担っています。

【2021年】ソーラーシェアリングの補助金一覧

行政機関や自治体、金融機関では、ソーラーシェアリングに関する補助金・支援事業を展開しています。助成を受けることで、初期費用の負担軽減や体制整備に繋げることも可能です。例えば、行政機関では下記のような助成が実施されていました。

  • 地域資源活用展開支援事業(農林水産省)
  • 営農型太陽光発電システムフル活用事業(農林水産省)
  • 廃熱・未利用熱・営農地等の効率的活用による脱炭素化推進事業(環境省)

ただし、令和3年度分の公募はすでに終了しています。再生可能エネルギーの推進を図る目的で、各機関はソーラーシェアリングの助成を行っているため、来年度も実施される可能性は高いと考えられます。

失敗しないソーラーシェアリングの運用が重要

ソーラーシェアリングには、一時転用の審査が厳しい点や資金調達が難しい点、営農も並行しなければならない点など、野立て太陽光発電と異なるポイントも多いです。それがゆえに、ソーラーシェアリング事業に失敗する事例も少なくありません。
しかし、農地を有効活用できるだけでなく、収入が不安定な農業に安定的な収益をもたらすことも可能です。ソーラーシェアリングを導入し、農業と太陽光発電の二重収益を構築してみてはいかがでしょうか。
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