ブロックチェーン技術は、暗号資産だけでなくあらゆる業界で用いられています。最近では、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーとブロックチェーンをかけあわせた、新たなサービスの開発も行われており、暗号資産関連企業の注目も高まっています。
そこで今回は、ブロックチェーンと太陽光発電に関する新しい技術の仕組み、特徴、課題について詳しくご紹介します。新技術を用いた脱炭素経営に関心を持っている方やブロックチェーンと電力取引について把握しておきたい方などは、参考にしてみてください。
ブロックチェーン技術についておさらい
まずは、ブロックチェーン技術の仕組みや特徴について確認していきましょう。
分散型の取引技術
ブロックチェーン技術は、取引および通信システムが分散しているという特徴があります。
既存の通信技術は、第三者が中央管理者として通信の管理や保守運用を行っています。そのため、中央管理者の運用しているシステムが故障してしまうと、システム全体が停止してしまいます。
一方、ブロックチェーン技術は、ブロックチェーンを利用している人の端末同士で取引の維持や管理が行われるため、中央管理が不要です。さらに一部の端末が故障しても、他の端末同士で取引や通信を維持できます。
このように非中央管理型の新しい仕組みが、ブロックチェーンの大きな特徴であり強みといえます。
スマートコントラクト機能であらゆる契約を自動実行
ブロックチェーン技術には、スマートコントラクト機能という自動契約機能も搭載されています。
スマートコントラクトは、ブロックチェーンで契約条件などを設定しておくと、自動で契約手続きを進めてもらえる機能です。ブロックチェーンの特徴を持っているので、承認されていない契約の内容変更や不正行為なども防げるのが強みです。
近年では、不動産業界や保険、金融業界などで導入されています。たとえば、東京海上日動火災保険は、2020年にスマートコントラクトを活用した保険料の徴収や、保険金の支払いに関する自動化の実証実験を行いました。
今後もスマートコントラクトによるサービスは、社会に広く普及する可能性があります。
改ざんが難しい
ブロックチェーン技術は、改ざん行為に対して強いという特徴を持っています。
ブロックチェーンのシステムは、取引データやナンス(1回のみ使用されるデータ)、ハッシュ値(データの改ざんに関わる関数)というデータで構成されています。
過去の取引データも鎖のようにつながっていて、ハッシュ値をもとにブロック同士の改ざんに関するチェックが行われています。もし1個前のデータが改ざんされるとハッシュ値も変わり、前後のデータとハッシュ値のずれから改ざんを見抜けます。
つまり、ブロックチェーン技術によって作成されたデータは、改ざんされてもすぐにその内容や場所を特定することが可能というわけです。
ブロックチェーンによる電力取引とは?
ブロックチェーンによる電力取引(P2P電力取引)とは、電力会社を経由せずに個人間や企業間で電力の売買を行える仕組みのことです。
電力の小売りに関する契約手続きは、電力会社と契約しなければ進められません。たとえば、従量電灯制の電気料金プランへ加入するには、大手電力会社と契約する必要があります。
一方、技術開発の進むブロックチェーンの電力取引は、電力取引市場とブロックチェーンシステムによって、電力会社を介さずに電気料金プランの選定や契約を進めることが可能です。
たとえば2020年には、東京大学とTRENDE株式会社、トヨタ自動車株式会社による共同研究で、ブロックチェーンの電力取引に関する実証実験を進めています。参加した一般家庭や企業の中には、電気料金の削減を達成できたケースもあります。
ブロックチェーンは太陽光発電にも活用され始めている
電力取引に用いられているブロックチェーン技術は、太陽光発電にも活用され始めています。
そこでここからは、ブロックチェーン技術と太陽光発電に関するシステムやサービスについてわかりやすく紹介していきます。
太陽光発電の運用状況をリアルタイムで管理
光学機器などの大手メーカーであるリコーでは、太陽光発電を含む再生可能エネルギーの課題を解決するため、ブロックチェーン技術を活用し始めました。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、ベース電源の火力発電や原子力発電と異なり、24時間365日常に同じ量の発電量を維持できません。
さらに小売電気事業者は、発電事業者が再生可能エネルギーをどのように扱っているのかわかりません。
そこでリコーは、ブロックチェーンを活用して再生可能エネルギーが導入されていることの保証、電力需給のリアルタイムな情報共有といったシステムの構築を進めています。
小売電気事業者は、再生可能エネルギーを導入している発電事業者をブロックチェーンで確認できます。また、ブロックチェーンシステムで再生可能エネルギーの電力供給状況や需要をリアルタイムで観測できれば、電力会社同士で電力の融通がしやすくなります。
使用済み太陽光パネルの管理システムに活用
丸紅やネクストエナジー・アンド・リソースなどでは、使用済み太陽光パネルのリサイクルやリユースに関するブロックチェーン管理システムの開発を始めました。
太陽光発電の導入量は年々増加していて、なおかつ政府も導入支援を継続しています。太陽光パネルの寿命は20~30年なので、2030年台から大量のパネルが廃棄される見込みです。
しかし、使用済み太陽光パネルの性能評価や状態に関する記録が正しく行われなければ、リサイクルやリユースされても、購入につながりにくいといえます。
そこで丸紅やネクストエナジー・アンド・リソースなどは、改ざんの極めて難しいブロックチェーンを用いて、回収した使用済み太陽光パネルの性能や状態を記録し、中古市場で売買していく予定です。改ざんの難しいデータであれば、購入者にとっても信頼しやすく、かつ太陽光パネルの詳細な情報を確認した上で再利用できるようになります。
