太陽光発電や蓄電池の設置を検討している方の中には、単機能とハイブリッドパワコンについて比較している方も多いかと思います。ハイブリッドパワコンの方が、設置スペースや設置コスト、電気の変換効率といった点で強みのある設備です。しかし、初めて導入する方にとってはわかりにくいと感じるのではないでしょうか。
そこで今回は、ハイブリッドパワコンの意味や特徴に加えて、導入メリット・デメリットについて詳しくご紹介します。効率よく太陽光発電を運用したい方やハイブリッドパワコンの強みを把握した上で検討したい方は、参考にしてみてください。
パワーコンディショナについておさらい
太陽光発電におけるパワーコンディショナとは、太陽光パネルから発電された直流電力を交流電力に変換する装置のことです。多くの機器は交流電力で稼働するため、パワーコンディショナを設置しておく必要があります。
パワーコンディショナの選び方などについては、以下の記事も参考にしてみてください。
ハイブリッドパワコンとは一体何?
パワーコンディショナの重要性と意味を把握したあとは、ハイブリッドパワコンの意味や特徴について確認していきましょう。
太陽光発電と蓄電池のパワコンを1つにまとめたタイプ
ハイブリッドパワコンは、太陽光発電システムと蓄電池のパワーコンディショナを1台にまとめた高機能型タイプです。従来の単機能型パワーコンディショナを使用する場合は、太陽光発電と蓄電池用に1台ずつ購入・接続する必要があります。
一方、ハイブリッドパワコンは1台で済むため、接続工事の手間を省けます。また、変換による電力損失を抑えられるのがハイブリッドパワコンの強みです。(電力損失:発電や変換の際に失われる電気のこと)
メーカーによっては接続箱搭載のパワコンもある
高効率なハイブリッドパワコンの中には、接続箱などの周辺機器が搭載されたパワコンも製造販売されています。
たとえばシャープ製のハイブリッドパワコンは、1台に電力の変換機能の他、接続箱や昇圧装置も搭載されているのが特徴です。接続箱は、複数の太陽光パネルから流れてきた電力を1つの系統にまとめるための装置です。昇圧装置は、枚数の異なる太陽光パネルから流れてきた電気の電圧を一定に引き上げて安定化させる装置のことです。
ハイブリッドパワコンを選ぶ際は、電力の変換効率だけでなく、オプションや搭載されている機能についても確認してみるのがおすすめです。
蓄電容量5kWhで180万円前後
ハイブリッドパワコンの価格は、蓄電容量5kWhの蓄電池とセットタイプで180万円前後です。
蓄電池やパワコン、太陽光発電の価格は、本体価格と工事の2種類で構成されています。単機能型パワコンを含む蓄電池の場合は80~160万円程度なので、ハイブリッドパワコンの方が高い傾向です。
ただし、太陽光発電のパワーコンディショナを設置する必要がないため、総合的に見ると経済的メリットの多いシステムと言えます。
ハイブリッドパワコンのメリット
ここからは、ハイブリッドパワコンならではのメリットについて1つずつ確認していきましょう。
バリエーションが豊富になりつつある
ハイブリッドパワコンは、さまざまなメーカーから開発・製造販売されてきています。複数の製品からじっくり比較検討したい方には、特にメリットといえるポイントです。
ハイブリッドパワコンは、オムロンやニチコン、田淵電機、HUAWEI(ファーウェイ)など国内外のメーカーから発売されています。
それぞれ蓄電容量や停電時の出力、サイズなどに違いがあり、予算や重視している機能に合わせて選択できます。
自家消費や売電収入アップにつながる
電力の変換損失を減少できるのは、ハイブリッドパワコンならではのメリットです。
単機能型パワコンの場合、太陽光発電と蓄電池のパワコンへそれぞれ送電しなければならないため、2台分の変換損失が発生します。パワコンの変換効率は一般的に94%なので、2台で2~3回の変換を繰り返すと20%弱の電力を失います。
一方、ハイブリッドパワコンは2台分の変換損失を1台に抑えられるため、自家消費分の電力や売電収入を増やすことが可能です。また、初期費用回収期間の短縮にもつながります。
運転電圧の関係で発電効率アップ
太陽光発電とハイブリッドパワコン付きの蓄電池を導入した場合、運転電圧の関係で発電量を増やせる可能性があります。
太陽光発電に付帯されている単機能型パワコンは、発電時の最低電圧70V程度でなければ稼働しません。そのため、早朝や夕方など日射量の少ない時間帯には発電できない場合があります。
