FIT制度の管理を行っている経済産業省では、2024年度の売電価格引き上げについて発表しました。特に工場や倉庫を所有している企業は注目すべき内容なので、早めに詳細を確認しておくのが大切です。
そこで今回は、2024年度の売電価格引き上げや対象施設、注意点について詳しくご紹介します。FIT認定を受けて売電収入を得たい方や高い売電価格で売電を行いたい方などは、参考にしてみてください。
2024年度の売電価格はいくら?
FIT制度の「固定買取価格=売電価格」は、1kWh単位で示されています。2023年度にFIT認定を受けた場合は、2023年度の固定買取価格が適用される仕組みです。それでは、2024年度の固定買取価格を出力別に見ていきましょう。
出力10kW未満は2023年度と変わらない
2024年度に出力10kW未満の住宅用太陽光発電でFIT認定を受ける場合は、2023年度と同じ固定買取価格で売電を始めることが可能です。
2024年度の固定買取価格は16円/kWhで、2023年度から据え置きとされています。固定買取期間についても変更点はないので、認定年から10年間固定買取価格で売電を継続できます。
買取方法については余剰買取方式であり、過去の方式と変わりません。
なお、固定買取期間終了後に想定される売電価格は10円/kWhで、2022年度より1円上がっています。
出力10kW以上50kW未満は据え置き
2024年度に出力10kW以上50kW未満の太陽光発電でFIT認定を受けた場合は、2022年度と同じく10円/kWhで売電を始められます。
システム費用に大きな変動はないものの、土地造成費用が0.4万円/kWから1.2万円/kWへアップしているため、固定買取価格の調整が行われませんでした。
また、固定買取期間に変更点はないので、FIT認定年から20年間固定買取価格で売電を継続できます。ただし、地域活用要件は適用され続けており、発電した電気のうち30%以上を自家消費する必要があります。
出力50kW以上は9.2円と0.3円低下
2024年度に出力50kW以上250kW未満の太陽光発電でFIT認定を受ける場合、9.2円/kWhの固定買取価格で売電を行うことが可能です。
2023年度の固定買取価格は9.5円/kWhだったので、0.3円安くなっています。土地造成費用の負担は8,000円程度増えるものの、システム費用は4,000円程度安くなる想定です。そのため、固定買取価格は下落方向で更新されます。
固定買取期間に変更点はなく、FIT認定年から20年間全量買取を行ってもらえます。
出力250kW以上はFIP制度に統一される
2024年度に出力250kW以上の太陽光発電を導入する場合は、FIP制度のみ認定を受けられるルールへ変わります。
FIP制度は、市場価格に沿って売電価格が変動します。適用期間はFIP認定年から20年間なので、長期間制度を活用することが可能です。
2023年度までは、出力250kW以上500kW未満の太陽光発電について、入札制のFIT制度とFIP制度を選択可能な状況でした。しかし、2024年度からはFIP制度しか選択できないため、事前に制度の仕組みや注意点について把握しておく必要があります。
とくとくマガジンではFIP制度の仕組みや特徴も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
2024年度に屋根設置の売電価格が新設!
