陸屋根の工場や事務所を所有している経営者の中には、太陽光パネルを屋根に設置できるか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。陸屋根には太陽光パネルを設置できますし、地上設置と異なるメリットもあります。
そこで今回は、陸屋根で太陽光発電を始めるメリット・デメリットについて詳しくご紹介します。陸屋根の建物を所有している方や、屋根設置型太陽光発電を検討している方などは、参考にしてみてください。
陸屋根とは?
陸屋根(りくやね・ろくやね)は、屋根の種類を指す用語で、地上に対して平行に作られた屋根のことです。
フラットな形状なので屋上としての活用も検討しやすく、屋上庭園や太陽光発電の設置場所としても利用できます。瓦を葺(ふ)かずに建築できるため、コストを抑えられるのも特徴の1つです。
陸屋根で太陽光発電を始めるメリット
陸屋根の形状や特徴を把握したあとは、陸屋根に太陽光発電を設置するメリットについて確認していきましょう。
土地の選定や造成工事の手間を省略
地上設置型太陽光発電と異なり、陸屋根への太陽光発電設置は、土地の選定や造成工事に関する手間と費用を省略できるのがメリットです。
自社の敷地内に地上設置型太陽光発電の設置スペースがない場合は、太陽光発電用地を探して購入しなければいけません。また太陽光発電の安全な設置には、造成工事の依頼も必要です。
このように地上設置は、土地選定、造成工事の時間や費用といった点で負担がかかります。
一方、陸屋根タイプの工場や自社ビルを所有している場合は、これらに関する負担を抑えながら運用が可能です。
目視によるチェックを含めて点検しやすい
陸屋根は、太陽光発電設置後の点検しやすさという点でもメリットがあります。太陽光発電はメンテナンスフリーではないため、定期的な目視によるチェックをはじめ、破損の有無、電気・機械的な点検なども必要です。
陸屋根に太陽光発電を設置した場合は、傾斜付きの屋根と異なりメンテナンスの際に足場を組まずに点検作業が行えるため、その分費用を抑えられる可能性があります。
なお保守点検全般は、O&Mサービスや施工販売業者で対応してもらえます。
施工期間を短縮しやすい
なるべく施工期間を短縮したい方にとっても、陸屋根への設置はメリットのある選択肢と言えます。
傾斜のない場所への設置工事は、切妻屋根をはじめとした傾斜付きの屋根や安定性のない場所と比較して施工しやすい環境にあります。また、地上設置型太陽光発電と異なり基礎工事に関する負担が少ないため、スピーディに設置できます。
陸屋根で太陽光発電を始めるデメリット
続いては、陸屋根で太陽光発電を始める際に懸念されるポイントやデメリットについて確認していきましょう。
建物が老朽化した場合は解体撤去が必要
陸屋根にかぎらず屋根設置型太陽光発電を設置する場合は、将来的な建物の老朽化などに伴う解体撤去についても考慮しておく必要があります。
築年数30年以上のビルといったような老朽化している建物に太陽光発電を設置してしまうと、費用回収前に設備ごと解体撤去しなければいけない可能性も出てきます。
費用回収前の設備撤去は大きな損失です。
そうならないためにも、太陽光発電の設置前には建物の築年数や劣化状況を調査してもらい、少なくともこの先30年程度建物を維持できるかを確認しておきましょう。
温度上昇による発電効率低下
陸屋根で太陽光発電を運用する場合は、温度上昇による影響を受けやすいと言えます。
太陽光パネルの発電効率は、日照時間や日射量に加えてパネル表面の温度によっても変わります。温度特性に関しては、パネルの表面温度が上がれば上がるほど発電効率が低下していきます。また、一般的に表面温度25℃が発電効率のピークとされています。
陸屋根に設置された太陽光パネルは、地面からの反射熱といった影響を受けやすく、夏場や気温の高い日に発電効率が低下しやすいと言えます。
そのため陸屋根で太陽光発電を始める時は、散水装置などの冷却装置の設置を検討したり、事前に屋上の温度を計測したりしておきましょう。
