排出量取引所を東証が設立予定!仕組みや最新情報を紹介

排出量取引所を東証が設立予定!仕組みや最新情報を紹介

東京証券取引所(東証)では、2023年秋に排出量取引所の常設取引を予定しています。どの業種の企業にとっても注目の内容なので、早めに内容を把握しておくといいでしょう。

そこで今回は、排出量取引所の概要や仕組み、企業への影響について詳しくご紹介します。脱炭素経営関連の情報を収集している方や排出量取引所の詳細について知りたい方などは、参考にしてみてください。

排出量取引所とは?

日本における排出量取引所(排出権取引所)とは、二酸化炭素排出枠の取引が行なわれる取引所のことです。

近年、各国では気候変動問題の解決策として、カーボンプライシングというシステムを導入し始めています。カーボンプライシングとは、二酸化炭素に価格を定めて、排出量を減らしていく考え方のことです。

例えば、炭素税もカーボンプライシングの1つで、二酸化炭素排出量を減らせば課税負担を抑えられます。すると国全体の二酸化炭素排出量を減らせる可能性が出てきます。

もう1つの方法が、排出量取引所です。自社目標もしくは国から指定された目標より二酸化炭素排出量が多い場合、排出量取引所を通じてカーボンクレジットを他社から購入します。

カーボンクレジットには二酸化炭素の削減実績が示されているので、自社の二酸化炭素排出削減量に加えられます。

このようにカーボンクレジットの購入と自社の環境対策を組み合わせれば、より効率的に二酸化炭素削減目標を達成することが可能になります。また、カーボンクレジットを作り出せる企業は、新たな収益源につながります。

日本の排出量取引所はいつから?

2023年8月時点、国では排出量取引所を開設していないものの、本格的な導入を目指してテスト的な排出量取引所の運用をはじめ、さまざまな準備が進められています。

続いては、排出量取引所のスタート時期や2023年8月時点の動向についてわかりやすく紹介していきます。

2022年9月に試行取引を実施

2022年9月、東京証券取引所は試行取引(テスト)を実施しました(東京証券取引所:株式をはじめ金融商品の取引が行われているところ)。

試行取引では、本格的な取引と同じくカーボンクレジットの価格が公示され、市場を通じて企業間の取引を進められます。また、カーボンクレジット市場システムというカーボンクレジットを購入・売却するための専用システムも実証実験に取り入れられていて、実践的な取り組みと言えます。

出典:経済産業省

2023年秋頃に常設取引予定

2023年6月、東京証券取引所は、2023年10月頃に排出量取引所を開設および常設させることを発表しました。

これにより、日本で初めての排出量取引所が、2023年中に本格稼働することになります。

排出量取引所の参加申請については、同年7月頃から始まっています。参加企業に対しては、カーボンクレジット市場システムなどをはじめとしたシステムへの接続テストを実施し、本格的な稼働へ向けた準備も順次進められています。

なお、株式取引のように常時価格は公示されず、買い手と売り手の間で取引を進める方式ではありません。

排出量取引所では、買い手と売り手の決済手続きに関して東京証券取引所が間に入ります。また注文の受付時間は、9:00~11:29、12:30~14:59というルールで、11:30と15:00にそれぞれ価格が示され、なおかつ約定(売買)される仕組みです。

注文の際は、1円単位から設定することが可能です。売買の単位は、二酸化炭素1tという決まりです。つまり売買価格1万円なら、二酸化炭素1tの価値が1万円としてみなされます。

出典:日本取引所グループ

排出量取引所とカーボンクレジット制度の違い

J-クレジット制度はあくまで相対取引・入札販売で、なおかつ排出枠の設定などもありません。

排出量取引所と異なり市場での取引ではないため、カーボンクレジットの相場が明確ではありません。また、J-クレジット制度は普及していない状況であり、カーボンクレジットを活用しきれていない側面も見られます。

排出量取引所の常設が実現すれば、カーボンクレジットの相場が明確になり、より公正な取引を進められようになります。また、J-クレジット制度より透明性の高い市場システムになれば、多くの企業が積極的に参入する可能性もあり、将来性の高い取引システムと言えます。

