太陽光発電と蓄電池の併用は、自家消費型発電の効率をより向上させる一方で、課題もあります。
本記事では、自家消費型太陽光発電と蓄電池を併用するメリットとデメリット、そしてそれらを適用する際に必要となる産業用蓄電池について詳しく解説します。
なぜ今、自家消費型太陽光発電が注目されるのか
自家消費型太陽光発電とは何かをまず説明します。ここでいう「自家消費」とは、自身で生み出した電力を、日常生活やビジネス運営のために利用することを指します。
わかりやすくいうと、「自分たちが使う電力は自分たちで作る」ことです。
2019年頃までは、産業用太陽光発電は「全量売電」、つまり生産した電力全量を売却することが一般的でした。家庭用とは異なるため、その差別化を図る意味でも、「自家消費型太陽光発電」と呼ばれています。
では今、自家消費型太陽光発電が注目を浴びているのか。主な理由を見てみましょう。
売電価格の低下
固定価格買取制度(FIT)による売電価格が減少し続けています。
売電による利益をメインとしたビジネスモデルは、現実的ではなくなってきています。
なぜなら、10kW以上50kW未満の太陽光発電では、2012年の売電価格が1kWhあたり42円だったのに対し、2023年では同じく1kWhあたり11円へと大幅に低下しているためです。
電気代の高騰
売電価格の低下とは対照的に、燃料価格の高騰などの影響で、企業や個人が負担する電気料金は引き続き高止まりしています。
非常時の事業継続性への懸念
地震や豪雨といった自然災害が発生した際、電力インフラが停止すると事業に深刻な影響をおよぼします。このような停電リスクへの対策として、自家消費型太陽光発電による事業継続性の確保が必要となっています。
これらが主な理由で、自家消費型太陽光発電は現在、我々の注目を集めています。
企業における太陽光発電と蓄電池を併用する魅力とは
まず、太陽光発電と蓄電池を併用することの魅力をご紹介します。
自家消費型太陽光発電の効率と柔軟性の向上
自家消費型太陽光発電システムは、蓄電池と併用することで、その効果と効率性が大幅に向上します。
具体的には、エネルギー管理システム(EMS)を搭載した蓄電池を使用すると、電力の消費が高まる時間帯に自動的に放電するなど、電力供給のバランスを調整する運用が可能となります。この結果、電気料金の節約につながります。
太陽光発電補助金の基準に蓄電池の導入が求められている
2023年以降、太陽光発電関連の補助金を提供する際の評価基準として、蓄電池の導入が重要視されます。
例えば、経済産業省の補助金資料では、「蓄電池併設型の太陽光発電システム導入への支援を拡大する」との記述が見られます。また、環境省の補助金では、「蓄電池(V2H充放電設備を含む)の導入は必須」と明示されています。
これは政府がストレージパリティ(蓄電池を設置しないよりも設置した方が経済的に有利となる状態)を達成し、蓄電池の普及を加速させる意図があるからです。
このような背景から、企業における太陽光発電と蓄電池の組み合わせは、今後ますます重要となるでしょう。
蓄電池を組み合わせた自家消費型太陽光発電のメリット
企業における自家消費型太陽光発電と蓄電池を併用するメリットを解説します。
非常時の電力供給として期待できる
地震や台風など、自然災害による停電のリスクは増大しています。自家消費型太陽光発電を導入している企業は、自然災害が発生しても、昼間は太陽光発電で生成された電力を利用し、事業の継続に役立っています。
しかし、夜間や天候不良時の発電には制限があります。この問題を解決するのが蓄電池です。昼間に生成した電力を蓄えておき、必要に応じて使用することで、時間帯や天候に関わらず電力供給の安定性を保つことができます。
最近では、自然災害発生時の従業員の安全確認、取引先との緊急連絡、事業継続(BCP)におけるバックアップ電源として、自家消費型太陽光発電と蓄電池を活用する企業が増えています。
電力の利用効率向上によるコスト削減
自動制御機能を持つ蓄電池を併用することで、発電と消費の電力バランスを自動で最適化することが可能になります。
電力会社との契約では、「30分間の電力消費平均値」をデマンドと呼び、過去12ヶ月間(当月含む)でデマンドが最も高い時の値(最大デマンド)が電気料金の基本となります。
太陽光発電と蓄電池の併設により、電力消費が高まる時間帯に自家発電した電力を使用することで、デマンドコントロールが可能になり、結果として電気代削減に効果的です。
CSR活動の一部としての再生可能エネルギーの活用とビジネスイメージの向上