アンカーボルト工法は難しい
一般的なアンカーボルト工法で屋根設置をした場合は雨漏りしてしまうため、さまざまな設置方法に対応している施工販売業者、または防水処理にも対応可能な施工販売業者へ依頼するのがおすすめです。
陸屋根の場合は切妻屋根といった傾斜付きの屋根と異なり、穴をあけてしまうと雨水などが侵入しやすい構造になっています。そのため、設置場所に穴をあけて架台を固定するアンカーボルト工法では、雨漏りなどのリスクが生じてしまいます。
ただし最近では、施工販売業者側も陸屋根への設置に対応するケースが増えてきており、アンカーボルト工法以外の設置方法を導入していることもあります。
設置の際は陸屋根の太陽光発電設置に対応している施工販売業者に依頼し、雨漏りリスクを抑えながら運用することが大切です。
陸屋根における太陽光発電の設置方法
陸屋根に太陽光発電を設置する場合は、特別な施工方法で対応してもらう必要があります。以下に、陸屋根における太陽光発電の設置方法についてわかりやすく解説していきます。
重石工法
重石工法とは、コンクリートブロックを活用した設置方法です。前半でも解説したように、アンカーボルト工法では防水処理を施さなければ雨漏りなどのリスクが生じてしまいます。
重石工法は、1個あたり150kg程度のコンクリートブロックを屋上に置き、その上に太陽光パネルを設置する方法です。また太陽光パネルが外れないよう、ブロックとパネルの間に固定用の金属部品を取り付けます。この方法であれば、陸屋根に穴をあける必要はありません。
ただし、コンクリートブロックを陸屋根に固定するわけではないため、暴風や台風対策などが必要になる場合もあります。
置き基礎工法
置き基礎工法では、陸屋根にパレット付き架台を設置し、その上にコンクリートブロックなど重量のある物を置きます。あとは、架台に太陽光パネルを取り付けます。(パレット付き架台:架台の底面にフラットな板が取り付けられている)
陸屋根に穴をあけずに固定できるので防水処理が不要で、なおかつ雨漏りの心配もありません。
アンカーレス架台による設置
アンカーレス架台は屋根に直接置くタイプの架台で、アンカーボルト工法やコンクリートブロックの設置などが不要です。
主な特徴は、軽量のため屋根への荷重が軽減されるほか、一般的な太陽光発電の架台よりも部材点数が圧倒的に少なく、高さも抑えられています。また風を逃す特殊な構造であり、中には風速55m程度まで耐えられる製品もあります。
陸屋根で太陽光発電を行う前に注意すべきポイント
ここからは、陸屋根で太陽光発電を設置・運用する際に注意すべきポイントをわかりやすく紹介していきます。
現地調査を依頼し設置可能か確認
太陽光発電の設置を検討する際は、施工販売業者へ現地調査を依頼し、陸屋根に設置可能な状態か確認してもらうのが大切です。
陸屋根のひび割れをはじめとした劣化状況は建物によって異なります。そのため、陸屋根への設置工事に対応している施工販売業者に状況を調査してもらい、設置・運用可能か確認しておく必要があります。
太陽光パネルの設置が可能と判断されたら、設置方法・設置角度や向きだけでなく、設置枚数なども計算してもらいましょう。太陽光パネルを敷き詰められるかどうかは、屋上部分の強度によって変わります。
防水工事が必要か調査してもらう
陸屋根に太陽光発電を設置可能な場合は、防水工事が必要な状態か調査してもらうのも注意すべきポイントの1つです。
通常、陸屋根には防水処理が施されているため、雨漏りのリスクなども抑えられています。ただし、経年劣化によって防水機能は低下していきます。
そこで太陽光発電の設置を検討する際は、防水処理にもノウハウを持つ施工販売業者へ相談し、先に防水工事をすべきかどうか判断してもらいましょう。
ちなみに防水工事の費用は工法によって変わるものの、1㎡あたり2,000~8,000円程度が目安です。
費用回収期間を含めシミュレーションを行う
