GX金融資産運用特区とは?北海道の取り組みやGX特区について解説

GX金融資産運用特区とは?北海道の取り組みやGX特区について解説

2024年5月24日、国はGX特区に北海道の札幌市を選ぶ方向で動いており、同地域で再生可能エネルギー事業を展開する企業にとって注目のニュースです。

今回は、GX金融資産運用特区の意味や北海道に適用されたGX特区の詳細、太陽光発電事業にとって追い風な理由について詳しくご紹介します。北海道での再エネ事業を検討している方やGX特区を把握したい方などは、参考にしてみてください。

目次

GXリーグについておさらい

GXとは、グリーントランスフォーメーションの略称です。グリーントランスフォーメーションは、経済産業省から提唱されている成長戦略で、化石燃料から再生可能エネルギーへシフトしながら経済や社会システム全体を変革させていく取り組みを指しています。

そして、GXリーグは、新しい社会経済のシステム・市場を作り出す場所で、企業・大学・官公庁などで構成されています。

北海道の提案するGX金融資産運用特区とは

続いては、北海道の提案するGX金融資産運用特区について概要や目標などを確認していきましょう。

GX関連事業を札幌市に呼び込むための規制緩和

金融・資産運用特区とは、地域の金融・資産運用企業が発展しやすいよう制度改革や環境整備をする対象として定めた地域、その制度のことを指します。

令6年1月に国が「金融・資産運用特区」創出に関心のある自治体の公募を開始し、同年6月に北海道が対象地域として決定されました。特区の提案内容には、北海道・札幌市の金融機能強化およびGX関連事業を呼び込むための規制緩和に関する要望・計画が盛り込まれています。

北海道には、洋上風力発電や水素エネルギー、蓄電池などといった再生可能エネルギーに関するポテンシャルがあります。

そこで北海道・札幌市は、風力・水素・AI・スタートアップ企業・高度人材確保といったGX関連事業の環境整備に向けた取り組みを進めていく方針です。さらに札幌市を中心に金融関連機能を強化することで、資金調達しやすい環境作りとGX産業の成長促進を目指しています。

GXの重点分野は水素と風力

北海道の提案するGX金融資産運用特区で重視されているのは、「水素」「再エネ・風力」「AI・スタートアップ」「高度人材確保」の4点です。中でも水素と風力は、GX関連事業において重要視されています。

以下に特区提案の具体的な内容を紹介します。

洋上風力発電の設置数増加と地域経済活性化

特区提案では、洋上風力発電の設置数増加に向けた要望と経済効果などが示されています。

国では各地域の洋上風力発電の設置数に関する目標を掲げています。再エネの目標容量は合計45GWで、うち15GWを北海道が担う計画です。15GWの容量すべてを洋上風力発電で発電するとした場合、約1,000基分の設備に相当する規模です。道内の年間電力需要に対して1.5倍もの発電能力を持ちます。余剰電力は、道内にある次世代半導体工場やデータセンターへのグリーン電力供給が期待できます。

洋上風力発電の設置が増加することで、部品製造・調達関連の事業成長が見込まれます。部品設計や製造・長期の風力発電事業は、地元経済の活性化につながり、メリットの大きな動きといえます。

ただし、洋上風力発電の設置数増加・活用を目指すには、いくつかの課題も存在しています。洋上で作業を行うためには、SEP船( Self Elevating Platform:自己昇降式作業台船 )が必要です。また、大量の洋上風力発電を設置するためには、EEZ(排他的経済水域)の活用も重要といえます。

そこで北海道では、特区提案に上記の課題を解決させるための要望を含めています。

風力発電の電力をグリーン水素に活用

北海道では、洋上風力発電で発電されたグリーン電力を、さまざまな事業や水素へ活用する目標を掲げています。

通常、水素の製造には、天然ガスなどの化石燃料が必要です。しかし、既存の方法では製造過程で二酸化炭素を排出してしまい、環境へ負荷をかけてしまいます。

洋上風力発電の電力を活用した方法は、製造過程で二酸化炭素を排出せずに水素を作り出せるため、環境負荷を抑えながらエネルギーを取り出すことが可能です。

北海道は国産水素の拠点化、水素サプライチェーン構築と需要創出、グリーン水素の活用などを目指しています。(グリーン水素:製造過程で二酸化炭素を排出せずに作られた水素)一方で、グリーン水素の需要創出に関する課題が存在するため、規制緩和の要望を特区提案に含めています。

