改正再エネ特措法で変わった部分とは?

改正再エネ特措法で変わった部分とは?

2011年に制定された再エネ特措法は2022年に改正され、新しい制度の導入や既存の規則変更など、多くの太陽光発電事業者や投資家に関係があります。しかし、法律の原文は分かりにくい部分が多いため、全てを把握できず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、改正再エネ特措法で変わった部分や法律の目的や概要について詳しくご紹介します。再エネ特措法を把握した上で太陽光発電事業を進めたい方や再エネ特措法の改正内容を確認したい方は、参考にしてみてください。

再エネ特措法についておさらい!

再エネ特措法についておさらい!

2012年7月に施行された再エネ特措法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)は、再生可能エネルギー由来の電気を調達するために必要な規制や流れが定められています。

具体的には、FIT制度(固定買取価格制度)によって買い取られた再エネ電力の調達コストを再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)という制度で支える仕組みなどが盛り込まれています。

改正再エネ特措法とは?

2022年4月に施行された改正再エネ特措法は、再生可能エネルギーの利用促進に関する改正を指しています。

再生可能エネルギーの市場は拡大傾向で、再エネ由来の電力調達も進めやすい環境へ変わりました。しかし、再エネ賦課金の負担増加による電力料金高騰、FIT制度を前提とした再生可能エネルギーによって競争力が育たないなど、さまざまな課題が残されています。

そこで国は、再生可能エネルギー業界のさらなる成長と2050年のカーボンニュートラル達成に向けて再エネ特措法を改正しました。

改正再エネ特措法で追加変更されたもの

改正再エネ特措法で追加変更されたもの

続いては、改正再エネ特措法で追加・変更された内容について紹介します。

法令の「調達」が「利用の促進」へ変更

改正再エネ特措法では、法令の名称「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」へ変更されました。

再生可能エネルギーの電力調達は達成できたため、再生可能エネルギーの利用促進へ向けた目標へ切り替わりました。そのため、法令の名称が「調達」から「利用の促進」へ変更されています。

広域的運営推進機関による管理が追加

改正再エネ特措法では、電力広域的運営推進機関によって管理されることが定められました。

従来の再エネ特措法では、一般社団法人低炭素投資促進機構が費用負担調整業務と入札業務に関する管理業務を担うことと定められていました。しかし、改正再エネ特措法では、2015年に設立された電力広域的運営推進機関でさまざまな業務の管理や運用を行うことと変更されています。

また、新たに作られたFIP制度などの制度についても、電力広域的運営推進機関が管理を行う方向で改正されているのが特徴です。

今後、FIT制度やFIP制度、同制度の入札業務に関する管理元を確認する際は、電力広域的運営推進機関という点を覚えておくのが大切です。

電気事業者の定義に配電事業者が追加

改正再エネ特措法では、電気事業者の定義に配電事業者が追加されました。配電事業者とは、一般送配電事業者の送配電網をITやIOTを活用しながら運用していく事業のことです。

「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」内の規制対象に配電事業が追加されたため、改正再エネ特措法の電気事業者に関する定義に配電事業者も加わりました。

再生可能エネルギーを含む電力の需給調整や管理業務を行う事業者は、「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」の規制内容も確認しておく必要があります。

FIP制度の新設

改正再エネ特措法の施行に伴いFIP(Feed-in Premium)制度が、追加されました。

FIP制度は、再生可能エネルギー由来の電気を市場連動型へ買い取ってもらうための制度で、一部の太陽光発電も対象とされています。また買取保証はないため、一般の発電事業者と同じく市場の価格に沿って取引を交わしていき、黒字化を目指していく必要があります。ただし、一般の市場と異なり、プレミアム価格という補助収入を交付してもらえるのが強みです。

2022年10月時点で、FIP制度へ移行可能な太陽光発電は出力50kW以上の設備です。

また、出力1MWの太陽光発電を設置した場合は、FIP制度のみ承認できます。既にFIT制度の承認を受けていた場合は、FIP制度へ移行しなければいけません。

出力50kW以上1,000kW未満の太陽光発電を設置した方は、FIP制度へ移行できるものの、1度移行してしまうとFIT制度には戻せません。

太陽光発電解体に伴う積立金制度の新設

改正再エネ特措法では、太陽光発電の解体費用に関する積立金制度が追加されました。

国では、太陽光発電の不法投棄や廃棄処理能力の限界など、解体・廃棄に関するさまざまな問題に対処するため、解体費用の積立金を義務化しました。

これからFIT制度の承認を受けて再生可能エネルギー発電設備を設置運用する場合は、毎月の売電収入から解体費用の積立金を差し引かれます。また、積立金の期間は、FIT制度終了年の10年前から始まる仕組みです。

