産業用太陽光発電の卒FIT後に取りうる5つの選択肢とおすすめ2選

産業用太陽光発電の卒FIT後に取りうる5つの選択肢とおすすめ2選

太陽光発電所を運用している方々にとって、FIT(固定価格買取制度)は収益や利回りに直結するとても重要な仕組みです。しかしながらこのFITには期限があります。家庭用なら10年、産業用なら20年です。産業用太陽光発電のFIT制度は2012年に始まったので、その20年後にあたる2032年からこれらのFITが順次満了を迎えます。

FITが満了した後のことを「卒FIT」ということがありますが、この卒FITはすべての投資家にとって重要な課題です。まだ先のことという方にとっても、卒FITは今の段階からどうするのかを検討しておくべきです。

そこで当記事では、卒FIT後に取りうる選択肢を紹介し、その中でもおすすめの方法について解説します。

太陽光発電所の固定価格買取は20年で終了する

太陽光発電所に設けられているFITの期限は、20年です。この20年が終了したらスタート時の買取価格は保証されないため、以後の身の振り方は投資家自身が決めなくてはなりません。

その前提条件として、まずは野立てなどの太陽光発電所について、FIT制度のおさらいをしておきましょう。

FIT制度のおさらい

FITとは「フィード・イン・タリフ」の略です。日本では固定価格買取制度とも呼ばれています。太陽光発電など再生可能エネルギーによる電力を固定の価格で買い取ることを保証する制度です。もともと太陽光発電は導入費用が高額で、こうした制度で下駄を履かせない限り売電をしてもなかなか元を取ることが困難でした。そこで国は太陽光発電など再生可能エネルギーの普及を促進するためにFITを導入しました。

10kW未満の発電施設については10年間、10kW以上については20年間の固定価格買取が保証されています。10kW未満は主に家庭用の太陽光発電を想定しており、10kWを超える規模については産業用太陽光発電が想定されています。そのため、野立ての太陽光発電所はほぼすべてが10kW以上の規模に該当し、FITの期間は20年間です。

FIT制度の終了後「卒FIT」が迫っている

産業用太陽光発電に対するFITの制度が始まったのは、2012年です。そこから20年間なので、産業用太陽光発電の卒FITは早くて2032年からです。家庭用については2009年から始まった制度で固定価格買取の保証期間が10年なので、すでに2019年から卒FITが始まっています。

そのため、2019年以降は早い時期に太陽光発電を導入した家庭から順に卒FITに向けた対策が講じられています。そのまま売電を続けるか、自家消費をするかといった選択肢がありますが、産業用太陽光発電の場合は少々事情が異なります。それも含めて、当記事では産業用太陽光発電の卒FITについて解説を進めていきたいと思います。

「卒FIT」の対策を講じておく必要性

卒FITが到来する時期が早くても2032年というと、「まだまだ先のこと」と思うかもしれません。しかし、今は2024年です。早い人で8年後には卒FITとなります。すでにFIT期間の半分は過ぎているわけで、特に折り返しを過ぎると時間はあっという間に経過してしまいます。

もうひとつ知っておきたいのが、「すでにFIT自体の魅力が薄れている」という事実です。野立ての太陽光発電所を想定すると、2022年度の買取価格は1kWhあたり10円~11円です。

2022年度 1kWhあたり調達価格等 / 基準価格

引用元:2022年度の価格表(調達価格1kWhあたり)(資源エネルギー庁)

かつて40円以上もあった買取価格が4分の1になってしまっており、FITがあるからといって決して魅力的ではありません。後述しますが、それよりも高い価格で電力を売る方法もあるので、FITの期間内であってもより有利な電力の活用法を考えておくべきです。

野立て太陽光発電所「卒FIT」後の選択肢は5つ

野立て太陽光発電所が卒FITを迎えたら、その後はどんな選択肢があるのでしょうか。主な選択肢は5つです。

FITがなくても売電を継続する

FITの期間が満了したとしても売電ができなくなるわけではありません。ただし、FITによってかさ上げされていた分がなくなるので、売電単価はかなり低くなります。

電力会社によって若干の違いはありますが、1kWhあたりおおむね7~8円程度です。2032年から卒FITになる発電所の場合は買取価格が40円を超えている可能性が高いので、実に5分の1程度になってしまうことになります。

新電力会社に切り替えて売電を継続する

FIT期間は、それぞれの地域の電力会社に売電をしているケースがほとんどです。しかし買取価格が大幅に安くなってしまうのであれば、新電力会社に売電先を切り替えるのもひとつの方法です。

