国による再生可能エネルギー関連の補助金事業は、2023年度(令和5年度)も行われる方向で動き始めました。中でも「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」は、特にPPAモデルで太陽光発電の導入を検討している企業にとってメリットの多い補助金制度です。また2023年度からは、FIT・FIP認定を受けた太陽光発電でも補助金申請可能な要件が追加されます。
そこで今回は、令和5年度の需要家主導による太陽光発電導入促進補助金に関する概要や特徴、メリット、注意点について詳しくご紹介します。オフサイトPPAによる太陽光発電事業を検討している方や、FIT・FIP認定を受けながら太陽光発電を運用していきたい方などは、参考にしてみてください。
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金とは何?
まずは、「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」の要件や対象事業者、補助金額について確認していきましょう。
再エネ電源の導入加速化を支援するための補助金制度
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」は、発電事業者と電力の調達や販売を行っている小売電気事業者、再エネ電力を使用する需要家による太陽光発電事業参入を支える制度です。
国では、脱炭素やカーボンニュートラル達成のために再生可能エネルギーの導入支援を行っています。具体的には、2030年に温室効果ガス46%削減目標、2050年のカーボンニュートラル達成目標が掲げられています。しかし、需要家が積極的に太陽光発電をはじめとした再エネ設備を活用しなければ、温室効果ガスの削減を進められません。
そのため「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」は、需要家の再生可能エネルギー使用率を高めるための補助金制度でもあります。
対象事業者は発電事業者
補助の対象事業者は、太陽光発電を所有している発電事業者です。
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」の補助金は、あくまで太陽光発電所の設備費用を補助するための予算です。そのため、太陽光発電設備の設計や設置を行う発電事業者が、補助金を受け取れます。
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」は、発電事業者と小売電気事業者、需要家によるオフサイトコーポレートPPA事業を前提とした制度設計です。
ただし、発電事業者単体で太陽光発電設備の導入や運用を行う場合でも、補助金を受け取れます。たとえば、発電設備を持つ小売電気事業者や需要家側で太陽光発電を導入する時は、「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」の申請を検討できます。
補助対象経費は設計費用から設備費用と幅広い
補助対象経費の区分は、太陽光発電設備の設計費用から施工費用まで幅広いのが特徴です。
さらに令和5年度からは、蓄電池併設型の太陽光発電についても補助対象設備としてみなされる方向です。蓄電池の導入費用についても補助対象経費として扱ってもらえるので、太陽光発電と蓄電池の同時設置を検討しやすいといえます。
具体的には、以下の項目が補助対象経費とみなされます。
- 設計費用
- 設備導入費用
- 工事費用
- 土地造成費用
- 接続費用
設備導入費用に含まれるのは、太陽電池モジュール(太陽光パネル)やパワーコンディショナ、架台、遠隔監視制御装置、モニター、接続箱など、太陽光発電設備一式です。
自治体と連携しながら事業を進める場合は、各費用に対して3分の2以内の補助金率を適用してもらえます。自治体と連携しない場合は、補助金率2分の1以内へ変更されます。
つまり、自治体と連携しながら事業を進めた方が、より多くの補助金を交付してもらえるということです。
蓄電池の補助対象経費については、設備導入費用と工事費用の2種類です。自治体の連携にかかわらず3分の1以内の補助金率を適用してもらえるのが、太陽光発電と異なる点といえます。
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金にはもう1つの補助金事業が含まれている
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」には「再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業」という補助金事業が含まれています。
再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業は、前半で紹介した補助金事業と異なり、FIP認定を受ける、もしくはこれから受ける再生可能エネルギー設備に蓄電池を導入する場合に補助金を交付してもらえます。
つまり、蓄電池の設計から設備費用まで補助してもらえるのが大きな特徴です。
補助対象経費は、蓄電システムの設計費用と設備導入費用、土地造成費用、工事費用で、4分の1、3分の1、2分の1以内の補助金率が適用されます。
太陽光発電以外の再生可能エネルギー設備も補助金制度に含まれるので、風力発電事業などを手掛けている発電事業者にとってもメリットのある内容です。
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金を受けるための主な要件
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」の補助対象経費や対象事業者を把握したあとは、補助金を交付してもらうための主な要件を確認していきましょう。
需要家主導型太陽光発電導入促進事業
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」の需要家主導型太陽光発電導入促進事業で補助金を交付してもらうには、以下の要件をクリアする必要があります。
- 非FIT、非FIP型太陽光発電であること
- 自己託送型ではないこと
- 2MW以上の太陽光発電設備であること
- 8年以上にわたって需要家へ電力供給を行う契約があること
- 高圧や特別高圧の太陽光発電を活用する場合は系統連系の接続検討申込みを完了させておく