GX金融資産運用特区の規制緩和に関する項目

北海道の提案するGX金融資産運用特区では、規制緩和に関する項目が複数存在しています。大きくわけるとGX関係と金融関係の2種類で、それぞれ分野ごとに規制緩和の内容や目的などが記載されています。

GX関係の規制緩和に関する項目は以下の通りです。

  • 風力・再エネ
  • 水素
  • AI・スタートアップ
  • 高度人材確保

続いて金融関係の規制に関する項目を紹介します。

  • 資金調達・経営支援
  • 英語行政手続き
  • 情報プラットフォーム・認証制度

上記の中で再生可能エネルギー事業に直接関連する項目は、主に風力・再エネと水素、資金調達・経営支援です。これから再生可能エネルギーをスタートさせたい企業や道内で再生可能エネルギー事業を行う企業などは、どのように規制緩和されていくのか内容を確認していきましょう。

再エネ分野におけるGX金融資産運用特区の規制緩和案

それでは、GX金融資産運用特区の規制緩和案で再エネ分野に関する内容を解説していきます。

洋上風力発電の運用保守に関する規制緩和

洋上風力発電の設置・運用保守に外国船籍を活用可能にするための規制緩和案が提案されています。対象地域は、北海道全域とされています。

洋上風力発電の設置・運用を行うには、SEP船という作業用の船舶を準備しなければいけません。しかし、SEP船は、国内に3隻しか建造されていません。しかし外国船舶を活用するにも、現状では制限があり、洋上風力発電事業を進めにくい環境です。

そこで提案内容では、外国船舶の活用を認める法令改正案の要望が入っています。

洋上風力発電の建設に関する外国人船員に関する規制緩和

洋上風力発電の作業員・技術不足をカバーするための規制緩和案が提案されています。

日本は大規模洋上風力発電の開発実績が少ないため、建設や運用保守に関するノウハウを持った作業員や船員も不足しています。さらに外国人船員の力を借りようとしても、60日ルールにより、60日に一度は作業中断し、海外港への寄港を行わなくてはいけません。そのため、1年で完了可能なプロジェクトが、2年かかる場合もあります。

GX金融資産運用特区の規制緩和案では、60日以内の寄港緩和に関する法令改正が求められています。

EEZで洋上風力発電の設置を加速させる

領海内に加えてEEZでの洋上風力発電開発を加速させるための規制緩和案が提案されています。

洋上風力発電の建設は、領海内で進めることが可能です。しかし、漁業者を含めた地元住民との利害調整が複雑なため、洋上風力発電の導入をスムーズに進められない側面もあります。また、調整に時間がかかってしまうと、2040年までに洋上風力発電の容量45GWを目指す目標を達成することも困難です。

そこで北海道は、洋上風力発電の建設場所に関する法的枠組みの整備、港湾利用や海底ケーブル敷設工事などにおける知事の関与といった要望をまとめています。

政府が一元的に事前調査等を担う

事前調査を政府が一元的に担うための規制・制度改革に関する提案です。

現状、洋上風力発電の拡大を進めるには、事前調査が必要です。環境や生態系への影響などを分析したり、地元の漁業関係者と調整を繰り返したりする必要があります。さらに風況調査(※平均風速や瞬間最大風速など風の状態を調べる作業)に必要な漁港等の利用にあたっては、自治体で漁業関係者などへの説明を実施しなければなりません。

このように事業者や自治体が独自に行動しなければいけない状態は、洋上風力発電の拡大を妨げる大きな課題です。そこで規制緩和案には、セントラル方式(政府、自治体主導)による風況調査や海底地質調査を執行できるよう、制度改革や法改正が求められています。

北海道側の負担を減らす海底直流送電に関する金融支援案

海底ケーブルを使用した送電計画に関する北海道の負担を抑えるための案が提出されています。

国の指針「GX実現に向けた基本方針」では、北海道と本州の間に2GWの海底直流送電の導入・整備が示されています。しかし、海底直流送電を導入するには、1兆円を超える整備費用を調達しなければなりません。また、技術的に難易度の高い手法のため、技術力の高い企業との協力などさまざまな調整が必要とされ、北海道側の負担が大きいです。