ただし、その場合も劇的に買取価格が高くなるとまでは期待しないほうが賢明です。高嶺買取を打ち出している新電力会社の場合であっても、おおむね9~10円程度です。そのまま切り替えをせずに売電を続けるよりはマシ、という認識で良いと思います。

自家消費する

卒FITの有効な選択肢として、自家消費が注目されています。売電価格が低くなってしまうのであれば、売らずに使おうという考え方です。買電(電力を購入する)価格はどんどん上がっていますし、それなら高い電力を買わずに自家消費をしたほうがオトクになるというのは、理にかなっています。ただしそれは、「自家」で「消費」できる場合のみです。

野立て太陽光発電所を運用している投資家のすべてが、それだけの電力を自家で消費できるわけではありません。自社で工場や事業所などを運営している企業が所有する発電所であれば、自家消費も可能でしょう。しかし、太陽光発電投資をしている投資家の場合、それだけの電力を自家消費するのは難しいでしょう。

太陽光発電所そのものを売却する

4つ目の選択肢は、卒FITを迎えて固定価格買取という旨味がなくなった発電所を売却するというものです。太陽光発電所を売買できるサービスがあるので、それらを利用して買いたい人とうまくマッチングすることができれば、不動産物件のように売却することができます。

非FIT(NonFIT)電力会社に売電する

最後の選択肢は、非FIT(NonFIT)と呼ばれる電力を取り扱っている電力会社に切り替えて売電をする方法です。先ほど新電力会社への売電を紹介しましたが、それまで売電をしていた電力会社から売電先を切り替えるという点では同じです。

違うのは、非FITというそもそもFIT制度を前提としない電力会社に売電をすることで、特に期限のない条件で売電ができることです。非FIT電源を求めている会社は、再生可能エネルギー由来の電力を買い集めています。それを企業に販売するビジネスモデルで、そのことによって企業は再生可能エネルギー由来の電力が手に入り、投資家は卒FIT後も安定的な売電先を確保することができます。

おすすめの選択肢① 太陽光発電所の売却

先ほど紹介した5つの選択肢のうち、おすすめの選択肢は2つあります。そのうちの1つめは、卒FITを契機に太陽光発電所を売却する選択肢です。

太陽光発電所のセカンダリー市場とは

太陽光発電所には、セカンダリー市場があります。セカンダリー市場というのは中古市場のことで、クルマで言えば中古車市場のことです。セカンダリー市場があるおかげで、太陽光発電所を売りたい人と買いたい人のマッチングが可能になっています。

例えば、太陽光発電所の売買サイトである「とくとくファーム」では、売りたい人がサイトに情報を登録すると、そこに登録されている発電所に興味を持った人が購入することができる仕組みになっています。ネット上から手軽に情報を閲覧できるので、今すぐ太陽光発電投資を始めたい人にとっても有用な仕組みといえます。

太陽光発電所を売却するメリット

太陽光発電所を売却することで得られる最大のメリットは、現金化ができることです。卒FITによって売電単価が下がってしまったことで今後そのビジネスを継続することに魅力を感じなくなったとしても、所有している太陽光発電所には価値があります。それを適切な価格で売却できるのは、セカンダリー市場がしっかりと確立しているからです。

また、売却によって以後の管理は不要になります。太陽光発電所は現物資産だけに物理的な管理やそのためのコストが発生しますが、そういった管理からも解放されます。

太陽光発電所を売却するデメリット

所有している太陽光発電所を手放すことによって考えられるデメリットとして、税金の問題があります。購入した時よりも高い価格で発電所が売れた場合、その譲渡益は課税対象所得になります。

それまでの発電実績が良好な発電所には高い価値があるため、売却益が発生しやすくなります。売却益がなければ考慮する必要のないデメリットですが、高く売れそうな見通しである場合は他の税金対策などを併せて売却をすることも検討するべきでしょう。

税金に関連するデメリットは、もうひとつあります。それは、減価償却費です。太陽光発電所は法定耐用年数が17年なので、17年間にわたって減価償却費を会計上の経費として計上できます。これが意外に大きな節税メリットとして意識されることは多いのですが、耐用年数内に売却をするとこのメリットはなくなります。もっとも、卒FIT後に売却するのであれば法定耐用年数を超えてからの売却なので、これがデメリットになることはありません。

太陽光発電所を売却する方法

太陽光発電所の売却は、セカンダリー市場で行うのが適切です。セカンダリー市場を手がけている業者であれば適切な相場を把握していますし、売買に関するノウハウも充実しています。