- 低圧区分の太陽光発電を活用する場合は系統連系申込みを完了させておく
太陽光発電設備を導入する際、リースやレンタル品、中古設備は補助対象外です。また令和5年度分の補助金事業を活用したい場合は、2024年2月29日までに太陽光発電設備を稼働させなければいけません。
蓄電池に関しては、国際的な基準に違反していない設備、JPEAの要請時に運用実績を提出できる状態であること、電力需給ひっ迫準備情報発令時に蓄電池を活用することといった要件が明記されています。
再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業
再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業には、以下のような要件が明記されています。
- 補助金制度の申請手続きを行う際に系統連系申込に関する回答を得ている(※FITやFIP認定を受けていて蓄電池併設のためにFIP認定を受ける時は不要)
- 蓄電池の単価が1kWhにつき19万円以下
- 令和5年度分の補助金を受ける場合は2023年4月10日以降にFIP認定を受けていること
- 令和5年度分の補助金を受ける場合はFIP認定の再エネ設備が2024年2月29日までに稼働していること
他にも蓄電池の容量に関する要件があり、出力×0.5もしくは1,000kWhのいずれか小さい容量を下限とします。蓄電容量の上限は、出力×3という規定があります。少なくとも1,000kWh以上の蓄電システムを導入することが、補助金要件を満たす上で必須です。
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金がおすすめのケース
太陽光発電の導入を検討している方の中には、「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」を活用すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこでここからは、「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」がおすすめのケースについてわかりやすく紹介していきます。
非FIT・非FIP型太陽光発電による電力事業を本格的に進めたい
非FIT・非FIP型太陽光発電事業を進めたい企業は、「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」の検討メリットがあるといえます。
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」の需要家主導型太陽光発電導入促進事業は、FIT制度やFIP制度を活用せずに太陽光発電の電力を小売電気事業者経由で供給する場合に受けられます。
そのため、非FIT・非FIP型太陽光発電で電力供給を行いたい発電事業者や太陽光発電設備を所有したい小売電気事業者は、申請要件をクリアしやすいといえます。また出力2MW以上という要件があるので、メガソーラーの運用を前提とした準備を進めている場合に検討可能な補助金制度でもあります。
FIP認定を受けた太陽光発電事業を進める
FIP認定を受けた太陽光発電事業を進めている発電事業者の中で、蓄電池の導入を検討している事業者は、「再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業」をおすすめします。
「再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業」は、FIP型再生可能エネルギー設備のために設置した蓄電池が補助対象です。太陽光発電設備の導入費用は補助されません。
さらにFIP認定が必要なので、既に太陽光発電事業を始めている場合ならメリットの多い補助金制度といえます。
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金の注意点
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」を検討する際は、設備の運転開始日や系統連系などの申込時期に注意しましょう。
補助金制度の審査を受けるためには、補助対象設備の工事着工前に申請を進める必要があります。また、申請段階で系統連系の申込手続きを済ませておく必要があるので、事前に系統連系の申込書類や手続きの流れを確認しておくのも大切です。
他にも令和5年度の「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」を受ける場合、2024年2月29日までに補助対象設備を稼働させなければいけません。
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金を活用して設備投資負担を軽減!
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」は、非FIT・非HIP型太陽光発電による電力供給事業を行う発電事業者、FIP型太陽光発電に蓄電池を導入したい事業者にメリットの多い補助金制度です。
なお、太陽光発電で電気料金削減効果を得たい場合には、申請の難しい制度といえます。
これから太陽光発電を導入するにあたって、自家消費をメインに考えている方や電力の売電だけでなく電気料金削減効果についても注力したい方は、全量自家消費型太陽光発電について検討してみてはいかがでしょうか?
全量自家消費型太陽光発電は、発電した電気を自社の照明や空調、事務用機器、生産設備などで消費していく方式を指します。遠隔地に設置した場合は、自己託送方式で自社の設備へ供給できます。(自己託送方式:送配電網を活用して遠隔地から自社の敷地内へ電力を供給)
弊社和上ホールディングスは、15,000棟を超える施工実績を持つ全量自家消費型太陽光発電の設計から施工サービスまで幅広く展開しています。また、全量自家消費型太陽光発電に関する補助金制度を調査、申請サポート等にも対応しています。
設置方法に関しては、地上設置型をはじめ屋根設置型、PPA方式、自己託送、水上設置、営農型など、環境やご予算に合わせてさまざまな方式をご提案いたします。
太陽光発電を活用した電気料金削減に関心をお持ちの方は、この機会にぜひご相談ください。お電話やメールフォームより受け付けています。