排出量取引全体の流れ

前半で紹介した東京証券取引所による排出量取引所は、あくまで排出量取引制度の一部です。国では、2026年度に排出量取引制度の本格的な構築を目指しています。

排出量取引制度や排出量取引所の意味を知るには、全体の流れを把握しておく必要があります。

ここからは、排出量取引制度全体の流れについて1つずつ確認していきましょう。

1.国などによってCO2削減量の決定や排出枠の発行が行なわれる

まず、国や自治体などが温室効果ガスの削減目標を設定します。すると温室効果ガスの削減目標から逆算して、排出可能な温室効果ガスの枠が導き出されます。

2023年から2024年にかけて二酸化炭素排出量を5%削減させたい時は、基準に対して95%の二酸化炭素を排出枠として定めることになります。排出枠とは、事業活動で排出可能な二酸化炭素量を指します。

このように排出量取引制度では、温室効果ガスの削減目標を先に定めた後、排出可能な量が設定されます。

2.企業に排出枠が分配される

国や自治体などでは、事前に定めた排出枠を各企業に分配していきます。分配方法については、いくつかの種類に分かれています。

オークション方式の場合は、それぞれの排出枠を競売にかけて各企業へ配分していきます。一方、グランドファザリング方式は、企業の温室効果ガス排出実績を基準に排出枠が分配されます。

ベンチマーク方式は、企業の業態やサービス・製品の生産にかかる二酸化炭素排出量を算出し、排出枠が設定される仕組みです。

企業の事業内容や内情に沿って排出枠を定めやすいのは、ベンチマーク方式と言えます。

オークション方式の場合では、資金力のある企業によって排出枠が買い占められてしまうリスクがあります。またグランドファザリング方式は、二酸化炭素排出量の多い企業であればあるほど、排出枠を獲得しやすいという問題も存在します。

ただしベンチマーク方式の場合では、各企業の事業活動を詳細にチェックしなければいけないため、時間と手間という点で課題があります。

3.企業側は排出枠の範囲内に抑えられるよう脱炭素経営を実施

企業は、国や自治体などから分配された排出枠に収まるよう、脱炭素経営を実施していく必要があります。

例えば、年間の二酸化炭素排出量排出枠が100tなら、生産活動を含むすべての事業活動で排出量が100tを超えないようにしなければいけません。

万が一排出枠を超えた状態で事業活動を継続していると、企業には罰則が課される仕組みです。

ただし、企業によっては、さまざまな事情で排出枠の範囲内に二酸化炭素排出量を収められないケースも出てきます。排出枠を超えそうな場合は、排出量取引所でカーボンクレジットを購入し、二酸化炭素削減実績として活用することで対応できます。

排出量取引所と制度実施による企業のメリット

ここからは、排出量取引所および排出量取引制度の稼働で企業にどのようなメリットがあるのか1つずつ確認していきましょう。

CO2削減へ向けた目標が明確で行動しやすい

国主導の排出量取引所・制度の運営は、企業にとって二酸化炭素の削減目標を明確にしやすいと言えます。

自社単体で脱炭素経営を始めていく場合、部門ごとの二酸化炭素排出量を何年までにどの程度削減していくべきか策定していく必要があります。しかし、誤った・厳しすぎる削減目標は、生産活動の低下による売上減少といったリスクを招きます。また、ノウハウ不足で策定に時間がかかる可能性も出てきます。

排出量取引制度によって排出枠が分配されれば、二酸化炭素の削減量を簡単に定められます。また企業の現状に合った排出枠なら、無理のない範囲で脱炭素経営を進めることが可能です。

排出量取引所という選択肢があるため低コストで削減行動が可能

排出量取引所という選択肢は、コストを抑えながら二酸化炭素の削減行動を進められます。

排出枠の内容によっては、莫大なコストをかけて省エネ設備の導入や生産設備の改修作業を始めなければいけないケースも出てきます。それでも二酸化炭素削減目標の達成が難しい場合は、罰則を受けるか、さらに費用をかけて事業活動の内容を改めなければいけません。