先ほど挙げた「とくとくファーム」は業界の老舗ともいえるサイトなので実績も豊富です。その他にも中古太陽光発電所の売買を手がけている業者のサイトがあるので、売却を検討している場合は比較検討してみてはいかがでしょうか。

おすすめの選択肢② 非FIT(NonFIT)電力会社に売電する

5つある卒FIT後の選択肢のうち、もうひとつのおすすめは非FIT(NonFIT)電力会社への売電です。なぜこれがおすすめなのか、その仕組みやメリット、デメリットなどを通じて解説します。

非FIT(NonFIT)電力とは

非FIT(NonFIT)とは、そもそもFITの制度を前提としない電力のことです。太陽光発電には長らくFITの存在が大きく横たわっているため、どうしても導入の際にはFITを前提とした計画になります。しかし、その前提となるFITは永遠ではなく、家庭用であれば10年後、野立てなどの産業用太陽光発電であれば20年後に終了します。FITを前提とした計画はFIT後、つまり卒FITを考慮していないため、持続可能性において少々問題があります。

それに対して非FIT電力とは、最初からFITを前提とせず太陽光発電の電力を需要家に届ける持続可能な仕組みです。

近年ではSDGsやRE100といったように、企業が調達する電力の質が問われています。化石燃料由来の電力を大量に消費している企業は「持続可能性に乏しい企業」と見なされ、投資家から見放されてしまうリスクも顕在化してきました。こうした考え方はエシカル投資と呼ばれ、ヨーロッパでは大きな潮流となっています。そこで企業は質の高い電力、つまり環境負荷が低く持続可能性のある電力を求めるようになります。非FIT電力はこうしたニーズに応えるもので、非FITの電力会社は卒FITを迎えた太陽光発電の電力を買い取り、質の高い電力を求めている企業に販売します。これにより、多方面の利益が同時に満たされるわけです。自家消費をしない投資家が所有する野立て太陽光発電所において、今後非FIT電力は卒FITの大本命になるともいわれています。

非FIT(NonFIT)電力に売電するメリット

非FIT電力会社への売電には、持続可能性があります。FITと違って期限がないので、太陽光発電所が稼働し続ける限り一定の価格での買取が期待できます。この「期限がない」ことはFIT制度から放り出された人にとって、とても大きなメリットだと思います。

また、非FIT電力は持続性のある事業なので、売電単価が卒FITのままの売電よりも全体的に高めです。2024年2月時点で12~14円程度の買取価格が期待できるので、新電力会社への売電よりも高い売電単価です。

また、企業として太陽光発電所を運用している場合は、非FIT電力会社に売電をすることによって再生可能エネルギーの有効利用が企業価値を高めます。SDGsへの取り組みとして太陽光発電事業を挙げる企業は多いですが、卒FIT後も事業の採算性を維持しながら「地球環境保護への貢献」を謳うことができます。

非FIT(NonFIT)電力に売電するデメリット

非FIT電力会社への売電にデメリットはあまり見られませんが、強いていえば「自分で売電先を見つける必要がある」ことでしょうか。再生可能エネルギーによる電力を求めている企業を自分で見つけるのは簡単なことではなく、そのために非FIT電力会社があるわけですが、そういった仲介役となる電力会社を自分自身で見つける必要があります。

「とくとくファームZERO」では非FIT電力を取り扱っていますが、これ以外の非FIT電力会社を探すには、さまざまな検索ワードを工夫しなければならないかもしれません。

非FIT(NonFIT)電力に売電する方法

非FIT電力会社に売電をするには、こうした電力を取り扱っている業者と契約をする必要があります。「とくとくファームZERO」をはじめ、ネット上にはいくつかの業者が非FIT電力(NonFIT電力ともいいます)を取り扱っているので、それらの中から契約したい業者を見つけ、問い合わせを送信するところから始まります。

まとめ

すでに家庭用太陽光発電では始まっている、卒FIT。産業用の太陽光発電所を運用している方々にとっては少し先の話ではありますが、だからといって何も対策をしないわけにはいきません。卒FITはどうするべきかについて5つの選択肢を挙げた上で、2つのおすすめについて解説しました。

今後も事業としての太陽光発電を継続して採算性や社会への貢献を考えるのであれば、非FIT(NonFIT)電力としての売電が最も有力な選択肢になるでしょう。それも含めて、今のうちから卒FITのことを考えることはとても重要です。

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