一方、ハイブリッドパワコンは、30Vなど比較的少ない電圧で稼働してくれます。つまり、発電時間の向上と発電量増加につながるので、効率的に太陽光発電と蓄電池を利用することが可能です。
停電時の出力上限値がアップ
ハイブリッドパワコンを導入した場合、停電時の出力上限値を引き上げられます。(出力:電気の供給力)
停電時にどれだけの電力を同時に使用できるかは、パワコンの出力によって変わります。単機能型のパワコンは出力1.5~2kVAで、1,500~2,000Wまでの消費電力に対応しています。
ハイブリッドパワコンの場合は5kVA~という大出力タイプなので、パソコンなら10台以上同時に稼働でき、エアコンを稼働させながら一部の照明を使用することが可能です。
オフィスのBCP対策を検討している方は、ハイブリッドパワコンを検討してみるのもいいかもしれません。
設置スペースを削減できる
ハイブリッドパワコンを導入する場合、設置スペースの課題を解決できる可能性があります。
ハイブリッドパワコンなら2台分の設置スペースを確保せずに済み、複数の機能が搭載されていれば接続箱などの設置スペースも省略できます。さらに本体の薄いタイプや小型の壁掛けタイプなど、小型が進んでいるのも特徴です。
単機能型パワコンで設置が難しい時は、ハイブリッドパワコン付きの蓄電ユニットを導入してみてはいかがでしょうか。
ハイブリッドパワコンのデメリット
続いては、ハイブリッドパワコンのデメリットについて確認していきましょう。
蓄電池を後付けした場合は保証を受けられない可能性
既に太陽光発電システムを取り付けていて、あとからハイブリッドパワコン付きの蓄電池を導入する際、太陽光発電の保証を受けられない可能性があります。
太陽光発電システムの保証は、システムの追加や改造などといった場合に無効化されてしまいます。
ハイブリッドパワコンを後付けする場合は、太陽光発電用の単機能型パワコンを取り外さなければいけません。そのため、太陽光発電の保証を受けられない可能性があるということです。
保証のリスクを避けたい時は、太陽光発電システムを含めて買い換えるか、太陽光発電の保証が切れる時期にハイブリッドパワコンを導入してみるのもおすすめです。
単機能型より割高な傾向
冒頭でも触れましたがハイブリッドパワコンの価格は、単機能型パワコンより割高の傾向です。少しでもコストを抑えて太陽光発電・蓄電池を設置したい方にとっては、デメリットといえるポイントです。
ただし、自家消費型太陽光発電や自家消費用に蓄電池を導入する場合、国や自治体の補助金制度を受けられます。
たとえば、ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業という補助金は、自家消費型太陽光発電と蓄電池の導入を支援してくれる制度です。対象者は民間企業で、太陽光発電に対して1kWあたり4or5万円、蓄電池なら1kWhあたり7万円の補助金が交付されます。
既にパワコンを設置している場合は交換が必要
既に太陽光発電や蓄電池用の単機能型パワコンを設置している場合、既存のパワコンと交換しなければいけません。
特に太陽光発電と蓄電池を設置していて、なおかつ単機能型パワコンで運用を始めている方には、交換工事などといった点でデメリットを感じやすい部分です。
さらに前段でも触れたように、保証期間中の交換は保証の無効といったリスクにつながる可能性もあります。
既に太陽光発電や蓄電池を設置している時は、交換時期や保証制度を含めて販売店に相談してみるといいでしょう。
弊社和上ホールディングスでは、創業30年、15,000棟を超える施工実績を持ち、太陽光発電や蓄電池のシステムから運用、保証制度まで幅広いノウハウを蓄積しています。ハイブリッドパワコンの導入時期や保証に関して悩んでいる方も、お気軽にご相談ください。
太陽光発電と蓄電池の相性を調べる必要がある
後付けで太陽光発電もしくは蓄電池を導入する場合は、それぞれの機器とハイブリッドパワコンの連携状況を確認しておくのも重要です。
ハイブリッドパワコンや蓄電池、太陽光発電システムは、それぞれ型番やメーカーによって相性があります。誤って連携不可の製品もしくは相性の悪い製品を購入してしまうと、「連携できない」、「連携したものの故障してしまった」といったトラブルに発展してしまいます。
新規で太陽光発電と蓄電池を導入する時は、ハイブリッドパワコンとセットで同時に設置するのがおすすめです。後付けの場合は、実績豊富な施工業者へ相談しながら製品同士の相性や連携状況を確認しましょう。
ハイブリッドパワコンのメーカーは?