排出量取引所があれば、自社の設備や生産方法を変更しなくとも二酸化炭素削減実績をカーボンクレジットという形で実現できます。

J-クレジット制度で売り出されているカーボンクレジットの場合、市場価格ではないものの、二酸化炭素1tあたり1万円前後で推移しています。

設備改修のコストや手間を考慮すると、比較的低コストかつ手軽な方法といえます。

持続可能な社会の実現に近づく

排出量取引所の開設と制度の構築で二酸化炭素削減方法が多様化されれば、持続可能な社会に近づけるようになります。

持続可能な社会とは、地球環境を守りながらさまざまな活動や開発を続けられるだけでなく、将来の世代にとって損失を生まない社会のことです。

現在の社会は、環境に配慮した制度や仕組みが十分に整っていません。

排出量取引所の開設は、企業だけでなく個人の生活、未来の社会にとってもメリットのある取り組みといえます。

排出量取引所と制度実施による企業のデメリット

続いては、排出量取引所の開設や制度の構築による企業のデメリットについて解説します。

企業によっては規制の厳しい国で生産活動を行なう可能性も

排出量取引所の開設と排出量取引制度の構築は、カーボンリーケージを発生させる可能性もあります。

カーボンリーケージとは、環境規制の厳しい国から緩い国へ企業が工場などを移転し、環境対策の進まない状況下で生産活動やサービスを継続する問題のことです。

すると、二酸化炭素排出量の削減効果を伸ばせませんし、環境規制の緩い国を中心に汚染が進むおそれもあります。

排出量取引制度に潜むカーボンリーケージを抑えるには、国主導で排出枠の調整や企業への支援策を柔軟に設定していく必要があります。また、企業は倫理観を高める研修を進めるなど、社会や環境に対する意識をアップデートするのが大切です。

排出枠が現状に合っていないと企業のコストが増大してしまう

万が一排出枠が企業の現状に合っていない場合、負担増加や削減目標未達成といったリスクにつながります。

排出量取引制度で重要なポイントは、排出枠の設定です。極めて厳しいレベルの排出枠が設定されてしまうと、多くの企業は無理な環境対策によるコスト増加だけでなく、生産活動の縮小も余儀なくされてしまいます。

また、排出量取引所で二酸化炭素排出量をカバーできたとしても、大量に購入すればコスト増加につながります。

排出枠の購入に依存してしまうとCO2削減につながらないリスク

排出量取引所に企業が依存してしまうと、かえって二酸化炭素の削減技術に関する開発に影響を与えます。

二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスや環境汚染物質の削減に関する技術開発には、開発コストがかかります。しかし、企業が排出量取引所に頼ってしまうと、カーボンクレジットの購入費用の負担がかかります。すると開発予算の減少につながるため、脱炭素経営という点でデメリットといえます。

脱炭素経営を進めるには非FIT型太陽光発電の導入がおすすめ

排出量取引所や排出量取引制度には、デメリットや課題もあります。特に排出枠の設定が厳しい場合、排出量取引所でのカーボンクレジット購入、莫大な費用をかけた自社設備の省エネ化といったコスト面での負担も懸念されます。

今から環境対策を進める場合は、非FIT型太陽光発電を検討してみるのがおすすめです。最後は、非FIT型太陽光発電の特長について紹介します。

自家消費による大幅なCO2削減が可能

非FIT型太陽光発電の場合、全量自家消費による大幅な二酸化炭素排出削減効果を見込めます。

非FIT型とは、FIT制度の認定を受けずに運用する再生可能エネルギー設備のことです。非FIT型太陽光発電なら、FIT制度の制約と関係なく運用できますし、自家消費という選択も検討できます。

また自家消費の場合は、火力発電由来の電力を購入することなく、一定量の電力を太陽光発電でカバーすることが可能です。さらに、太陽光発電の自家消費によって削減した二酸化炭素量は自社の実績として活用できますし、企業価値アップにつながります。

環境価値のある電力を供給することが可能

非FIT型太陽光発電を活用して、再エネ電力の供給も検討することもできます。

またFIT型太陽光発電の電力は、再エネ賦課金の関係から環境価値のない電力としてみなされています。

非FIT型太陽光発電を導入すれば、環境に配慮した100%再エネ電力などのアピールができます。また市場価格に沿って売電できるため、電力需要の高い時期に売電を行なうことが可能です。FIT制度の固定買取価格より高い売電収益を目指せるので、収益という点で見ても非FIT型の方が自由度の高い運用方法と言えます。

排出量取引所の本格稼働は企業にとって大きな影響!脱炭素経営のノウハウを蓄積しよう!

排出量取引所の開設および国による排出量取引制度の準備は、企業にとって見逃せない動きです。また今後、二酸化炭素の排出枠が設定された場合、排出量取引所でカバーするだけでなく、自社で省エネ設備や再エネ設備の導入を含めた対策を打つ必要もあります。

脱炭素経営へ向けて二酸化炭素排出削減実績を作りたい方や自社設備の改修以外で二酸化炭素の排出削減を始めたい方は、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電を導入してみてはいかがでしょうか。

弊社とくとくファーム0では、これから脱炭素経営・再エネ電力を活用したい方に向けて、遊休地を活用した太陽光発電所の開発や非FIT型太陽光発電物件のご紹介など、状況に合わせたプランをご提案いたします。

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