太陽光発電所のトークン発行
匿名の組合で構成されたファンドが、太陽光発電所のセキュリティトークンを発行し、事業資金の調達を行いました。
資金調達およびトークンの発行は2019年に行われていて、証券と同じ扱いです。トークンとは、ブロックチェーン技術によって作られたデジタル資産で、暗号資産と同じ機能を持っています。
今後は、太陽光発電の資金調達方法としてトークンの発行も検討できます。
環境価値をブロックチェーンで取引
太陽光発電業界では、「環境価値+ブロックチェーン取引」という方法も考えられています。
FIT認定を受けた太陽光発電の電気に含まれる環境価値は、再エネ賦課金という形で負担者に還元されています。つまり、FIT認定を受けた再エネ電力には、環境に配慮された電力という価値が認められていません。
一方、非FIT型太陽光発電の電気は再エネ賦課金の対象外なので、電力としての価値と環境価値の2種類を維持したまま自家消費、売電を始められます。
また環境価値は、Jクレジット制度で売買できます。しかし、Jクレジット制度で承認されるためには、手間と時間がかかります。
ブロックチェーン技術を用いれば、太陽光発電所の環境価値を判断するための機能やJクレジットの承認なども自動化することが可能です。
太陽光発電の運用時にブロックチェーンを活用するメリット
ここからは、太陽光発電の運用時にブロックチェーン技術を取り入れるメリットをわかりやすく解説していきます。
卒FIT後の売電事業で役立つ可能性
卒FIT後も太陽光発電で売電事業を行う場合は、ブロックチェーン技術でスムーズに準備を進められる可能性があります。
卒FIT後に企業が太陽光発電で売電事業を行うには、電力需要に合わせて発電量の調整なども進める必要があります。しかし、自社単体で電力の制御や電力需要の予測、インバランスリスク(事前に予測した電力需要や発電量と実際の需給との差額を支払う)への対応などを行うのは、費用と手間がかかります。
今後、太陽光発電関連のブロックチェーンサービスが発展していけば、設備投資や自社の負担を抑えながら非FIT型太陽光発電による売電事業を始められます。また、ブロックチェーンは分散型ネットワークなので、万が一通信が切断しても他のネットワークで接続を再開できます。
太陽光発電を活用したさまざまなビジネスにつながる
ブロックチェーン技術は、まだまだ発展途上でなおかつさまざまなサービスに活用できます。
前半で紹介したように、太陽光発電の資金調達用トークンの発行、太陽光発電の環境価値を示すための制御管理システム、使用済み太陽光パネルの情報管理システムなど、あらゆるサービスに応用できるのが強みです。
太陽光発電事業の可能性について関心を示している方や、ブロックチェーンを扱っているもののどの分野に応用するか悩んでいる方は、太陽光発電事業と掛け合わせてみるのがおすすめです。
これから太陽光発電を導入するなら非FIT型がおすすめ
ここまで太陽光発電とブロックチェーン技術の可能性について紹介しました。「FIT型太陽光発電ならシンプルだし、固定単価で売電収入を得られる」といったように、FIT型太陽光発電の運用にメリットを感じている方もいるのではないでしょうか。
FIT型太陽光発電は、固定買取価格で売電を行える反面で20年間の期限があり、規制も強化されています。そこで最後は、非FIT型太陽光発電がおすすめの理由について解説していきます。
売電価格より電気料金の方が高い
FIT型太陽光発電の固定買取価格は、電気料金の電力量単価より安い状況です。たとえば、東北電力の高圧電力と2023年の固定買取価格は、以下のとおりです。
電気料金 | 電力量料金の単価 |
---|---|
東北電力:高圧電力 | 1kWhあたり29.9円、7月1日から9月30日までは1kWhあたり30.89円 |
FIT制度:出力10kW以上50kW未満 | 1kWhあたり10円 |
上記のケースでは、売電収入では電気料金の負担をカバーできません。つまり2023年からFIT制度で売電を行っても、電気料金の方が高く、経済的メリットの少ない状況です。
一方、非FIT型太陽光発電なら、自家消費や売電どちらも選択できます。自家消費の場合は、電気料金の負担を直接削減することが可能です。また売電の場合は、電力会社と相対契約を交わして提示された単価で売電を行います。売電単価は安い可能性があるものの、自家消費へ切り替えやすいので、状況に合わせた事業展開を継続できます。
環境価値を保つには非FITでなければいけない
脱炭素経営という観点を重視したい場合は、非FIT型太陽光発電の方がおすすめです。
前半でも触れたように、FIT型太陽光発電の電気には環境価値が含まれていません。そのため、RE100といった環境価値のついた電力を必要とする国際的イニシアチブへ参加できませんし、環境価値の高い電力というアピールもできません。
非FIT型太陽光発電は、「環境価値+電力」という特徴を持っているので、企業価値を向上させやすく、RE100などへ参加することも可能です。
太陽光発電はブロックチェーンと組み合わさることでより発展していく!
太陽光発電事業は、ブロックチェーンと組み合わさることでさらに発展しつつあります。また、ブロックチェーン技術を活用した太陽光発電関連サービスが展開されれば、太陽光発電の売電や太陽光パネルのパネル売却などもスムーズに進められるようになる可能性もあります。
太陽光発電の将来性に期待している方や脱炭素経営のために何か対策を打ちたいという方は、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
とくとくファーム0では、脱炭素経営を目的として太陽光発電を導入したい企業様に向けて、太陽光発電用地の斡旋から太陽光発電物件の紹介と売買仲介、非FIT型太陽光発電の施工やメンテナンス、運用方法に関するサポートまで行っています。
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