陸屋根にかぎらず太陽光発電を始める時は、費用回収期間やランニングコストなどをシミュレーションしておくのが重要です。
太陽光発電におけるシミュレーションとは、手動での計算もしくは専用ツールによる年間の収支・ランニングコスト、費用回収期間、発電量などを示したものです。
事前にシミュレーションを行っておけば、収支バランスを保てるか、費用回収に何年かかるのかなどといった点をあらかじめ把握できます。
和上ホールディングスでは、自家消費型太陽光発電の企画設計およびシミュレーションから施工・保守運用まで一括対応しています。見積りやシミュレーションを確認したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
陸屋根で太陽光発電を始めるなら自家消費がおすすめ
太陽光発電を始めようか悩んでいる企業の中には、どのように運用していけばいいのかわからない企業も多いかと思います。最後は、陸屋根で太陽光発電を始める際、自家消費がおすすめの理由を詳しく解説します。
FIT制度の影響を考慮せずに運用可能
FIT制度の影響を受けずに運用し続けられるのは、全量自家消費型太陽光発電の大きなメリットです。
FIT制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を一定期間固定価格で買い取ってもらえる国の支援制度です。年間の売電収入を計算しやすい反面、FIT認定を受けるための規制、FIT制度に関する要件の変更といった影響を受けてしまいます。
全量自家消費型太陽光発電であればFIT制度の認定が不要ですし、同制度の規制を受けずに発電・自家消費し続けられます。
自己託送なしで自家消費可能
自社ビルや工場、倉庫などの陸屋根に自家消費型太陽光発電を設置すれば、自己託送なしで自家消費できます。
自己託送とは、遠方に設置した発電所の電気を既存の送配電網(電線や変電設備など)で自社の敷地内に送電してもらう制度のことです。自己託送制度を利用する際に託送料金がかかるため、ランニングコストの増加につながります。
自社の敷地内に建てられている陸屋根の工場や倉庫などに太陽光発電を設置すれば、自己託送制度を利用せずに済みますし、託送料金の負担を抑えられます。さらに自家消費なら電気料金削減効果を得られるので、浮いた固定費をランニングコストに充てたり他の事業に活用したりできます。
補助金で初期費用負担を軽減
自家消費型太陽光発電に関しては国の補助金制度があるので、初期費用の負担を軽減しながら導入できます。
国の太陽光発電に関する補助金制度は、主に自家消費を前提とした内容です。たとえば、「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」は、FIT制度やFIP制度、自己託送制度を利用せず、なおかつ2MW以上の太陽光発電を導入する場合に補助金を交付してもらえる可能性があります。(2023年5月26日に次令和4年度第2次補正予算二次公募申請は締め切り)
以下記事にさまざまな補助金制度を紹介しているので、気になる方はぜひ参考にしてみてください。
陸屋根でも自家消費型太陽光発電を検討してみるのがおすすめ!
フラットな形状の陸屋根で太陽光発電を始めるには、アンカーレス架台や重石工法などの陸屋根向け工法に対応している施工販売業者へ相談するのが大切です。また陸屋根で太陽光発電を始める場合は、屋根の防水機能について調査してもらうのも重要なポイントと言えます。
陸屋根の自社工場やビルで太陽光発電を始めたい方や太陽光発電に関心を持っている方は、今回の記事を参考にしながら陸屋根での自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
和上ホールディングスの自家消費型太陽光発電サービスは、全量自家消費型太陽光発電の企画設計から施工、保守点検、運用までサポートいたします。また、屋根設置型太陽光発電にも対応しているので、陸屋根への設置を検討している方も電話やWebフォームからお気軽にご相談ください。