本来、再生可能エネルギーの拡大は全国で進めていく内容のため、北海道側に負担が偏っている状況を改善しなければいけません。このような課題から提案内容には、海底直流送電の早期運転開始に向けた金融支援による北海道側の負担軽減が盛り込まれています。

環境アセスを国や地域が一元的に管理

環境アセスメントを原因とする計画の中止や見直しを避けるための規制緩和案も提案されています。

洋上風力発電をはじめとする再生可能エネルギー事業では、事前に環境アセスメント(環境アセス)を実施しなければなりません。ただし、洋上風力発電の実施事例が少なく、環境への影響予測に関する手法や知見も不十分な状況です。

さらに洋上風力発電実施のために設定された区域の事業者を決める公募では、複数事業者による環境アセスメントの手続きが乱立しており、混乱を招いています。規制緩和案では、一定の条件にかぎり環境アセスメントの配慮書・方法書に関する手続きを不要とする特例が盛り込まれています。

商業地域における水素貯蔵量の上限緩和

水素の活用を促進させるための貯蔵量に関する上限緩和が提案されています。

冒頭でも解説したように北海道では、グリーン水素の普及を目指しています。現状、商業地域における水素貯蔵量は700㎥とされており、30kW程度の燃料電池へ水素を使用すると毎日タンクを交換しなければ不足してしまいます。

より実用的にするため、規制緩和案では、圧縮水素の貯蔵量上限規制の適用除外に関する法令改正が含まれています。

水素パイプライン敷設などに向けた規制緩和

インフラを活用した系統増強や、水素パイプラインの敷設に関する規制緩和案もあります。

再生可能エネルギー由来の電力を地域へ供給するには、系統(送配電網)を増強しなければいけないものの、コストや整備の時間、法令の規制といった課題が存在します。

また、水素の供給方法に関しては、タンクローリー輸送よりもパイプラインの方が効率的です。ただし、パイプラインの敷設工事にはコストや規制の問題もあり、現状での拡大は困難にあります。

規制緩和案では、電気事業法・ガス事業法・高圧ガス保安法の規制要件統合や簡素化などが含まれています。同提案が実現した場合には、水素パイプラインの敷設費用削減、系統増強にかかるコスト削減を期待できます。

水素ステーションの保安検査簡素化

水素ステーションにおける保安検査の規制内容に関する緩和案です。

水素ステーションは燃料電池自動車(FCV)へ水素を供給するための設備で、立地や機器、運営などに関する規制の見直しが行われてきました。しかし、保安検査に関しては、年1回の保安検査・自主定期点検の実施が義務付けられています。

自主定期点検については約2週間休業しなければいけないほか、年間2,000万円程度の点検費用といった大きな負担も発生しています。さらに、1日3回以上日常点検を実施しなければいけないため、水素ステーションの運営を行う企業および作業員にとっては安定的な運用が厳しい状況です。

そのため規制緩和案には、日常点検の回数に関する要件緩和が示されています。

GX金融資産運用特区の金融支援に関する要望

再生可能エネルギーを含むGX関連事業の成長には、資金調達や人材の確保も重要です。そこで北海道と札幌市は、GX金融資産運用特区に金融支援に関する内容を盛り込んでいます。

補助金適正化法の要件に関する規制緩和

補助金適正化法とは、補助金の申請・交付などに関する基本的な事柄を定め、不正利用などを防止するための法律のことです。

系統用蓄電システム、水電解装置、ペロブスカイトといった新しい技術を用いた設備や施設には多額の初期費用が必要です。融資や各種支援制度の活用も重要といえます。しかし、補助金によって導入した設備を金融機関の担保にしたい場合、各省の承認を受けなければいけません。大規模施設には、追加の資金調達も重要なため、この点が資金調達の妨げになります。

