太陽光発電が設置できる場所は、山間部や遊休地、建物の屋根だけではありません。近年では、ため池で水上太陽光発電を運用しているケースも見られます。ため池を所有している企業の中には、水上太陽光発電やため池ソーラーといった運用方法についても気になるのではないでしょうか。
そこで今回は、ため池で太陽光発電を始める方法や仕組み、運用メリットやデメリットなどについて詳しくご紹介します。水上太陽光発電に関心を持っている方やため池の太陽光発電について調べながら検討したい方などは、参考にしてみてください。
ため池で太陽光発電を運用する方法とは?
ため池で太陽光発電を運用するには、太陽光パネルなどの各種機器を水上に浮かべる必要があります。
設置工事の際は、まずフロート架台という水上で浮くタイプの架台をため池に設置します。ただし、フロート架台を設置しただけでは、風や水の動きによって流されてしまいます。そこでアンカー(錨)とフロート架台を接続したのち、ため池の底に打ち込む、もしくは重りで池の底に固定させます。
架台の固定後は、太陽光パネルやパワーコンディショナの設置、配線類の接続といった作業を進めていく流れです。
太陽光発電の設置後は、野立て太陽光発電などと同様に発電を開始できます。常時現地での監視や操作などをする必要はないので、本業に注力したい企業にとって運用しやすい設備ともいえます。
ため池で太陽光発電を行う場合の発電量
設置場所の天候や太陽光パネルの設置角度などによって発電量は変わるものの、ため池で太陽光発電を行った場合は1㎡につき0.1kW弱の電気を取り出せます。
太陽グリーンエナジーという太陽光発電関連企業では、ため池に太陽光発電を設置し、FIT認定を受けながら設備を稼働させています。たとえば穴沢池水上太陽光発電所は、年間で120万3,000kWh程度の発電量が見込めます。これは数100世帯へ電力を供給できる規模なので、実用性という点でも強みがあります。
このようにため池での太陽光発電は、野立て太陽光発電などと同じく大規模な運用も可能といえます。
ため池での太陽光発電事業が注目されている理由
ため池での太陽光発電事業は、発電しやすい・設置しやすいといった理由から近年注目されています。
これまで太陽光発電の一般的な設置場所といえば、主に山間部や空き地、耕作放棄地などといった陸地です。設置工事の際には、設置予定地の地盤調査や土の入れ替え、地盤強化の工事、森林の伐採や除草作業などが必要になることもあります。
さらに安全性の問題をはじめ、周辺住民からの反対、自治体の規制といった課題もあるため、地域によっては設置が難しいケースがあります。
一方でため池は、農林水産省のデータによれば国内に約15万ヵ所存在しており、このうち太陽光発電の設置が可能な場所も多数あります。また、土地の開拓や整備が不要もしくは最小限に抑えられるため、太陽光発電に適しているともいえます。
そこで多くの太陽光発電事業者は、ため池に注目し始めています。
出典:農林水産省Webサイト
ため池に太陽光発電を導入するメリット
ため池にも太陽光発電が設置できることを把握したあとは、導入するメリットについて確認していきましょう。
ため池への太陽光発電設置は、山間部などでの設置運用と異なるメリットもあります。設置場所の選定で悩んでいる方は、ため池での運用も検討してみてはいかがでしょうか。
地上での太陽光発電と比較して発電効率が高い傾向
倉庫や工場などの屋根や屋上への設置、野立て太陽光発電と比較した場合、ため池設置の方が発電効率が高い傾向にあります。効率よく発電できれば、その分売電収入や自家消費率の向上につながりますし、初期費用の回収期間を短縮できます。
ため池の水面や周辺は、一般に建物の屋根や屋上・地面より温度が低めです。太陽光パネルの温度は25℃を超えると発電効率が下がることがあるため、ため池の方が設置に適した環境といえます。
また、遮蔽物が少ない環境ということもあり、影による発電量低下リスクも抑えられるでしょう。
土地の造成工事が不要
土地の造成工事が不要もしくは最小限に抑えられるのは、ため池ならではのメリットです。
ため池への設置時は、フロート架台を水面に設置したのちアンカーで固定します。そのため、森林の伐採や除草作業、造成工事などは不要であり、これらにかかるコストを削減できるので、その分、初期費用の負担を軽減できます。
太陽光発電の初期費用を抑えたい方や造成工事に伴う周辺住民からの反対運動で悩んでいる方などは、ため池への設置を検討してみるのもおすすめです。
放置状態のため池なら有効活用につながる
自社で放置状態のため池を所有している場合は、土地の有効活用につながります。
所有しているため池は、たとえそのまま放置していたとしても維持管理費用などの負担がかかります。そこで使われていないため池に太陽光発電を設置すれば、FIT制度やFIP制度の認定で売電収入を得られますし、自家消費によって固定費を削減できます。また、売電収入や固定費で浮いた予算をため池の維持管理費用に充てることで、費用負担の削減につながります。
ため池を積極的に活用する方法を模索している方は、太陽光発電の設置で収支のバランスを改善できるか計算してみましょう。
水草の異常発生などを防げる可能性
ため池への太陽光発電設置のメリットのひとつに、水質の改善が挙げられます。