太陽光発電と蓄電池の併設は、CSRと呼ばれる、企業の社会的責任に対する取り組みの評価を高めます。
再生可能エネルギーを活用することはもちろん、蓄電池による災害時の事業継続能力の向上は、企業が社会的責任を果たすための具体的な行動として認識されます。
加えて、これらの取り組みは、取引先からの評価や信頼を得る助けとなり、特に脱炭素化に取り組む企業や、災害時でもサプライチェーン全体の停止を避けたい企業からの支持を集める可能性があります。これにより企業の競争力を向上させ、ビジネスの持続可能性を強化することが可能です。
蓄電池を組み合わせた自家消費型太陽光発電のデメリット
続いて、企業における自家消費型太陽光発電と蓄電池を併用するデメリットを解説します。
定期的なメンテナンスと交換が必要
蓄電池は基本的に耐用年数があり、使うにつれて性能が低下します。したがって、その寿命が来ると蓄電池の交換が避けられません。さらに、パワーコンディショナーも約10年を目途に交換が必要になることがあります。
適切な設置スペースが必要
産業用の蓄電池はサイズが大きいため、一定の設置スペースが必要になります。
さらに、制御盤やパワーコンディショナー、そして冷却のための通気経路など、関連設備の導入スペースも考慮に入れる必要があります。
投資回収期間の長さ
メーカーによって多少の変動はありますが、一般的に産業用蓄電池の価格は15万円から20万円/kWh前後(工事費は別途)と、大きな投資が必要です。
太陽光発電と産業用蓄電池を同時に導入する場合、投資回収期間は太陽光発電のみの導入に比べて長くなります。
一部の企業では、高額な産業用蓄電池の導入を避け、特定の部屋だけをバックアップする家庭用蓄電池の導入を選ぶケースもあります。
しかし、国や自治体の補助金制度を利用することで、太陽光発電と蓄電池の導入コストを軽減することも可能です。そのため、導入を検討する際には、補助金の情報を定期的に確認することをおすすめします。
自家消費型太陽光発電における産業用蓄電池とは
太陽光発電によって生成した電力を一時的に保存するための蓄電池は、いくつかの種類が存在します。それぞれの特徴と利用シーンを詳しく解説します。
蓄電池の種類と特徴
リチウムイオン電池
コンパクトで急速充電が可能な蓄電池です。費用は他の蓄電池と比べて高めですが、寿命は約10年と短いです。その一方で、設置スペースが限られている場合に適しています。
鉛蓄電池
リチウムイオン電池に比べてコストが低く、長時間の安定した放電が可能です。一方、他の蓄電池と比較すると大型であるため、設置スペースに制限があります。
ニッケル水素蓄電池
価格はリチウムイオン電池と鉛蓄電池の中間程度ですが、寿命は約7年と短いというデメリットがあります。
NAS蓄電池
エネルギー密度が高く、コンパクトで寿命が約15年と長いという特長があります。しかし、作動温度が300℃程度と高く、常温では作動しないなどの問題があるため、一般的な普及には課題があります。
蓄電池の導入費用
家庭用蓄電池の場合、最も人気のある5kWhや7kWhモデルは、本体と工事費を合わせて約80万円から200万円程度。しかし、10kWh以上の容量や高性能な製品を選択すると、200万円以上の投資が必要になる可能性があります。
一方、産業用蓄電池の場合、2023年度のデータに基づくと、工事費を含めて1kWhあたり約25万円が平均的な費用となります。ただし、メーカーや施工業者により価格には幅があり、厳密な定価を提示するのは難しい状況です。
大規模な事業所で使用する電力を賄うような蓄電池容量を導入しようとすると、蓄電池の導入費用だけでも一千万円以上かかる可能性があります。
自家消費型太陽光発電と蓄電池の併用でうまくコスト削減を!
自家消費型太陽光発電と蓄電池の併用は、エネルギーコストの削減や電力供給の安定化、緊急時の電力確保といった大きなメリットを提供します。
一方で、蓄電池の定期的な交換、設置スペースの確保、そして初期投資の回収に時間がかかるというデメリットも考慮する必要があります。
最適な蓄電池の選択や適切な設置計画を立てることで、これらの課題を解決し、持続可能なエネルギー源として自家消費型太陽光発電を活用することが可能です。
和上ホールディングスの自家消費型太陽光発電サービスは、全量自家消費型太陽光発電の企画設計から施工、保守点検、運用までサポートいたします。また、蓄電池も豊富な種類を取り扱っておりますので、それらも含め、電話やWebフォームからお気軽にご相談ください。