そこで要望案には、補助金制度を活用しながら導入した設備について、例外的な担保権の設定を含む要件の緩和が盛り込まれています。

融資制度の創設や銀行法の改正

金融支援として「GX事業に係る保証付き融資制度の整備」や「銀行高度化等会社におけるGX産業関連の規制緩和」といった融資や出資に関する規制緩和案などがあります。

前者は、GX関連事業につながる設備導入を促進させるための要望案です。

系統用蓄電システム、水電解装置、ペロブスカイトなどの導入を促進させるには、金融機関の積極的な投資・融資が重要とされています。しかし、企業が保証協会を通じて資金の借り入れを行う場合、金融機関から建物などを担保として提供することが求められます。そこで検討されている要望は、GX事業に関する融資について無担保を明確にした保証制度を整備してもらうというものです。

後者は、銀行による出資に関する要件の緩和案です。銀行による出資は、預金者や融資者を守るために規制されており、出資に際しては手続き・認可が必要となります。したがって地元地銀などが洋上風力発電事業への資金調達のためのSPC(特別目的会社)に出資しようとすると、複雑かつ手間のかかる審査が必要となります。

要望案は、銀行法施行規則17条の4の3にある一定の高度化等業務にGX関連作業を追加することが盛り込まれています。銀行の高度化に役立つ業務(高度化等業務・銀行業高度化等会社)は出資の規制が緩和されているため、この指定業務にGX関連産業を追加することで、銀行による出資がスムーズになるのです。

GX金融資産運用特区は太陽光発電事業にも追い風といえる

政府に選定された北海道札幌市のGX金融資産運用特区は、洋上風力発電や水素のほか、太陽光発電事業にも追い風といえます。

北海道・札幌市の提案するGX金融資産運用特区には、グリーン水素の普及に関する内容も含まれています。グリーン水素に必要な電力は、洋上風力発電以外にも水力発電や地熱発電、太陽光発電などで確保することが可能です。

そのため、すでに太陽光発電事業をスタートしている企業やこれから太陽光発電事業を始める企業は、グリーン水素の普及・需要創出の恩恵を受けられる可能性があります。

太陽光発電が現時点で多くの企業にとって導入しやすい理由

GX金融資産運用特区では、再生可能エネルギーについて注目されています。とくに重点分野とされているのは洋上風力発電ですが、現状一企業にとって導入しやすい設備は太陽光発電です。

そこで最後は、太陽光発電が多くの企業にとって導入しやすい理由をわかりやすく紹介します。

初期費用や維持管理コストが安い

太陽光発電は、洋上風力発電など他の再生可能エネルギーと比較して、初期費用や維持管理の負担を抑えられるのがメリットの1つです。

太陽光発電の初期費用は、経済産業省の資料「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると1kWにつき14.7万円~25.1万円で、洋上風力発電の平均資本費1kWにつき137.0 万円と約5~9分の1で済みます。

さらに洋上での作業や船舶の調達、海底ケーブルの敷設工事などが不要のため、洋上風力発電よりも維持管理の負担を抑えられます。

初期費用負担を大幅に抑えながら脱炭素経営・GX関連産業へ参入できるのは、予算面で悩む企業に嬉しいポイントです。

出典:「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」(経済産業省)

多くの場所で発電を開始できる

太陽光発電は洋上風力発電と異なり、自社の敷地・建物・カーポートの屋根、水上、農地などさまざまな場所に設置できます。

洋上風力発電の場合は、海上にしか設置できません。

太陽光発電はさまざまな場所へ設置できるほか、環境や予算に合わせて小規模設備からメガソーラークラスの大規模設備まで柔軟に検討できます。自社にあった規模で再生可能エネルギー発電設備を導入したい企業や、予算に合った設備を導入したい企業は、とくに太陽光発電がおすすめです。

送配電網に関するコストを抑えながら電力を活用できるのが、太陽光発電を導入する大きなメリットです。

GX金融資産運用特区は脱炭素経営にとってメリットの多い内容!

北海道・札幌市の提案するGX金融資産運用特区は、GX関連産業の成長や誘致を進めるための規制緩和などが盛り込まれています。また、2024年6月に政府が正式に指定を行いました。今後の動きや新しい情報に注目です。

脱炭素経営を目指す企業やGX金融資産運用特区のニュースで再生可能エネルギー事業について関心を持ち始めた企業は、今回の記事を参考にしながら太陽光発電事業を検討してみてはいかがでしょうか。

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