FITの認定失効制度新設

FIT制度の承認を受けたまま太陽光発電を設置しないもしくは稼働させない場合は、改正再エネ特措法に定められる期間を超えた場合に認定失効させられます。

認定失効の条件は以下のとおりです。

  • 基準日までに系統連系工事着工申込書を送配電事業者(大手電力会社)へ提出および受領してもらっていない場合は、運転開始期限の1年後に失効
  • 系統連系工事着工申込書の受領後、運転開始期限日までに発電設備を稼働させていない場合は、2年間の猶予あり

これから太陽光発電事業を行う場合は、系統連系工事の着工申込手続きから1年以内に設備を稼働できるよう計画を立てることが大切です。

系統設置交付金の交付制度

改正再エネ特措法では、資金の交付に関する制度も新設されました。具体的には、送変電設備の工事や運転維持を進めている送配電事業者や一般送配電事業者は、広域的運営推進機関から系統設置交付金という資金を交付してもらえます。

改正再エネ特措法では規則の改正も行われた

改正再エネ特措法では規則の改正も行われた

改正再エネ特措法は、地域活用要件や経済的出力制御といった規則に関する追加変更も行われています。ここからは、改正再エネ特措法で改正された内容から、太陽光発電事業者にとっても重要なポイントを紹介します。

地域活用要件の対象拡大

改正再エネ特措法では、地域活用要件の対象設備がさらに拡大しています。地域活用要件は、自家消費率30%以上が自立運転機能搭載といった義務が課されています。

これまで出力10kW以上50kW未満の太陽光発電などは、自家消費などの運用に関するルールが加えられていました。

今回の改正再エネ特措法では、1MW未満の水力発電設備と地熱発電設備、10MW未満のバイオマス発電設備も地域活用要件の対象設備として定められました。

電力の供給過剰に対応した経済的出力制御

改正再エネ特措法の施行後は、経済的出力制御という新たな電力供給抑制策が実施されます。経済的出力制御とは、インターネットに接続されていない発電設備の代わりにインターネット接続された発電設備のみ出力制御される制御方法のことです。

オンライン接続済みの発電設備を所有している方は、出力制御に関するインセンティブをもらえるのが特徴です。特に収益率を重視している方は、太陽光発電をインターネットに接続するのがおすすめです。

改正再エネ特措法で太陽光発電事業者が気を付けるべきポイント

改正再エネ特措法で太陽光発電事業者が気を付けるべきポイント

最後は、改正再エネ特措法に関して太陽光発電事業者が気を付けるべきポイントを解説します。

FIP制度を理解しておく

出力50kW以上の太陽光発電を運用していく時は、特にFIP制度について理解しておく必要があります。

FIP制度は、FIT制度と異なり市場に合わせて買取価格も変動します。さらにバランシングコストというコストが加わります。

バランシングコストは、事前の計画から少ない・多い発電量をペナルティとして売電収入から差し引かれるのが特徴です。つまりFIT制度のように、発電した電気をとにかく売電すれば全て収益につながる、というシンプルな構造ではありません。

FIP制度へ移行しなければいけない・移行するか悩んでいる方は、FIP制度のリスクやコストも含めて理解しておくのが重要です。

解体費用の積立による売電収入の減少

出力10kW以上の太陽光発電で、FIT制度やFIP制度の認定を受けた場合は、解体費用の積立金を考慮しながら収支のシミュレーションを行いましょう。

解体費用の積立金は、廃棄費用の単価×出力という計算式で求められます。単価については、売電価格に比例します。売電価格が高ければ、廃棄費用の単価も高い水準で定められます。

地域活用要件で全量買取できないケースを把握する

改正再エネ特措法の施行により地域活用要件の対象範囲は拡大されているので、要件の詳細について確認しておくことをおすすめします。

地域活用要件の主な内容は、発電した電気の30%以上を自家消費する・停電時に自立運転できる機能を搭載させておくという点が基本です。また、事業開始後も自家消費の実績などを資料にまとめて提出する必要があります。

地域活用要件の対象設備で発電事業を行う場合は、発電量の30%以上を自家消費するために自社のどのような設備へ電力供給すべきか施工業者とすり合わせしておきましょう。

改正再エネ特措法を把握した上で太陽光発電を運用するのが大切!

改正再エネ特措法を把握した上で太陽光発電を運用するのが大切!

改正再エネ特措法は、FIP制度や解体費用の積立金制度など、さまざまな点で追加・変更されています。内容の多くは、太陽光発電事業者に関わる重要な項目で、事前に1つ1つ確認および把握しておく必要があります。

太陽光発電事業の出口戦略に悩む方や改正再エネ特措法の施行に伴い太陽光発電を手放すか悩んでいる方は、今回の記事を参考にとくとくファームへ相談してみてはいかがでしょうか?

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改正再エネ特措法によって太陽光発電の運用に悩んでいる時は、お気軽に売却相談してみてください。

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