2023年5月31日の参院本会議で、GX脱炭素電源法という法律が可決されました。これは再エネ特措法や電気事業法などの改正に関する内容で、太陽光発電事業者にとっても関係があります。
そこで今回は、GX脱炭素電源法に盛り込まれている内容や太陽光発電事業に関連した改正内容について詳しくご紹介します。太陽光発電を検討している方やGX脱炭素電源法がよくわからない方などは、参考にしてみてください。
GX脱炭素電源法とは何?
GX脱炭素電源法(脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案)は、脱炭素電源の利用促進を進めながら電力の安定供給を保つための制度を整備していく法案です。
国内のエネルギー環境は厳しい状況で、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻などでエネルギー価格の高騰が止まらず、なおかつ電気料金の値上がりも続いています。さらに火力発電所の老朽化や原子力発電所の稼働停止状態など、電力供給体制に関しても課題が山積みです。
また、上記に加えてグリーン・トランスフォーメーション(GX)(クリーンエネルギーへの転換を図り社会の変革を目指す取り組み)の取り組みが求められていて、電力の安定供給とクリーンエネルギーの普及という2つの目標を達成しなければいけません。
そこで国は、GX脱炭素電源法という電力の安定供給と脱炭素電源の普及促進策に関する改正法を2023年2月10日に閣議決定、同年5月31日に成立させました。
GX脱炭素電源法で何が定められた?
GX脱炭素電源法には、太陽光発電を含む再生可能エネルギーの導入拡大策(普及促進)や電力供給量向上などにつながる原子力発電の活用に関する内容が含まれています。
太陽光発電を活用した脱炭素経営を検討している方にも関わる部分があるので、この機会に把握しておきましょう。続いては、GX脱炭素電源法で何が定められたのかわかりやすく解説していきます。
地域と共生した再エネの最大限の導入促進
GX脱炭素電源法で定められている項目の1つは、「地域と共生した再エネの最大限の導入促進」です。
脱炭素社会を達成するには、再生可能エネルギー事業の発展や市場拡大などが必要不可欠です。「地域と共生した再エネの最大限の導入促進」には、再生可能エネルギーの普及へ向けた支援策が盛り込まれています。
以下に各支援策の概要をわかりやすく紹介します。
項目 | 概要 |
---|---|
再エネ導入に資する系統整備のための環境整備 | ・特に重要な送電線の整備計画について、経済産業省が認定していく制度を新設 ・再生可能エネルギーの利用促進につながる計画に関しては、工事に着手した段階から系統交付金(再エネ賦課金)を交付 ・電力広域的運営推進機関で担う業務の中に送電線の整備に関する貸付業務を追加 |
既存再エネの最大限の活用のための追加投資促進 | 太陽光発電の更新や増設を促進させるため、新しい買取価格制度を新設 |
地域と共生した再エネ導入のための事業規律強化 | ・法令を違反している業者に対しては、FITやFIP制度に含まれる国民負担の支援を一時保留、法令違反が解消されれば返還される ・委託先事業者に監督業務を課す |
出典:内閣官房ホームページ
太陽光発電で売電を行う方にとって関係のある項目は、再エネ特措法の改正案に含まれている「既存再エネの最大限の活用のための追加投資促進」です。
太陽光パネルや設備更新や増設に対する規制が緩和されるため、売電収入を伸ばしたい方にとって要注目の内容と言えます。同内容に関しては、後半で詳しく解説します。
安全確保を大前提とした原子力の活用・廃炉の推進
GX脱炭素電源法で定められているもう1つの項目は、「安全確保を大前提とした原子力の活用・廃炉の推進」です。
以下に改正案の主な概要を紹介します。
項目 | 概要 |
---|---|
原子力発電の利用に係る原則の明確化 | 原子力発電の運用にかかるルールや責務などの明確化 |
高経年化した原子炉に対する規制の厳格化 | 稼働歴30年を超えた原子力発電所に関しては、10年以内に技術的評価を行う必要がある |
原子力発電の運転期間に関する規律の整備 | 原子力発電の運転期間を40年間とし、防災対策やGXへの貢献、電力安定供給の確保などに関して経済産業大臣の認可を受けた場合に運転期間の延長が可能 |
円滑かつ着実な廃炉の推進 | 使用済燃料再処理機構の業務に廃炉に関する研究開発や設備調達などを追加 |
出典:内閣官房ホームページ
火力発電と異なり原子力発電は、化石燃料不要で24時間発電を継続することが可能です。また変換効率30%台と他の発電設備より高く、なおかつ20年・30年と長期間運用できます。
化石燃料の価格高騰やGXへ向けた動き、火力発電所の劣化および稼働停止といったエネルギー問題は、原子力発電の活用によって改善できる可能性があります。一方、原子力発電の安全対策については議論が続いていて、なおかつ多くが稼働停止中です。
そこで国は、原子力発電の安全対策強化および再稼働・長期稼働へ向けて、さまざまな法律の改正・追加を行いました。
GX脱炭素電源法の成立で太陽光発電はどうなる?
