経済産業省では、再生可能エネルギーの出力制御量低減や柔軟な運用を目指すために、経済的出力制御を検討しています。しかし、新しい情報でなおかつ分かりにくい内容のため、多くの投資家が分からず悩んでいるのではないでしょうか。
そこで今回は、太陽光発電の経済的出力制御や出力制御のルールについて分かりやすくご紹介します。出力制御の対象地域で太陽光発電を始める方や出力制御について知らない方などは、参考にしてみてください。
出力制御ルールについておさらい
電力会社は、電力の需給バランスを整えるために一時的な発電および出力の抑制を行います。このような発電量の調整措置を、出力制御と呼びます。発電事業者にとって収益に影響を与える内容ですが、出力制御しなければ大規模停電や電気設備の故障などにつながるため、必要な措置の1つです。
そして、経済的出力制御を理解するためには、出力制御のルールについて把握しておく必要があります。
それでは、出力制御に関する2つのルールについて確認していきます。2015年以前に適用される旧ルール
出力制御に関するルールは、2015年1月25日もしくは3月31日、2014年を1つの区切りとして、旧ルールと新ルールに分かれています。
指定期間以前に電力会社(一般送配電事業者)と接続申込を行っていた場合は、旧ルールが適用されます。旧ルールの内容や細かな条件は各電力会社によって異なる場合があるため、契約先の確認も大切です。
以下に電力会社10社の旧ルールを紹介します。
無補償による出力制御の上限 | 年間30日間:電力会社ごとの違いなし |
出力制御装置の設置義務 | 義務なし:電力会社ごとの違いなし |
系統接続申込の期間 |
10kW未満: 2015年3月31日まで:以下以外の大手電力会社7社 2021年3月31日まで:関西電力、東京電力、中部電力 10kW以上50kW未満: 2015年1月25日まで:以下以外の大手電力9社 2014年12月2日まで:四国電力のみ 50kW以上500kW未満: 2015年1月25日まで:以下以外の大手電力8社 2014年12月2日まで:四国電力のみ 2014年9月30日まで:東北電力のみ 500kW以上: 2015年1月25日まで:以下以外の大手電力8社 2014年12月2日まで:四国電力のみ 2014年9月30日まで:東北電力のみ |
四国電力と東北電力は、他の電力会社と異なり2014年にルールが切り替わっています。
系統接続申込手続きは、発電した電気を送電線や配電線などへ流すために必要な手続きで、一般送配電事業者へ申込および工事費負担金の支払いを行います。なお、一般送配電事業者とは、電力の送配電事業を担っている大手電力会社のことです。
無補償による出力制御は、文字通り補償なしで発電の制限が行われる措置を指していて、最長30日間まで補償されない仕組みです。
2015年以降に適用される指定ルール
一部の大手電力会社では、無補償の期間延長や一部発電事業者のみ出力制御機器設置義務の追加といった新ルールを2017年もしくは2021年まで実施していました。
新ルールを適用していない電力会社の場合は、太陽光発電の出力に限らず出力制御機器設置義務追加に加えて無期限の無補償といった指定ルールを採用しています。また、指定ルールは、2022年時点でも有効です。
さらに新ルールを適用していた電力会社は、2021年4月1日より指定ルールへ変更されました。そのため、2022年2月時点では、全ての電力会社が同じルールで出力制御に関する措置を実施しています。
今後太陽光発電の新規設置を行う時は、指定ルールに沿った出力制御への準備や対応などが必要です。
太陽光発電の出力制御方法
出力制御のルールを確認したあとは、出力制御の方法について把握しておきます。
出力制御の操作自体は発電事業者で行わなければいけないため、操作の流れや基本的なポイントを押さえておくのも大切です。また、出力制御の指示は制御日の前日に行われるため、迅速な準備と作業が要求されます。
オンライン制御はインターネット経由でなおかつ自動制御
出力制御のオンライン事業者とは、太陽光発電所の設置されている場所へ向かわず、インターネット経由で発電の抑制などといった操作を行う事業者のことです。
電力会社より出力制御の指示を受けた場合は、オンライン事業者側で制御操作を行うのではなく、出力制御対応機器による自動制御で発電量などを調整します。出力制御対応機器とは、太陽光発電設備の出力(送電など)を制御可能な装置のことです。
出力制御対応機器は設置義務化の対象で、太陽光発電の設置時に購入しなければいけません。なお、1日に制御される回数は、一般的に5~8回です。
オンライン対応型の出力制御対応機器は、自動で出力制御に関する実施スケジュールを取得してもらえます。出力制御の自動化という点が、オンライン事業者の大きなメリットです。
太陽光発電所へおもむくための労力や制御に関する手間などを省略したい方は、オンライン対応型の設備購入や準備を含めて検討してみるのも大切です。
オフライン制御は現地でデータ登録が必要
インターネットへ接続できない出力制御対応機器を設置した場合は、太陽光発電所内で電力会社から提供された出力制御スケジュールに関するデータ登録作業が必要です。
