容量市場の仕組みを簡単に解説!購入コストを抑える方法についても

容量市場の仕組みを簡単に解説!購入コストを抑える方法についても

容量市場は、卸電力市場と異なり電力の供給量を基準にした取引市場です。発電量の不安定な再生可能エネルギーを取り入れながら電力の需給バランスを整えていくには、容量市場の仕組みも重要です。

そこで今回は、容量市場の仕組みや小売電気事業者の負担を減らす方法について詳しくご紹介します。容量市場での支出を抑えたい方や容量市場の仕組みを把握しておきたい電力関連事業者の方などは、参考にしてみてください。

目次

容量市場の仕組みを簡単に解説

容量市場の仕組みを簡単に解説

「容量市場」とは、すでに発電された電力量(kWh)を卸電力市場で取引するのではなく、将来の電気供給力(kW)を取引する市場です。「容量市場」の取引や対象電源などを紹介します。

4年後の電力供給力が取引される

容量市場は未来の安定した電力供給を目的としており、実際には4年後の電力供給力が取引されます。

日本の電気事業の広域的運営を推進することを目的として設立された団体である「電力広域的運営推進機関」が、4年後の見込み最大需要を試算し、その需要を満たすことのできる電力供給力を算定します。

この最大需要を満たすことのできる電力供給力を確保するため、「4年後に供給可能な状態にできる電源」の募集を行います。

発電事業者が売り手、小売電気事業者が買い手となり「電力広域的運営推進機関」を介してオークション方式で取引が行われ、価格の安い順に落札されます。

小売電気事業者は将来の電力量を確保する対価として「電力広域的運営推進機関」に容量拠出金を支払い、落札された発電事業者は「電力広域的運営推進機関」から容量確保契約金を受け取り、発電設備のメンテナンスなどを行い、4年後には電力を供給可能な状態にします。

容量市場の対象電源

4年後の電力供給力を確保するためのオークションには、安定電源や変動電源など参加対象となる電源があります。その中には、容量の小さい自家発電や蓄電池なども含まれています。

安定電源

火力・原子力
水力(揚水式・貯水式・自流式の一部)
地熱・バイオマス・廃棄物

期待容量が計量単位1,000kW以上の安定的な供給力を提供するもの。

変動電源

水力(自流式の一部)
風力・太陽光

変動電源(単独):期待容量が計量単位1,000kW以上の供給力を提供するもののうち、自然変動電源に該当するもの。

変動電源(アグリゲート):期待容量が計量単位1,000kW未満の電源のうち、自然変動電源を組み合わせて、期待容量1,000kW以上の供給力を提供するもの。

発動指令電源

デマンドレスポンス
自家発・蓄電池
その他

期待容量が計量単位1,000kW未満の電源、安定的な供給力を提供できない自家発電、デマンドレスポンスなどを単独もしくは組み合わせて流すと期待容量が1,000kW以上の供給力を提供するもの。

容量市場の取引スケジュール

電力広域的運営推進機関は、容量市場のメインオークションを毎年開催しています。容量市場の取引スケジュールは大きく3つのステップに分かれています。

ステップ1:参加登録〜契約締結

・募集要綱公表

 参加登録期間:事業者情報登録⇨電源等情報登録⇨期待容量登録

・受容曲線公表

 応礼・約的期間:応札

・約定結果公表

 契約締結期間:容量確保契約締結

・契約結果公表

ステップ2:契約締結後の対応

・実効性テスト(夏季)
・容量停止計画の調整
・実行テスト(冬季)

ステップ3:実受給期間

・容量拠出金の請求
・容量確保契約金額の交付

2024年度の供給を確保するためのメインオークションは既に2020年に行われており、追加オークションは2024年の実受給年度の一年前に実施の判断を行います。

なぜ容量市場が作られたのか

なぜ容量市場が作られたのか

2016年4月1日以降、電力の小売業が全面的に自由化されたことで、電力を使う需要家は自由に電力会社やサービスを選択できるようになりました。

全面自由化によりさまざまな企業が小売電力事業に参入したことや、太陽光・風水発電などの再生可能エネルギーが拡大したことで、電気料金の抑制につながっています。

太陽光・風水発電などの再生可能エネルギーは天候・季節などの影響で発電量が変動するため、電力を安定的に供給できる火力発電など多様な電源を用い、需要と供給のバランスを保つことが重要です。

しかし電力市場の価格が下がることで、既存の火力発電所などの改修コストの回収予測が立てづらくなるなど新たな投資が難しくなり、将来的に需要がひっ迫した際に電力不足による停電や、電気料金の上昇に繋がるおそれがあります。

日本全体の将来における安定的な電力量を効率的に確保するため、日本より電力自由化に早く取り組んだ諸外国で導入されている「容量市場」が2020年に創設されました。

容量市場を支えている容量拠出金

容量市場を支えている容量拠出金

容量市場では、需要に応じた金額である「容量拠出金」を支払う義務が電気事業法により定められています。容量市場を支えている「容量拠出金」について詳しく説明します。

容量拠出金は市場を支えるために必要

オークションに参加して落札された発電事業者は、電力広域的運営推進機関から「容量確保契約金」を受け取って設備などのメンテナンスなどを行い、4年後には電力を供給可能な状態にします。