GX脱炭素電源法の成立によって、太陽光発電オーナー・事業者はメリットを得られる可能性がある反面、注意すべき点もあります。
そこでここからは、GX脱炭素電源法の成立による太陽光発電事業者への影響を詳しく解説していきます。
増設したパネルの買取価格のみ更新される
FIT制度やFIP制度の認定を受けている太陽光発電事業者は、太陽光パネルの増設を行う際に買取価格の適用範囲が変わる点に注目です。
これまでのルールでは、太陽光パネルの増設を行う場合、増設分の出力が3kWもしくは出力の増加率3%以内でなければ、認定当初の買取価格を適用してもらえませんでした。また、太陽光パネルの張替えに伴う出力増加の場合も、同様の規制が定められています。
そのため、太陽光発電の設備を拡張した場合、電力の買取価格が下がる可能性があり、柔軟に運用および実行できませんでした。
しかしGX脱炭素電源法の成立後は、増設した太陽光パネルにのみ低い買取価格が適用されます。太陽光発電全体の買取価格低下を避けられるので、太陽光パネルの張替えと増設が検討しやすくなり、売電収入の維持という点でも大きなメリットです。
違反している事業者は国民からの支援が一時的に留保される
FIT制度やFIP制度の認定を受けて再生可能エネルギー発電設備を導入する際、関係法令について違反していると国民負担による支援を受けられなくなります。また、返還命令を受けた場合は、既に受け取った支援額を返還する必要があります。
国民負担による支援とは、支援額のことです。
違反している事業者に対して厳しい措置が行われる一方、電気料金を負担している全ての国民にとっては妥当な内容と言えます。
なお、関係法令の違反が解消された場合は、支援額の取り戻しが認められています。
工事へ着手した段階で系統交付金の交付
再生可能エネルギー発電設備を導入する際、再生可能エネルギーの利用促進につながる内容とみなされれば、運転開始後だけでなく工事の着工段階で系統交付金を交付してもらえるようになります。(系統交付金:再エネ賦課金)
従来は、あくまで再生可能エネルギー発電設備の設置および運転開始後でなければ、系統交付金を受けられませんでした。
GX脱炭素電源法の成立後は設置工事を始めた際に交付してもらえるので、設置費用の負担を早い段階でカバーできます。太陽光発電事業をこれから検討する方や増設工事を検討している方、どちらにとってもメリットがあります。
FIT制度に頼らない非FIT型太陽光発電もおすすめの理由
2023年のGX脱炭素電源法成立によって、FIT・FIP制度を活用している太陽光発電事業者は、買取価格の低下を抑えながら太陽光パネルの増設を進めることが可能になります。
ただし、太陽光発電事業をより効率よく活用していくためには、売電収入に頼らない非FIT(非FIP)型太陽光発電の導入も重要です。
そこで最後は、非FIT型太陽光発電が脱炭素経営という点でもおすすめの理由を紹介していきます。
再エネ関連の枠組み「RE100」などへ参加できる可能性がある
非FIT型太陽光発電を導入した場合、再生可能エネルギーや脱炭素関連の枠組みへ参加できる可能性があります。また、脱炭素関連の枠組みに参加して実績を積んでいけば、自社の環境価値や信頼性の向上を図ることが可能です。
脱炭素関連で代表的なRE100は、世界や国内の企業が参加している国際的なイニシアチブです。事業活動で消費している全ての電力を再生可能エネルギーでまかなうという目標に賛同した企業が、RE100へ加盟申請および加盟しています。
RE100へ加盟できた場合、投資家や企業・消費者から環境に配慮された企業として認識してもらえますし、企業価値の向上につながります。
なお、RE100へ加盟するには、再生可能エネルギー発電設備の導入や再生可能エネルギー由来の電力を調達、環境価値証書の購入といった3種類の方法を取り入れる必要があります。
また太陽光発電を導入している場合は、非FIT・非FIP型でなければRE100の申請条件を満たせません。これから自社の環境価値を高めていくには、非FIT型太陽光発電の方がおすすめです。
FIT制度やFIP制度の影響を受けずに運用できる
FIT・FIP制度の影響を避けられるのは、非FIT型太陽光発電のメリットと言えます。
FIT制度やFIP制度は、電力の買取価格に関する強みがある一方、認定に関するさまざまな要件や廃棄費用の積立制度など、規制も数多く存在します。
より自由に太陽光発電を活用したビジネスを展開していくには、FITやFIP制度に頼らない方法で事業計画を策定していくのも大切です。
弊社とくとくファーム0では、非FIT型太陽光発電を活用した脱炭素経営へ向けてさまざまなサポートやアドバイスを行います。脱炭素経営の方法がわからない方は、お気軽にご相談ください。
効率よく電気料金を削減できる
非FIT型太陽光発電は、売電だけでなく自家消費を軸にした運用も進められます。
売電の場合は、発電量だけでなく電力の買取単価によって収益が大きく変わります。しかし、FIT制度の固定買取価格は下落傾向であり、FIP制度の買取単価は電力需給によって変動していてアグリゲーションサービスの活用も必要です。(アグリゲーション:電力需給に合わせた電力制御などを行う専門サービス)
電気料金の値上げが続く2023年時点では、売電より全量自家消費の方が効率よく負担を削減しやすい状況だと言えます。
また、非FIT型太陽光発電による自家消費であれば、電気料金に含まれる再エネ賦課金や燃料費調整額といったコストも直接削減することが可能です。
脱炭素経営と同時に自社の固定費削減を目指している場合は、非FIT型太陽光発電を検討してみるのがおすすめです。
GX脱炭素電源法は太陽光発電に追い風!導入を検討してみよう!
GX脱炭素電源法は、再生可能エネルギーと原子力発電の規制や制度に関する改正案が含まれた法律です。FIT・FIP制度の認定を受けた太陽光発電で太陽光パネルを増設する場合は、増設分のパネルのみ買取価格が見直されます。
なお、太陽光発電の売電収入だけでなく環境価値などを活かしたい時は、非FITの方がおすすめです。
脱炭素経営の方法に悩んでいる方や自社の電気料金負担増加を解決したい方は、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
とくとくファーム0では、脱炭素経営という視点で非FIT型太陽光発電の設置・運用をサポートいたします。また、導入時に活用可能な補助金制度のご紹介やサポートも行いますので、お電話やWebフォームよりお気軽にご相談ください。無料の個別セミナーでは、脱炭素経営の基礎も含めてご説明いたします。