ハイブリッドパワコンを販売しているメーカーは、前半でも触れたように多数存在しています。
これから太陽光発電と蓄電池で自家消費を行う方は、メーカーと製品をいくつか把握しておくのがおすすめです。
以下にハイブリッドパワコンを取り扱っているメーカーについていくつか紹介します。
メーカー名 | 製品事例 |
---|---|
ニチコン |
ESS-H2L1 蓄電容量と出力に強みがある 定格容量:12kWh 定格出力:5.9kW 停電時の出力:5.9kVA |
スマートソーラー |
スマート蓄電システムS 一体型の構造で防水、防塵、塩害に強い 定格容量:11.8kWh 定格出力:5.5kW 停電時の出力:3.5kW |
HUAWEI(ファーウェイ) |
LUNA2000 蓄電池の追加が容易でなおかつ最大30kWhの大容量タイプへカスタム可能 定格容量:5~30kWh 定格出力:1.5、3.5、4.5kW 停電時の出力:4.95kVA |
オムロン |
KPBP-Aシリーズ 後から単機能型パワコンへ切り替えるなど簡単にシステムの構造を変更できる 定格容量:16.4kWh 定格出力:5.6kW 停電時の出力:4.0kVA |
田淵電機 |
EIBS7シリーズ 製品寿命12,000サイクルと他製品より1.5倍~2倍程度耐久性の高い仕様 定格容量:7kWh×2台連結可能 定格出力:5.5kW、8.0kW、9.9kW 停電時の出力:5.5kW |
なお、規模の大きな太陽光発電システムに合ったハイブリッドパワコン付き蓄電ユニットを取り付けたい時は、産業用・業務用蓄電池製造メーカーに、設計を含めた相談を行う必要があります。
たとえば、エリーパワー株式会社では、Power Storager D20という蓄電容量21.7~65.1kWhの大型蓄電ユニットをはじめとしたオフィスや工場向けの蓄電設備を販売しています。
弊社和上ホールディングスでは、個人事業主や企業向けの産業・業務用蓄電ユニットを活用した自家消費型太陽光発電設備の設計から運用保守まで一括対応しています。
メーカー選びや相談先に悩んでいる方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ハイブリッドパワコンは長期的に見てメリットの多い設備!
ハイブリッドパワコンは、1台で太陽光発電と蓄電池の直流・交流変換を含む制御を行ってくれる優れたシステムです。また、単機能型パワコンより割高ではあるものの、長期的に見ると経済的メリットの多い仕様といえます。
高性能な太陽光発電や蓄電池を探している方や環境経営などに関心を持ち始めた方は、今回の記事を参考に自家消費型太陽光発電の設置を検討してみてはいかがでしょうか?
弊社和上ホールディングスは、事業者向けに自家消費型太陽光発電の企画設計、施工、運用保守を行っています。今回紹介したハイブリッドパワコンに対応した蓄電ユニットを含め、各メーカーの製品情報を把握しているので、ハイブリッドパワコン対応のシステムをお求めの方は、お電話やメールにてぜひご相談ください。
専任の担当者がお客様の予算や設置スペースなど、詳細にヒアリングいたします。