この発電事業者が受け取る「容量確保契約金」が「容量拠出金」です。

一般送配電事業者と小売電気事業者が負担

電気事業には、電気の発電を行う発電事業者と発電された電気を需要者へ送る一般送配電事業者、そして顧客のために必要な電気供給量を確保しサービスを販売する小売電気事業者と、それぞれ役割を担っています。

3つの電気事業の役割の中で「容量拠出金」を負担しているのは、一般送配電事業者と小売電気事業者です。

2016年の電力の自由化により多くの企業が小売電気事業に参入し、2022年現在の小売電気事業者は741社となっています。

小売電気事業者は、2020年の初回オークションから4年後の2024年より毎年「容量拠出金」を支払う義務が、電気事業法により定められています。

容量市場の課題

容量市場の課題

将来の安定的な電力量の確保などのために創設された容量市場ですが、スタートしたばかりの制度のため、多くの課題も残っています。

約定価格が高い

容量市場は全国単一市場でオークションが行われ、約定価格の決定はシングルプライスオークション式となっています。

2020年に初回のオークションが行われ、同年の9月に電力広域的運営推進機関が容量市場の創設後初めての入札結果を発表しました。発表された約定価格が14,137円/kWと予想を上回る高値となりました。

これは新設ガス火力発電の固定費をも5割で上回るような高水準で、この高値の約定価格が既存の発電設備を含めた全電源に適用されることになります。

応礼容量の3/4は火力発電であり、平均応礼価格は2,182円/kWだったため、落札価格が平均応礼価格の6.5倍にもなるという結果になりました。

供給力として役立たないエネルギーも含まれている

日本より早く容量市場をスタートさせた海外でも例をみないほどの高値となった約定価格は、全ての電源に適用されます。

落札された電源の中には、燃料切れで稼働していないような古い石炭火力発電所や老朽化した原発など、実際には供給力として役に立たない不適切な既存電源も含まれています。

このような発電設備にとっては、高値の約定価格は「濡れ手に粟」のような結果となっています。

電力小売り事業者にとって負担が大きい

電気事業を行っている事業者の中でも、「容量確保契約金」を受け取ることのできる発電事業者と異なり、「容量拠出金」を支払わなければならない小売電気事業者にとっては、約定価格が高値となると負担も大きくなります。

特に、大規模な発電施設を持っていない再生エネルギー新電力の小売電気事業者の負担が大きく、事業継続が難しくなります。

その結果、新電力会社として電気事業に参入していた企業の撤退や、新規電力会社の新規契約停止や電気代の値上げ、倒産などが起こる可能性があります。

そのようなことが起きれば、電気を使っている需要者にも混乱が起こってしまいます。

容量市場の容量拠出金を増やすには非FIT型太陽光発電がおすすめ

容量市場の容量拠出金を増やすには非FIT型太陽光発電がおすすめ

電力関連事業者で容量市場へ小売電気事業者として参加する場合には、非FIT型太陽光発電の導入がおすすめです。

非FIT型太陽光発電はFIT制度を活用しない発電設備

FIT制度とは、太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電された電力を、国が定めた固定価格で電力会社が一定の期間買い取ることを義務付けた制度です。

太陽光発電はFIT制度により再生可能エネルギーの拡大に貢献してきました。非FIT型太陽光発電は、FIT制度である固定価格買取制度に頼らない太陽光発電を指します。

非FIT型太陽光発電の普及が拡大すれば電力を安定的に調達できるため、注目されています。

自社で発電した電気を販売できるため容量市場からの購入量を抑えられる

非FIT型太陽光発電で発電された電力は、国や電力会社が買い取る義務がないため、小売電気事業者として他の企業などに電力を供給・販売することができます。

非FIT型太陽光発電を活用し、発電事業者としての役割を担うことができれば、小売電気業者として容量市場へ負担する支出を低減することも可能です。

自社が所有する非FIT型太陽光発電で発電した電力を販売することができれば、その分小売電気業者として容量市場から電力を購入する量を抑えることができます。

非FIT型太陽光発電は自社の電気料金削減にも活用可能

非FIT型太陽光発電で発電した電力は、販売せずに自社で消費することも可能です。発電した電力を自家消費することで、電力会社から購入する電力量を削減できます。

燃料費の高騰などで電力会社から購入する電気料金の値上げが続いているため、大幅な経費削減につなげることができます。

容量市場で電力を購入している場合は非FIT型太陽光発電を要検討!

容量市場で電力を購入している場合は非FIT型太陽光発電を要検討!

小売電気業者としてお客様に提供する電力を容量市場で購入している場合には、非FIT型太陽光発電の導入を検討することをおすすめします。

非FIT型太陽光発電を導入することで、小売電気業者として容量市場へ負担する支出を低減できるだけではなく、発電事業者として電力の安定供給にも貢献することができます。

現在もしFIT型太陽光発電を所有している場合、固定買取価格が下がっている背景もあるため、売却の検討をしてみても良いのではないでしょうか。

弊社とくとくファームでは、中古太陽光発電所や太陽光発電用地の売買仲介業務に関してあらゆるサポートをおこなっております。

FIT認定済みの中古太陽光発電所であっても、専任の担当者が査定から売却額アップへ向けた取り組み、FIT制度の確認と引き渡しなどについて対応いたします。

また、売却に関する税務処理についてもしっかりとサポートいたしますので、FIT型太陽光発電の売却について悩んでいる場合には、ぜひお気軽にお問合せフォームやお電話にてお気軽にご相談ください。

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