気候変動や周辺地域の環境変化によって、ため池の水質は悪化してしまうことがあります。たとえば、アオコ(植物プランクトン)は光合成によって異常発生しやすく、ため池における水質汚染の原因とされています。
水上型太陽光発電を設置した場合、ため池の水面に太陽光パネルや架台で蓋をするのと同じ効果が期待できます。太陽光が水中へ入りにくくなるため、アオコなどの異常発生防止につながるでしょう。
ため池の蒸発を防ぎながら水の利用を継続できる
水を蒸発させないようにしながらため池を活用したり、太陽光発電を稼働したりできるのが、導入メリットの1つです。
夏場などで気温が高くなると、ため池の水は蒸発します。特に農業用水などとして使用している場合では、水を継ぎ足さなければ不便な状況が起こることもあります。
そこで太陽光パネルや架台を水面に設置すれば、断熱効果によってため池の温度上昇を防ぎ、蒸発率を抑えられる可能性が高くなります。また、フロート架台に使用されている素材は発泡材なので、断熱効果という点でも強みがあります。
ため池に太陽光発電を導入するデメリット
続いては、ため池に太陽光発電を導入する際に考えられるデメリットを1つずつ確認していきましょう。
災害発生時のシミュレーションや対策が不可欠
台風や地震、豪雨といった災害による被害想定やシミュレーション、対策が、太陽光発電設置の際に重要なポイントです。
ため池などの水上に設置されている太陽光発電は、暴風や台風などでフロート架台ごとめくれ上がったり、アンカーの破損につながったりしてしまうこともあります。
そのため、ため池に太陽光発電を設置したい時は、災害対策を含めてノウハウを持っている施工業者へ相談するのが大切です。
弊社とくとくソーラーでは、太陽光発電の保守点検だけでなく水害や火災対策といった防災対策にも対応しています。メンテナンスを含めて実績の豊富なサービスへ相談したい時は、ぜひお気軽にご相談ください。
ため池の水を利用する場合は水位の変動と発電効率の管理が必要
ため池の水を利用しながら太陽光発電を運用する場合は、水位の変動と発電効率の管理および改善に向けた対策を進めるのも重要です。
ため池の水を利用すると、少しずつ水位が下がっていきます。また水位が低下したり上昇したりすると、日光の入り方・太陽光パネルと日光の位置関係および角度が変わってしまい、発電効率の低下につながる可能性もあります。
そのため、ため池を利用しながら太陽光発電を運用する場合は、O&M業者へ発電効率の変動に関して相談を行いながら管理を進めていく必要があります。
発展中の技術ということもあり施工品質にばらつきがある
ため池への太陽光発電設置工事は、野立て太陽光発電と比べたら、まだまだ発展途上の技術です。そのため、施工品質にばらつきが生じやすいといえます。
太陽光発電の施工業者は、主に野立て太陽光発電・屋上設置に関する施工を請け負っています。そのため、ため池への施工に対応してもらえない場合もあります。
今後、水上に太陽光発電を設置したい場合は、ため池への施工実績が豊富な施工業者や水上太陽光発電に対応可能な販売施工業者へ相談し、相見積もりを行いながら比較検討していきましょう。
ため池型の太陽光発電で補助金は出る?
環境省では、2022年度にため池を含む太陽光発電設置に関する補助金制度を実施しています。
「地域における太陽光発電の新たな設置場所(営農地・ため池・廃棄物処分場)活用事業補助金」は、ため池を含む特定の場所で太陽光発電事業を行う際に導入費用を支援してくれる制度です。
補助金の交付額は、対象設備の導入費用に対して2分の1程度の金額とされています。(上限3億円)
以下に主な補助対象の設備を紹介します。
- 太陽光パネル
- パワーコンディショナ
- フロート架台
- 接続箱
- 自営線
- 受変電設備
- 定置用蓄電池
また、フロート架台同士を接続させるブリッジも補助金の対象設備としてみなされています。2023年度も同補助金制度は実施される予定なので、早めに申請準備を進めておくといいかもしれません。
ため池で太陽光発電を行うなら適切な管理業者の協力が大切!
ため池には、水上型太陽光発電を設置することが可能です。フロート架台という水面に浮くタイプの架台を設置したのち、アンカーで固定します。あとは、野立て太陽光発電などと同じく太陽光パネルやパワコンなどを接続していき、稼働させる仕組みです。
なお、台風などの災害対策も必要なので、施工実績豊富な施工販売業者と協力しながら管理運用していくことが大切です。また、中古太陽光発電所なら、施工コストを抑えながらスピーディに発電を始められます。
ため池の活用方法について考えている方や水上太陽光発電にメリットを感じる方は、今回の記事を参考にしながらため池への太陽光発電や稼働済み中古太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
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さまざまな種類、規模の太陽光発電所を取り扱っているので、水上型太陽光発電を探している方にも利用しやすいサービスです。また、専任のスタッフがメンテナンスや洗浄、売電・発電実績の確認を行っています。
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