FIT制度では、2024年度から新たに屋根設置に関する固定買取価格が新設される予定です。屋根設置は、ビルや工場、倉庫といった建物の屋根に設置された太陽光発電を指しています。
出力10kW以上の屋根設置型太陽光発電を運用する場合は、12円/kWhの固定買取価格で売電を始められます。固定買取期間は20年間で、出力10kW以上の地上設置型太陽光発電と変わらず長期間制度を活用することが可能です。
地上設置型太陽光発電の固定買取価格より高く設定されているため、売電収入を伸ばしたい事業者にとってメリットの大きな内容といえます。
2024年度の屋根設置に関する売電価格が高い理由
続いては、屋根設置型太陽光発電の売電価格が高い理由や新設された背景についてわかりやすく紹介します。
屋根設置の導入を促進させるため
屋根設置型太陽光発電の固定買取価格が新設された主な理由は、屋根設置の導入を促進するためです。
政府の目標「2050年のカーボンニュートラル達成」には、さらに太陽光発電の設置を増やさなければいけません。しかし、地上設置には地盤の状態、地域の反対や自治体の規制条例など、さまざまな制約もあります。
そこで屋根設置型太陽光発電の固定買取価格を地上設置より高く設定すれば、太陽光発電の導入数を増やすことが可能です。
ペロブスカイト型太陽電池の製品化が目前に迫っている
ペロブスカイト型太陽電池の製品化が目前に迫っていることも、屋根設置用の固定買取価格新設と関係あるといえます。
ペロブスカイト型太陽電池は、ペロブスカイト膜を塗布することによって簡単に製造可能で、なおかつ薄型軽量の太陽光パネルといった特徴を持っています。
耐久性などの点から屋根に太陽光パネルを設置できない建物も、ペロブスカイト型太陽光パネルなら設置できる可能性があります。
なお、実用化は2025年前後と予測されています。
屋根設置型太陽光発電の固定買取価格新設との相乗効果で、屋根型設置件数の促進につながる可能性があります。
売電価格割増に向けて準備すべきこと
最後は、固定買取価格据え置きおよび屋根設置向けの固定買取価格新設に備えて、太陽光発電事業者が準備すべきことを確認していきましょう。
屋根設置型太陽光発電を検討する
工場や倉庫、ビルなどを所有している企業は、屋根設置型太陽光発電の導入を検討してみるのがおすすめです。
2024年度の固定買取価格は、屋根設置型太陽光発電の方が地上設置より1kWhあたり2円高い設定です。出力100kWの太陽光発電なら、1kWhあたり2円の違いで売電収入を年間約23万円程度伸ばせる可能性もあります。
また、遊休地や地上設置型太陽光発電の設置が可能な土地を所有していなくとも、太陽光発電事業を始められるのは、屋根設置ならではの強みといえます。
設置後は定期的なメンテナンスと調整を行う
屋根設置型にかぎらず太陽光発電を設置したあとは、定期的にメンテナンスを行う必要があります。
太陽光発電設備は、メンテナンスフリーではありません。保守管理を怠ると、太陽光パネルや配線類、パワーコンディショナなどの故障や劣化に気付かず、発火や故障、発電量低下といったトラブルにつながってしまいます。
改正FIT法では、太陽光発電のメンテナンス義務が含まれています。太陽光発電およびFIT制度を活用する際は、改正FIT法のメンテナンスに関する内容を確認しておきましょう。
O&M業者からの報告を確認しながら運用方法を見直す
太陽光発電事業を行う際は、O&M業者からの点検や発電量といった報告を確認し、運用方法を見直したり改善案を考案したりするのが大切です。
O&M業者は、定期的なメンテナンスや遠隔監視、緊急時の駆けつけ対応の他、保守点検結果のレポートを作成しています。レポートを確認すれば、発電量や発電効率、設備の状況などを細かく把握しています。
たとえば、ホットスポットの発生によって発電量低下や太陽光パネルの劣化につながっていたら、原因究明や太陽光パネルの交換といった選択を考えることが可能です。他にも発電効率に課題がある場合は、パワーコンディショナの交換、太陽光パネルの設置角度調整といった対策をO&M業者と検討できます。
このようにO&M業者へ管理を依頼すれば、運用中のさまざまな問題や改善点を早期に発見したり対策をとったりできるのです。
2024年度の売電価格引き上げに向けて太陽光発電の管理を見直そう!
2024年度の固定買取価格は、2023年度と据え置きもしくは少し下落します。また、出力10kW以上の屋根設置型太陽光発電は、固定買取価格12円/kWhと地上設置型太陽光発電より高く設定されています。
そのため、これから売電収入を得るために太陽光発電を始める時は、屋根設置を検討してみるのがおすすめです。
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