オンラインによる制御と異なる点は、担当者が現地へ向かわなければいけないこと、制御回数が15回前後と多いこと、データの登録などといった作業が必要なことなどが挙げられます。
また、オンライン制御と比較して出力制御量が多めに設定されるため、より発電しにくい点に注意が必要です。山間部で通信設備を整えられないなど特段の事情がない場合は、オンライン制御への切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。
経済的出⼒制御の特徴
経済的出力制御は、2022年2月8日時点で未実施です。
経済産業省の資源エネルギー庁の資料では、2022年早期の導入を目指すといった記述もあるため、早めにさまざまな情報を得る必要があります。
ここからは、本記事のテーマでもある経済的出力制御について紹介します。
オンライン事業者が出力制御を代行
経済的出力制御とは、出力制御のオンライン化を実施した発電事業者が、オフライン事業者の代わりに出力制御を実施する新たな制御方式のことです。なお、経済的出力制御はオンライン代理制御とも呼ばれています。
たとえば、Aというオンライン事業者が経済的出力制御を行う場合、Bというオフライン事業者の出力制御量をAの太陽光発電所で対応していきます。
みなし発電量の買取価格を受け取れる
Aというオンライン事業者は、自身の設備に課せられる出力制御とオフライン事業者Bの制御、2つ分の出力制御を行う必要があります。そのため、経済的出力制御では、オンライン事業者へ買取代金の追加による損失のカバーが行われます。
本来オフライン事業者が負担しなければいけない出力制御量は、みなし発電量として計算され、オンライン事業者へ支払われる仕組みです。
太陽光発電のオンライン事業者は、経済的出力制御による損失を被らずに済みます。
オフライン事業者はオンライン事業者へ支払義務発生
オフライン事業者は、売電収入からみなし発電量分の買取代金を差し引かれます。そのため、出力制御の操作を行っていない状態ではあるものの、通常の出力制御と同じく金銭的な負担を受ける仕組みです。
このようにオフライン事業者は費用負担、オンライン事業者は出力制御の代わりに買取代金の追加による補てんといった料金精算を軸にしているため、経済的出力制御と呼ばれています。
対象のエリアは5エリアへ拡大の可能性
経済的出力制御の対象エリアは、出力制御を実施している九州電力管内の他、北海道電力、東北電力、四国電力、沖縄電力も含められる可能性があります。
そのため、5エリアで太陽光発電投資を始める方や中古太陽光発電の購入を検討していて5エリアに該当する時は、特に経済的出力制御の最新情報を追っていくのがおすすめです。
経済的出⼒制御で期待できるもの
最後は、経済的出力制御で期待できるものを確認していきます。
オフライン事業者の負担軽減につながる
オフライン状況で出力制御を行う太陽光発電投資家や設備担当者にとって経済的出⼒制御は、現地への移動や制御スケジュールのダウンロードや登録、設備の調整などの負担軽減といったメリットがあります。
オフライン事業者として太陽光発電を運用している場合、メンテナンス業者などへ出力制御の依頼を行わなければいけませんし、担当者に負担がかかります。
経済的出力制御が導入されれば、オフライン環境下で出力制御を行わずに済みます。また、メンテナンス業者などへの依頼に伴うコスト軽減を期待できるのが、嬉しいポイントです。
柔軟な制御対応を実現
経済的出力制御は、柔軟かつ正確な制御対応の実現につながります。
オフライン環境下での出力制御は、実際に必要な制御量より多めに制御するよう指示されます。太陽光発電事業者にとって損失の拡大につながるのはもちろん、脱炭素化を目指す社会にとっても大きな損失です。
経済的出力制御が実現できれば、出力制御の必要な場面でのみ制御対応できるようになります。太陽光発電事業者は、余分に発電抑制せずに済みますし、環境価値のある再生可能エネルギーを効率よく活用することが可能です。
経済的出⼒制御に合わせてオンライン制御を検討してみよう!
経済的出力制御は、オンライン事業者がオフライン事業者の代わりに出力制御の対応を行う仕組みのことです。オフライン事業者の出力制御量を負担したオンライン事業者は、代理制御によって負担したコストを売電収入として補てんしてもらえます。一方、オフライン事業者には、売電収入から出力制御量に相当するコストが差し引かれます。
経済的出力制御は、柔軟な出力制御とオンライン化を進める上で重要な役割を担う制度です。国では、2022年中の導入を目指し準備を進めています。
太陽光発電の運用を検討している方や出力制御の必要なエリアで太陽光発電を始める方は、今回の記事を参考に出力制御のオンライン化を検討してみてはいかがでしょうか。
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高い固定買取価格で売電できれば、出力制御による損失をカバーできます。また、新規設備とは異なり設置工事不要で、なおかつ売電や発電実績を確認できるのが魅力です。
出力制御に対応しながら売電収益を伸ばしたい方は、是非1度お問い合わせください。